映画「Kinky Boots」
Kinkyという単語を知ったのは随分昔のことだ。英語を勉強し始めた頃で、その頃私の'英会話の先輩'だった友人が「出身を日本の近畿地方、と言ったら外国人の友人に大笑いされた」というエピソードを教えてくれた。「キンキってアブナイ意味らしいよ」「どうアブナイの?」「そういう意味よ」という、分かったような分からないような説明を彼女はしてくれた。それから私のなかでは「近畿→禁忌→kinky」で、一般的には何となく使わない方がいい単語、という風に覚えてしまったのだった。あれからニュージーランドに住むことになって、キンキィの意味も、ナルホドこういうニュアンスね、と分かるようになったけど、いまだにこの単語に出会うたび、先述の友人の困ったような顔を思い出してしまう。(*kinky=someone who is kinky,or who does kinky things,has strange ways of getting sexual excitement.とロングマン英英辞書には出ていますが、実際この単語をよく目にするのはアダルトショップのボンテージやSMグッズの宣伝とか。。。確かに日本語での説明はニュアンスが難しい!?)「Kinky Boots」はニュージーランドではかなり以前に公開されて、ずっと観たいと思いつつ機会を逃してたら終わっていた英国映画。DVDでも待とう、と思っていたのが、幸運にもオーストラリアに滞在中、ホテルの映画チャンネルで放映していた。英国の、実話を元にした、コメディタッチの映画。それを聞くとどうしても「フルモンティ」を思い出すけれど、この映画の手触りも良く似ている。英国の片田舎、父親が急死して紳士靴工場を継ぐことになったチャーリーは、実は会社が倒産寸前だということを知る。安物の靴が出回る中では、職人たちの業は通用しないのだ。そんななかで知り合うのが、ドラッグクイーンのローラ。女物のヒールではドラッグクイーン達の体重を支えきれずにすぐに折れてしまう、という彼女にヒントを得て、チャーリーは会社の起死回生の道を見出す。それは「ドラッグクイーン御用達」の靴工場に生まれ変わることだった。。。頼りなさげ、でも頑張ろうとする主人公。その婚約者は田舎から逃げ出したがっている。長年紳士靴ばかり作ってきた職人たちはそんなkinkyな(変態チックな)靴なんか作りたくない(当然?)。そんな中デザインを請け負うことになったローラは偏見にも強く立ち向かっていく。それぞれ葛藤のすえ、出来上がった試作品は超ハイヒールの、超ロングブーツ。もちろんエナメルのテカテカしたヒョウ柄の赤(なんと女王様の鞭も仕舞える)!「フルモンティ」も嫌いではなかったけど、見終った後に疑問が残った。ストリップショーを終えて、彼らはこれからどうやって暮らしていくのか?結局決定的打開策にはなってないな、と。その点「Kinky Boots」は現実的だ。解雇の通告を受けた女の子が「リストラよりniche(ニッチ=他の会社が注目しない隙間市場)を開拓するべきだ」と主張したり、主人公も自宅を担保にしたり、ミラノのショーにマーケティングに出向いたりの努力は怠らない。もちろん現実のビジネスはもっと厳しいだろうけど(でもこれが実話に基づいてるだけに)ちゃんと納得がいったりして。見かけはタフで心優しいローラ。キャバレー・エンジェルクラブ(ベティのマヨネーズみたい。。。)では華やかに歌い踊る彼女も、ノーサンプトンの片田舎では偏見の対象でしかない。でも負けずに進んでいくローラは、男らしくて女らしくてカッコイイ。ローラのおかげでこの映画はかなりポイントが上がってるのでは?この映画を見終わった後、あのブーツを履いてみたい、、、という欲求に駆られるのはヒール好きの私だけだはないはずです。