テーマ:徒然日記(24534)
カテゴリ:心
昔、ある村に顔の醜い少女がいた。 孤児で、家もなく、森の落葉の中にもぐり、橋の下に寝る。 色は真黒、髪はボウボウ。着物はボロボロ、身体は泥だらけ。 少女は、その醜さゆえに、「泥かぶら」と呼ばれていた。 子どもからは石を投げられ、唾を吐きかけられ、 泥かぶらの心はますます荒み、 その顔はますます醜くなっていくばかり。 「あたしはこれからどうしたらいいの…」 夕日を見ながら、悲しくなり考え込むのであった。 * ある日のこと。 泥かぶらがいつものように荒れ狂い、 「美しくなりたい!」と叫んでいるところへ、 旅の老法師が通りかかった。 「これこれ、泥かぶらよ。 そんなにきれいになりたいと泣くのなら、その方法を教えてしんぜよう。」 「3つある。 まず1つは、自分の醜さを恥じないこと。 2つ目は、いつもにっこりと笑っていなさい。 そして3つ目は、人の身になって思うことじゃ」 * 泥かぶらは、激しく心を動かされる。 というのも、それらは、今までの自分とは、 まったく正反対の生き方だったからだ。 「この3つを守れば村一番の美人になれる」 法師の言葉を信じた泥かぶらは、 その通りの生き方をしはじめる。 しかし、急に態度の変わった泥かぶら見て、 村人は不審に思うばかりか、嘲笑し、中傷するのであった。 * ある時、事件が起こる。 事の発端は、村一番の美人で一番お金持ちの庄屋の子、こずえ。 彼女がどうしたことか、「助けて」と叫んで、 泥かぶらのところに走って来たのである。 こずえは、日頃から泥かぶらを嫌っていじめていた者の一人。 何かわけがあるに違いない。 すると、こずえの後ろから、 父親の庄屋が鞭を持ってやって来た。 庄屋は、命よりも大切にしていた茶器を割られたことで、 怒り心頭に達していた。 「泥かぶらが、割ったんだ」 父親の怒りを逃れるために、こずえは、 日頃から評判の悪い泥かぶらに罪を着せていたのであった。 * 怒り狂ったような庄屋は、娘の言うことを信じて疑わない。 泥かぶらを見つけると、容赦なく鞭で打って、 泥かぶらは、すべてを悟り、黙ってその 「人の身になって思うこと」 法師の、あの言葉を思い出し、 「助けて」と頼んだこずえの願いを聞き入れた。 何度も何度も鞭で叩かれ、ひどい言葉を浴びせられながらも、 泥かぶらはこずえを助けるために、最後まで耐え忍んだのであった。 * 「もうやめよう。お坊様がおっしゃった3つの言葉、 あんなことで私は良くなるとは思えない」 泥かぶらが全身ボロボロになって、 また丘の上の夕陽を見ながら泣いていた、その時だった。 後ろからそっとやってきた人がいた。 こずえだった。 「助けてくれてありがとう。本当に悪い事をした。 これは私の宝物だから、あんたに、もらってほしい」 そして、自分が一番大事にしていた * この時、泥かぶらは自分が報いられたことを知った。 生まれて初めての経験に、泥かぶらは声をふるわせながら、 こずえに言う。 「その櫛はいらないから、 その心だけでいいから・・・ どうかこれからあたしと、仲良くして・・・」 こずえは泣きながらうなずいた。 そして、泥かぶらの頭の泥を払い、櫛で髪の毛をすいてあげて かたわらの花を挿してあげるのであった。 * それからである。 泥かぶらの人生が好転してしていったのは・・・。 村人たちの泥かぶらへの評価がどんどん良くなっていく。 そうなればなおさら、泥かぶらはお坊さんの3つの言葉を、 さらに実践する。 喘息持ちの老人には山奥に入って薬草を取って持ってきたり、 子供が泣いていたら慰めてあげたり、子守りをしてあげたり、 人の嫌がることでもニコニコしながら次から次におこなった。 すると、心も穏やかになっていき、 あれほど醜かった表情が消えてなくなっていった。 村人のために労をいとわずに働く泥かぶらは、 次第に、村人にとってかけがえのない存在となっていったのである。 * ところが、そんなある日、村に恐ろしい「人買い」がやってきた。 人買いは借金のかたに、一人の娘を連れていこうとする。 泥かぶらと同じ年の親しい娘。 「いやだ、いやだ」と泣き叫ぶ娘の姿を見ていた泥かぶらは、 人買いの前に出て、自分を身代わりにしてくれと頼む。 こうして、売られていく泥かぶらと人買いとの都への旅がはじまる。 そんな時でも泥かぶらは、法師の3つの言葉を忘れなかった。 ・自分の顔を恥じない。 ・どんな時にもにっこり笑う。 ・常に相手の身になって考える。 * だから、旅の途中、毎日毎日、何を見ても素晴らしい、 何を食べても美味しいと喜ぶ。 どんな人に会っても、その人を楽しませようとする。 「売られて行くというのに、 おまえはどうしてそんなに明るくしていられるのだ」 不思議がる人買いに、泥かぶらは、 自分の心にある美しく、楽しい思い出だけを、 心から楽しそうに話して聞かせるのだった。 そんな泥かぶらの姿に人買いは、激しく心を揺さぶられた。 * 親に捨てられ、家もない娘が不幸でなかったはずはない。 それなのに、誰に対しても恨みごとを言わず、 むしろ村人たちに感謝さえしている。 そして、この自分に対しても、 楽しい話ばかりして喜ばせようとしてくれている。 それに引きかえ、それに引きかえ・・・ ああ、自分のこれまでの生き様はなんだったのか・・・。 * 月の美しい夜だった。 人買いは、泥かぶらに置き手紙を残してそっと姿を消した。 手紙にはこんな言葉が書かれていた。 「私はなんとひどい仕事をしていたのだろう。 お前のおかげで、私の体の中にあった仏の心が目覚めた。 ありがとう。仏のように美しい子よ」 泥かぶらはそのときはじめて、法師が自分に示してくれた、 教えの意味を悟り、涙した。 昭和27年の初演以来、国内外で7000回以上も上演されている 名作・演劇「泥かぶら」 / とあるメルマガに感動して。 ・自分を恥じない。 ・人に笑顔で接する。 ・人の立場になって考える。 * 自分は変われる。 しかも、いつでも変われるチャンスがある。 にもかかわらず、その真実に気づかず、 人生を惰性のまま、生きてしまってはいないか。 自分を映す鏡を、正視する勇気をもっているだろうか。 真正面から自分を見てくれていた声に気づき、 真摯な態度で接していただろうか。 いったい、自分はどうなりたいのか。 そのコタエは、自分自身の気持ちひとつにかかっている。 ![]() We see reflections of ourselves in other people. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 9, 2008 11:33:47 PM
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