一隅を照らす
【仕事に打ち込むことで高まる人格私は、日々の仕事に打ち込むことによって、人格を向上させていくことができると考えています。つまり、一所懸命働くことは、単に生活の糧(かて)をもたらすのみならず、人格をも高めてくれるのです。その典型的な例は、二宮尊徳です。彼は生涯を通じ、田畑で懸命に働き、刻苦勉励を重ねていくなかで真理を体得し、人格を高めていきました。そのような尊徳であったからこそ、リーダーとしてたくさんの人々の信頼と尊敬を集め、多くの貧しい村々を救うことができたのです。真のリーダーとは、このように人生において、ひたむきに仕事に打ち込み、そのなかで人格を高め続けているような人物ではないでしょうか。そのような人間であれば、リーダーとして権力を委ねられた後も、堕落することも傲慢になることもなく、集団のために自らを犠牲にして懸命に働き続けてくれるはずです。大小を問わず、あらゆる集団のリーダーが、今まで述べてきたように、人格を高めることに懸命に努める人であることを願ってやみません。それぞれの集団のリーダーの方々が、そのようにして一隅を照らし続けることで、日本の社会は、今までよりずっと素晴らしいものになると私は信じています。 稲盛和夫氏(この記事は、月刊『致知』2004年1月号「巻頭の言葉」ネットより】