つる植物の花々(5)
葛(クズ)の花
葛のつるの旺盛な成長力はひときわ目立つ。
ジャックのマメの木のごとく
天まで伸びる。
(中学校のグランドの片隅で、電柱を這い登り、
電線に覆いかぶさり繁茂する葛の木)
ほのかな甘い香りがあたりに漂う
今朝の散歩道。
ふと見上げると大きなハチが
クズの大きな葉っぱの陰から飛び出した。
葉っぱをかき分け、押しのけて見れば
なんとクズの花が咲いていた
大きな葉っぱの陰に隠れて
目立たないクズの花
甘いブドウのような香りを放って
紅紫色の可憐な花を咲かせてた。
クズの旺盛な生命力、
大木の桜の木に、ミモザの木に、
校庭の高い野球のヘンスに
這い上がり、
大きな葉っぱで辺り一面を覆い尽くしている。
20メートルもその蔓を伸ばすことが出来るという
夏の炎天で、地下から水をくみ上げて
大きな葉っぱを多く茂らせる。
その巨大な生命力
大きな葉っぱは太陽を一杯浴びて
地下の巨大なクズイモに
デンプンを蓄える。
かつては葛は人々の暮らしの中で大活躍。
葛の根のデンプンからは
くず粉そして葛餅となった。
(花は、大きな葉に隠れて、人の目につきにくい)
人目につきにくく馴染みのない葛の花。
でも、万葉人、山上憶良は
秋の七草に「葛花」をあげている。
古くから愛され親しまれた花
クズの花。
万葉人は
葛の蔓から布をつくり衣服にした。
「万葉集;巻7-1346」には、詠われている。
おみなえし 生ふる沢辺の真田葛原(まくずはら)
何時かも絡(く)りて わが衣(ころも)に着む
(オミナエシの生えている沢辺の葛原のクズよ
、いつか手ぐり寄せ私の衣にて着よう。)
クズの花を乾燥させた「葛花(かっか)」は
二日酔いの民間薬である。
その根「葛根(かっこん)は、
風邪薬として有名な漢方薬である。
こんなにも古くから人々の生活のなかで、
馴染み活躍してきたクズ。
今は無用の長物、
厄介ものとして、日本の山で街で
めげずにねばり強く生き続けている。
《花の名一口メモ》
クズ(葛)
マメ科のつる性の多年草。
北海道~奄美大島、朝鮮、中国、フィリピン、ニューギニアに分布。
大和国吉野(奈良県)の国栖(くず)が
有名なくず粉の産地であったためクズの名前がついたという。