秋のサンティアゴ巡礼街道(4)
セイヨウキヅタの花が群れ咲く秋のカミーノ
古都ブルゴスから歩き始めて数時間、
どこまでも、どこまでも刈り入れの終った麦畑、
枯葉色の荒涼たる平坦な道が続く
秋の巡礼街道
日本の秋に比べても
咲く花の種類は少なく、寂寞とした道が延々と続く
秋のサンティアゴ巡礼街道。
そんな枯れた秋の平原に可憐に咲く花、
巡礼者の心に、ほっとした安堵を
何かしら感じさせてくれる花たちが
ひっそりと咲く。
黄色、青色の可憐な花々が、
秋の冷涼な空気に、
その深い色合いを一層深くして、
枯れ色の世界で、
ひっそりと気品さえ満ちて咲いていた。
枯れようとする野原のわずかな茂みに
オニノゲシの
葉っぱの青みがかった緑色が、
花びらの黄色が
巡礼者のこころを少しだけ
華やいだものにする、
オニノゲシ:(Sonchus asper)
ヨーロッパ原産、花期は春から秋と長い。
日本には、ノゲシと同じような環境に生育しているが
オニノゲシは明治時代に帰化した植物。
この冬は暖かいためか、日本では1月の今も道端の陽だまりに咲いている。
農家の土手には、
ツタが見事に生い茂り
秋の柔らかな光りを一杯に浴びて
薄黄緑色のヤツデのような花を
満々と咲かせていた。
Hedera helix:満開の花を咲かせているキヅタの群生
荒涼と続く、枯れた大地に、
太陽だけが明るく降り注ぎ
群がって咲く、淡いクリーム色の花だけが
そのいのちの営みの華やぎを告げる
サンティアゴへの道は
遥か遠く、まだ始まったばかりである。
《花の名一口メモ》
セイヨウキヅタ
(ヘデラの花)
ヘデラ(Hedera Helix)
崖や壁や木に這い登り、ある時は地面をおおい
ヨーロッパや西アジアに自生する。
Helixは、螺旋を意味する英語、ラテン語のhelikに由来。
若い葉っぱは5個の浅い切れ込みがあるが、
成長し長じると切れ込みはなく、ハート型の葉になる。
日当たりのよい場所で、夏の終わりから晩秋にかけて、
繖形花序(ヤツデのような)の花を咲かせ、晩冬には小さい黒い実となる。
花は昆虫の大切な蜜となり、
実は人間には有毒であるが、
鳥たちには冬場の大切な餌である。
現代ではヘデラは
オーナメント植物(装飾植物)として、多種栽培されている。
English Ivyとして知られている北アメリカでは、
とりわけ太平洋側においては、
帰化植物として、野生化してinvasive speciesとみなされ、
生態系を乱している。