テーマ:最近観た映画。(40124)
カテゴリ:映画
題名からして、不思議感が漂ってますけど、
「なんかこう~」なんとも味のある、不思議な作品でした。 ====== 久しぶりに、軽井沢の「別荘」と呼ぶには ちょっとくたびれたおうちに、二人で向かった父と息子。 そこでの、何も起こらない、でも何か不思議な日常が綴られます。 ----- グラビアカメラマンの父は、息子の母とは離婚して、 別な人と結婚しているんだけど、ちょっと最近仲が良くないらしい。 息子は、最近仕事を辞めて、現在フリーター。 父には語らないのだけれども、妻との間に、問題を抱えてる。 こういったことが、多く語られるわけではなく、 ジャージで過ごす、「なんかこう~」な普通の日常が描かれる中で、 なんとなく理解されます。 なんてことのない日常の出来事が、笑いをもたらす、 トマトのくだりは秀逸。 ----- 一年後、息子は妻を連れて、今度は三人で「別荘生活」が始まります。 妻と歩くキャベツ畑。 語られない言葉が物語る妻への思い。 それぞれの態度が物語る二人の関係。 仕事のために帰る妻と、それを見送る親子。 ----- かわって、やってくる父の後妻の娘、花ちゃん。 明るく振る舞う彼女の姿も、父には心配。 三人で過ごす「なんかこう~」な時間。 ----- 花ちゃんも、父も帰り、一人になって、息子は、ずっと抱えたままだった 白紙の原稿と向かい合います。 嵐の中、書き上げられる物語。 ----- ラストのワンシーンは、何と言うか、リアル。 何ともつらい、というか、やるせない時、 ふっと、面白いこと、そして、それを伝えることに、 喜びを見出して現実逃避してしまうこと、ってあると思うのです。 ====== 主人公である「息子」役に、堺雅人さん。 悩みを抱えても表に出さない主人公。 その微妙な心の動きを「体現」してしまう演技力は、正に役者。 「父」役に、シーナ&ロケッツの鮎川誠さん。 「なんかこう~」寡黙で自然体な存在感ある父親を 自然体で演ってしまうのは、いや、すごい。 下手な役者気取りの俳優より、よっぽど素晴らしい「役者さん」でした。 それにしても、二人がジャージ姿で並ぶのは 「なんかこう~」卑怯な気がします。 「妻」役に、水野美紀さん。 ダンナを裏切って甘えて悪びれない(彼女を主人公にすれば 一昔前の「純愛」になるんでしょうが)「汚れ」役に、 説得力ある息吹を与えています。 謎のご近所さん「遠山さん」役に、大楠道代さん。 つかみどころのない、どことなく暖かで不思議な存在感で、 物語に不安感と安心感を同時に与えます。 ====== この物語で、重要な役割を担うのが携帯。 携帯の通じない「別荘」という非日常の空間だからこそ、 「携帯が繋がる」ことの特別さが際立ちます。 それは、「家の電話で話す」とは違う特別な「繋がり」。 ----- たくさん、家族それぞれ、個人個人の問題は抱えているんだけれど、 それを真面目に相談するわけではないし、全く語らないわけでもない。 そこに「何か」が投げかけられることで、「ドラマ」になるわけですが、 何も投げかけられない、「日常」を切り取ることで、 静かな「なんかこう~」時間がゆっくり流れている感覚を与えてくれる、 のんびりムービーでした。 ----- 『猛スピードで母は』で芥川賞を受賞した長嶋有さんの原作は 読んでいないのですけど、原作も「なんかこう~」な感じなのかしら。 また、先々読んでみたいものですね。 ====== 『ジャージの二人』 2008年 日本 93分 http://www.ja-zi2.jp/ 監督:中村義洋 出演:堺雅人 / 鮎川誠 / 水野美紀 / 田中あさみ / 大楠道代 / ダンカン 他 ★★★★☆ 原作:長嶋有 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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