2007/09/28(金)08:00
「獣に告ぐ、本能を消去(デリート)せよ」
狼が遠吠えを上げた
老いたマグルナーは目を細めた
いつもなら、彼もまた遠吠えを返していたであろう
だが、今宵は新月だ
狼にとって、もっとも縁遠い夜だ
マグルナーは毛が薄くなり凝ってしまった前足に顎をのせた
今宵は新月
どこかで恥知らずな狼が、幾頭も遠吠えを上げている
だがいずれ、彼らにも分かるときが来るのだ
マグルナーは欠伸をした
そして皺の寄った鼻先をひくつかせながら、ゆっくりと瞼をおろしていく・・・
獣に告ぐ、本能を消去(デリート)せよ
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不在証明様