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― 虚 室 生 白 ―

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January 9, 2008
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テーマ:徒然日記(24534)
カテゴリ:

昔、ある村に顔の醜い少女がいた。

孤児で、家もなく、森の落葉の中にもぐり、橋の下に寝る。

色は真黒、髪はボウボウ。着物はボロボロ、身体は泥だらけ。

少女は、その醜さゆえに、「泥かぶら」と呼ばれていた。
 

子どもからは石を投げられ、唾を吐きかけられ、

泥かぶらの心はますます荒み、
 
その顔はますます醜くなっていくばかり。


「あたしはこれからどうしたらいいの…」
 
夕日を見ながら、悲しくなり考え込むのであった。


*


ある日のこと。


泥かぶらがいつものように荒れ狂い、

「美しくなりたい!」と叫んでいるところへ、

旅の老法師が通りかかった。


「これこれ、泥かぶらよ。

 そんなにきれいになりたいと泣くのなら、その方法を教えてしんぜよう。」


「3つある。

 まず1つは、自分の醜さを恥じないこと。
 
 2つ目は、いつもにっこりと笑っていなさい。
 
 そして3つ目は、人の身になって思うことじゃ」


*


泥かぶらは、激しく心を動かされる。
 
というのも、それらは、今までの自分とは、

まったく正反対の生き方だったからだ。


「この3つを守れば村一番の美人になれる」

法師の言葉を信じた泥かぶらは、

その通りの生き方をしはじめる。


しかし、急に態度の変わった泥かぶら見て、

村人は不審に思うばかりか、嘲笑し、中傷するのであった。


*


ある時、事件が起こる。

事の発端は、村一番の美人で一番お金持ちの庄屋の子、こずえ。


彼女がどうしたことか、「助けて」と叫んで、

泥かぶらのところに走って来たのである。

こずえは、日頃から泥かぶらを嫌っていじめていた者の一人。


何かわけがあるに違いない。


すると、こずえの後ろから、

父親の庄屋が鞭を持ってやって来た。

庄屋は、命よりも大切にしていた茶器を割られたことで、

怒り心頭に達していた。


「泥かぶらが、割ったんだ」
 
父親の怒りを逃れるために、こずえは、

日頃から評判の悪い泥かぶらに罪を着せていたのであった。


*


怒り狂ったような庄屋は、娘の言うことを信じて疑わない。

泥かぶらを見つけると、容赦なく鞭で打って、

折檻せっかんをし始める。


泥かぶらは、すべてを悟り、黙ってそのむちを受けた。


「人の身になって思うこと」

法師の、あの言葉を思い出し、

「助けて」と頼んだこずえの願いを聞き入れた。


何度も何度も鞭で叩かれ、ひどい言葉を浴びせられながらも、

泥かぶらはこずえを助けるために、最後まで耐え忍んだのであった。


*


「もうやめよう。お坊様がおっしゃった3つの言葉、

 あんなことで私は良くなるとは思えない」

泥かぶらが全身ボロボロになって、

また丘の上の夕陽を見ながら泣いていた、その時だった。


後ろからそっとやってきた人がいた。

こずえだった。


「助けてくれてありがとう。本当に悪い事をした。

 これは私の宝物だから、あんたに、もらってほしい」

そして、自分が一番大事にしていたくしを差し出した。


*


この時、泥かぶらは自分が報いられたことを知った。

生まれて初めての経験に、泥かぶらは声をふるわせながら、

こずえに言う。


「その櫛はいらないから、

 その心だけでいいから・・・

 どうかこれからあたしと、仲良くして・・・」


こずえは泣きながらうなずいた。

そして、泥かぶらの頭の泥を払い、櫛で髪の毛をすいてあげて

かたわらの花を挿してあげるのであった。


*


それからである。

泥かぶらの人生が好転してしていったのは・・・。

村人たちの泥かぶらへの評価がどんどん良くなっていく。

そうなればなおさら、泥かぶらはお坊さんの3つの言葉を、

さらに実践する。


喘息持ちの老人には山奥に入って薬草を取って持ってきたり、

子供が泣いていたら慰めてあげたり、子守りをしてあげたり、

人の嫌がることでもニコニコしながら次から次におこなった。


すると、心も穏やかになっていき、

あれほど醜かった表情が消えてなくなっていった。

村人のために労をいとわずに働く泥かぶらは、

次第に、村人にとってかけがえのない存在となっていったのである。


*


ところが、そんなある日、村に恐ろしい「人買い」がやってきた。

人買いは借金のかたに、一人の娘を連れていこうとする。
 
泥かぶらと同じ年の親しい娘。


「いやだ、いやだ」と泣き叫ぶ娘の姿を見ていた泥かぶらは、

人買いの前に出て、自分を身代わりにしてくれと頼む。

こうして、売られていく泥かぶらと人買いとの都への旅がはじまる。

そんな時でも泥かぶらは、法師の3つの言葉を忘れなかった。


・自分の顔を恥じない。

・どんな時にもにっこり笑う。

・常に相手の身になって考える。



*


だから、旅の途中、毎日毎日、何を見ても素晴らしい、

何を食べても美味しいと喜ぶ。
 
どんな人に会っても、その人を楽しませようとする。


「売られて行くというのに、

 おまえはどうしてそんなに明るくしていられるのだ」


不思議がる人買いに、泥かぶらは、

自分の心にある美しく、楽しい思い出だけを、

心から楽しそうに話して聞かせるのだった。

そんな泥かぶらの姿に人買いは、激しく心を揺さぶられた。


*


親に捨てられ、家もない娘が不幸でなかったはずはない。

それなのに、誰に対しても恨みごとを言わず、

むしろ村人たちに感謝さえしている。

そして、この自分に対しても、

楽しい話ばかりして喜ばせようとしてくれている。


それに引きかえ、それに引きかえ・・・

ああ、自分のこれまでの生き様はなんだったのか・・・。


*


月の美しい夜だった。

人買いは、泥かぶらに置き手紙を残してそっと姿を消した。
 
手紙にはこんな言葉が書かれていた。


「私はなんとひどい仕事をしていたのだろう。
 
 お前のおかげで、私の体の中にあった仏の心が目覚めた。

 ありがとう。仏のように美しい子よ」


泥かぶらはそのときはじめて、法師が自分に示してくれた、

教えの意味を悟り、涙した。



昭和27年の初演以来、国内外で7000回以上も上演されている

名作・演劇「泥かぶら」 / とあるメルマガに感動して。







・自分を恥じない。
  
・人に笑顔で接する。
  
・人の立場になって考える。



*


自分は変われる。

しかも、いつでも変われるチャンスがある。

にもかかわらず、その真実に気づかず、

人生を惰性のまま、生きてしまってはいないか。


自分を映す鏡を、正視する勇気をもっているだろうか。

真正面から自分を見てくれていた声に気づき、

真摯な態度で接していただろうか。


いったい、自分はどうなりたいのか。

そのコタエは、自分自身の気持ちひとつにかかっている。


人は自分を映す鏡。

We see reflections of ourselves in other people.





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Last updated  January 9, 2008 11:33:47 PM
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