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カテゴリ:映画
ドイツの首都ベルリン、その中心にベルリン動物園はあります。
1844年に開園し、面積は35ha以上(上野動物園の倍以上)、 哺乳類 約200種、鳥類 約400種、爬虫類 約80種、 両生類 約50種、魚類 約400種、無脊椎動物 約300種、 合計 約1400種以上(上野動物園が約500種)、約14000匹・頭の動物を飼育する、 まさにドイツを代表する、世界でも最大級の動物園。 (このblogで公開したベルリン動物園訪問記はこちら) ========== 2007年、このベルリン動物園で、大きな話題を呼んだのが、ホッキョクグマのクヌートです。 クヌートは、母熊に育児放棄され、同時に生まれた兄弟は、4週間で命を落とします。 飼育員のトーマス・デルフライン氏によって人工飼育されたホッキョクグマ、クヌートは、 一般公開されるや否や、ベルリン動物園のアイドルとなります。 クヌートのおかげで、ベルリン動物園の来場者数は倍増。 クヌートは「Vanity Fair」誌の表紙を飾り、ドイツの環境大使にも任命されます。 しかし、一方で、「人工飼育は是か非か」「安楽死させるべきでは」という意見も出て、 更なる反響を呼びました。これに対し、動物園側は、安楽死を否定。 クヌートは、人間たちに様々な問題を想起させながら、成長を続けました。 ========== この映画は、そのクヌートの成長、飼育したトーマス氏の関わりを軸に、 さらに別の熊達の物語を挿入して語られるドキュメンタリーです。 ---------- 北極。 冬眠していた巣穴から出てきた、母熊と、ホッキョクグマの3兄弟。 彼女らは、餌を得るために、海を目指します。 過酷な旅路に失われる小さな命。 オスの熊は、繁殖のために、子熊の命を狙います。 見つからない獲物。何カ月にも及ぶ母熊の絶食。 地球の平均気温の上昇により失われる氷原は、熊達から狩りの機会を奪い、 彼女たちを絶滅の危機へと追いやっています。 ---------- ロシア・ベラルーシ。 人間の手によって母熊の命を奪われた、2頭のヒグマの兄弟。 狩りも、泳ぎも、食べるものさえも、教えてもらう暇もなく、母熊を奪われた兄弟は、 オオカミに命を狙われ、好奇心から人間に近付き、沼に飛び込み、エサを探し、 本能に従い、経験から学びながら、何とか生き延びていこうとします。 ---------- ベルリン。 24時間泊まり込みで世話を続ける飼育員トーマス。 哺乳瓶から卒業し、遊び、いたずらをし、泳ぎを覚え、日々成長していくクヌート。 しかし、クヌートは、餌の心配をしなくてよくとも、 母の愛も、北極の大地も知らない、ということを、ふと思います。 ========== 一方に、人間によって救われた命があり、人間によって奪われた命があり、 自然によって奪われた命があり、たくましく過酷な自然を生きる命があり、 過酷な自然をさらにおかしくしていく人間の愚行があります。 ---------- 環境問題において、可愛いから守る、というのは、 本来あるべき姿ではないのかもしれません。 しかし、その可愛らしさが、我々に、考えるきっかけを与えてくれるのは確かです。 ---------- 我々の生きる未来は、我々にとって住みやすいものなのか。 ホッキョクグマにとってさえ過酷な未来に、我々は生きることができるのか。 我々は、多様な動物相によって成り立った地球という星に住む、一種族にすぎないのです。 我々に出来ること、始めなければならないこと、考えなければならないこと。 愛くるしさの先にある、問題の入口に我々を導いてくれる、そんな映画でした。 ========== 『クヌート』 - "Knut und seine Freunde" 2008年 ドイツ 92分 http://www.cinemacafe.net/official/knut-movie/ 監督:マイケル・ジョンソン 出演:クヌート / トーマス・デルフライン / ホッキョクグマ家族 / ヒグマ兄弟 映画の最後に、クヌートを育てた飼育員トーマス氏が、 心臓梗塞で、2008年の9月に44歳で亡くなられていたことを知りました。 写真でも、常にクヌートと一緒にいる、優しそうな、髭のおじさん。 それはさすがに知りませんでした。 改めて、ご冥福をお祈り申し上げます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 12, 2009 03:19:02 AM
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