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― 虚 室 生 白 ―

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April 3, 2008
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夕方、些細なことで彼と言い合いになって

喧嘩みたいなのになって出てって

バイクで暴走して・・


彼、死んじゃう...



急いで病院へ駆けつけた。

泣き叫ぶ彼女を、私は強く抱きしめた。

彼女はヒックヒックいっていて、震えが止まらない。

この光景を、私は今でも忘れることができない。


それは数年前。

愛する人を失ってしまった友人の悲劇。

アパートを出た彼のバイクは車と衝突。

数時間後、息を引き取った。


決定的なものが残った。

彼のポケットにはなんと、

指輪が入っていたのである。

きっと彼女へ贈るためのものだったに違いない。


自分の愛する人を、

これから人生を共に刻んでいくはずの人を、

彼女は一瞬にして失ってしまったのである。


死ぬかも知れないという前ぶれも覚悟もなく、

生きているのが当然の人が、

いきなりこの世から居なくなるということ。

これは経験した人間でなければわからない。


彼女は未だに、彼を愛している。

他の誰をも受け容れることができない。

幾度となく相談を受けてきたけれど、

結論はいつも同じ。


泣き出す。

彼なら、こうした、

彼じゃなきゃダメだ、

死にたいと言う。

そして自分を責めはじめる。

私は抱きしめる。

もう、彼はいないんだ、

生きなくちゃダメ、

自分の幸せを考えろと。


昨夜もまた同じことを繰り返した。

しかし、彼女の気持ちは痛いほど解る。

そして、あの時の映像を思い出す。


ともに泣く。


人はどこまで強くなれるんだろうか。

聞いてあげること以外に、

私にできるもっとすごいことが

ないんだろうかっていつも思う。


そんなことを考えていたら、

ニュースでまたいつものやつ。

簡単に自らの命を落とす人間、

そうかと思えばわが子を殺める親、

暫定税率やら日銀総裁やら、

もうどーにでもなれって思う。


生きてんだ!

それだけで有り難い。

「生」ほど壮大なものはない。

生きかえってくれなんて願ったって、

もう、あいつはかえっては来ないんだ。


結論は振り出しに戻る。

もう、この世の中の何もかもが

どーでもよくなる。


外ではいつも笑顔の素敵な女性。

しかし彼女の頭の中では、まだ、

彼と暮らしていた頃の思い出の、

ひとコマひとコマが映っている。

停止なきリピート状態で。


支えてあげられる間は、

私が彼女の心の支えになろう。


かならず来るよ。

彼を忘れさせてくれるものに出逢え、

生きていることが美しく思える、

生ある人を心から愛せるときが。


いつかきっと。


忘 れ さ せ た い 。

I want to forget her sadness.





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Last updated  April 4, 2008 02:17:19 PM
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