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そういちの平庵∞ceeport∞

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☆そういち☆

☆そういち☆

2008年02月18日
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カテゴリ:カテゴリ未分類
ブラジルのスラムに生きる子供たちの仁義なき戦いを描いた「シティ・オブ・ゴッド」の監督フェルナンド・メイレレスの2作目「ナイロビの蜂」をムービープラスで観る。

「信じがたいが、『シティ・オブ・ゴッド』で撮影したリオのファベーラスラムよりひどいところだ。酔いも覚めるほどの貧困だ」

「そこには驚くべき景観と我々を温かく迎え入れてくれた人々がいる。とても美しい場所だ。しかし僕はこの大陸が持つ問題を忘れることができない。それは僕の想像より遙かに大きなものだった。イギリス人は国が貧しいからだと言う。それもひとつ。だが僕のようなブラジル人はこう言うだろう、『何か他に原因がある』と。彼らの未来はどうなるのか? 未来への希望を持つのは難しい。だが我々は希望を持たねばならないんだ」

というフェルナンド・メイレレスの言葉。

そんなアフリカを舞台にイギリス人外交官ジャスティンは、妻が医療ボランティアをしながらヨーロッパの大手医薬品会社を調査していたことを知る。

その会社「スリー・ビーズ(三匹の蜂)」は、アフリカの貧しい村を回って無料で医療を与える条件として、村人たちに結核の新薬を治験を受けさせていたのだ。

結核やエイズや飢餓や内乱で人間がバタバタ死ぬアフリカでは、無料で薬を配布することで格安の治験ができる。

世界の貧しさは様々な形で食い物にされる。

新薬には危険な副作用があった。それで死んだ村人はみんな行方不明になる。



現実を知って驚くジャスティンはこう言われる。

「あなたは、企業が単に善意だけで援助しているとでも思ってたのか?」

ジャスティン以外のイギリス人外交官たちはすべて、その企業に加担し株価の高騰を喜ぶ。

製薬会社は本国イギリスの過疎地で1500人の雇用を達成。

抗生剤に免疫を持つ新しい結核やエイズや貧困、食い物にされるアフリカ。

その恩恵を受ける先進国。

5万ドルほどの賄賂で全てを黙認するケニア政府。

舞台となったケニアでは発禁となった「ナイロビの蜂」

原作者のジョン・ル・カレの言葉


「今これを書いているあいだに、ミネソタ州出身の司祭で、36年間ケニアで働いてきたジョン・カイザーの死のニュースが伝わってきた。死体はナイロビの北西50マイルのナイヴァシャで発見された。頭部に銃弾を撃ち込まれていた。近くで散弾銃が見つかった。カイザー氏は、ケニア政府の人権政策──あるいは、その不在──を長年にわたって声高に非難してきた人物だった。このような事件はこれからも起きるかもしれない。」


原作のモデルとなった19歳から、60歳で亡くなった1999年まで、難民救済に生涯を捧げたフランス人女性イヴェット・ピアパオリ。


貧しい境遇からカンボジアで貿易業を起こし19歳で国際難民救済協会で働き始める。戦乱で財産を失うとタイで再起業し再びアフリカの難民支援活動に入ったものの1999年60歳で事故死・・・・殺されたかと思う。


原作はこの女性に捧げられている。

最近若い頃に出会ったNGOの人々のことを思い出す。

エチオピア。

バングラディッシュ。

タイ。

この映画とさして変わらぬバングラディッシュの現実を見て「これは、焼け石に水じゃないのですか?」と聞いた。

なにしろ先進国の援助はブラックマーケットに流れ、賄賂で潤う一部の人々とその他大勢の道端で寝る人馬車とリヤカーの通る道をベンツやBMWが疾走する分かりやすい国なのだ。

空港やスラムではビートルズのように物乞いする子供たちの歓待を受けた。

焼け石に水と愚かな僕が聞いた相手は凄腕のNGOのプロでもあり、世界的に有名な牧師でもあった。

「無駄じゃないのです。小さな働きが神様の栄光を表すのです。ワンダフルです。」

と聖霊に満たされたこの牧師先生は、嬉しそうに僕に諭してくれた。

僕は、時々この人の言葉を思い出す。

当時の僕とさして変わらぬ年齢の女性が看護婦など様々な形で政治的腐敗とカーストの蔓延るバングラディッシュで活き活きと働いていた。

過酷な過酷な環境で・・・・・カースト外のアンタッチャブルの人々の学校を作ったり井戸を掘ったり色々な事をしている日本人のことはあんまり知られていない。



僕には、貧困が見えなかった。

未だこの先生の語ってくれた言葉が心の底まで落ちない。

落ちつつは、あると思う。


時々スラムに行きたくなる。

旅行や旅などしたくもなくなった。

でも、スラムには、時々行きたくなる。

貧しい彼らの極上の笑顔に出会いたくなるのだ。

アジアの貧困を見ても当時の僕には、日本のほうがきっちりと病んでいると思った。

若い頃の日本よりさらに祖国の病は進む、貧しい国の状況も良くなるわけもないと日々の暗いニュースを見て思う。


「ナイロビの蜂」には、救いが無い。

救いが無い現実をとことん描く。

そんな現実を日々生きつつ、精神の貧困と物質の貧困が同時進行するこの世界で『ナイロビの蜂』の撮影はケニアで行われ、撮影中にスタッフ達は現地の人のために清潔な水を供給するタンクや、橋を作り「コンスタント・ガーデナー・トラスト」を結成し、映画での収益と、映画に共感した人々からの寄付などを元に、アフリカの貧困層への援助を続けている。

やはり焼け石に水だろうと思う。

若い頃よりは現実を知った今。

不幸な人がこの国に沢山いるということも知ってしまった。

スラムのような笑顔すらない人々。

多国籍企業の現実や各国政府の現実に引き裂かれる世界に打ちひしがれる人々。

そんな圧倒的な現実を前にドラえもんのような容貌の牧師先生の笑顔やスラムの子供達の笑顔が思い浮かぶ。

走馬灯のように色々な記憶を引き起こさせる「ナイロビの蜂」は、凄い映画だと思う。




(-∧-)合掌・・・




 ナイロビの蜂 / レイフ・ファインズ



ナイロビの蜂(上)



ナイロビの蜂(下)





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Last updated  2008年02月18日 01時27分30秒
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