Danjoseの花歳時記(外国編)-トルコに咲く花々(7)
野の花の楽園ペルゲ
ペルゲはトロイア戦争後、
ギリシャからの移民によって紀元前10世紀ごろに建設され、
紀元前2世紀にはローマの植民地として栄えた
ヘレニズム期の代表的な小アジアの都市。
(アクロポリスへと続くメインストリートの入り口に聳える、ローマ門とギリシャ門遺跡)
1万5千人を収容するローマ劇場や浴場、
アクロポリスに続く列柱街道
その街道にはアクロポリスの泉から水が流れる小川があり、
街道に沿って商店が立ち並ぶ
(競技場跡の列柱。瓦礫から芽吹いた雑草の緑を背景に菜の花やポピーが競って咲いている)
人々が集うアゴラがあり、体育館があり、
1万2千人を収容する楕円形の競技場がある。
競技場のアリーナは長さ324メートル、幅34メートルに及ぶ巨大なもの。
映画「ベン・ハー」のあの壮大な戦車競技がこの競技場でも、
多くの観客の心を揺すぶり、わくわくさせたことだろう。
人々で賑い、活気溢れた街ペルゲ。
かくも壮大な都市が今は瓦礫となって、
地下に眠っている。
そして、その荒れるにまかせた競技場跡には、
野の花々が溢れるように咲き乱れている。
競技場跡の瓦礫の中から、
菜の花やゼニアオイやポピーが咲き乱れ、
その花の黄やピンクや赤色が
若草の新緑と色のハーモニーとなって、
やわらかな、やさしい春を奏でる、
トルコの春、4月。
トルコは花の国、
その花の種類は、ヨーロッパ全土に咲く花の数に匹敵するという。
古代ギリシャ建築の石塊を覆い尽くすように、
大理石の建物の隙間に根を張って
咲き出す花々。
花に溢れる4月のトルコ、
エーゲ沿岸のオリーブで覆われた山々は
新緑で鮮やかに燃えていた。
数千年前に生きた人々も
この春のいのち溢れる芽吹きを眺めていたか。
数千年前の人々の暮らしに思いを馳せるとき、
その悠久のときの流れに
繋がって生きる自己の不思議さにうたれる。
古代の遺跡の数々が、今なお眠る大地。
紙に書かれなかった歴史が風化して、
大地に回帰している。
その膨大な時間と、その膨大な人々の暮らしの堆積物
そこにこそ真の歴史がある。
遺跡の残骸は、
今に生きる私たちに
何千年という大きな尺度でモノを見る必要を
静かに教えてくれている。
トルコの花々(完)