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「張真晟」チャン・ジンソンの詩集『わたしの娘を百ウォンで売ります』のなかにこんな詩があった。
配給所 全国的に配給所が店仕舞いした初日 政府は約束したもうじき配給をくれるだろうと その日はきっと来るだろうぼくらは自分たちのひもじさよりも 米のない国のことが心配で家財を売って献納した空きっ腹を抱えて出勤した ひと月またひと月待っても配給所は店を開けなかった 餓死する人たちも増えたけれどぼくらは政府を信じたのでぼくらの不幸を信じなかった こうして流れていった四年間ぼくらはそんなことも知らなかった 三百万人が飢え死にした事実さえも 脱北者で詩人のチャン・ジンソン(仮名)は、金日成総合大学を卒業し、北朝鮮の労働党で宣伝作家として活動していた。チャン・ジンソンは1990年代中盤に北朝鮮を襲った大規模な飢饉(ききん)を詩で記録した。一九九五年から一九九八年の間に、すぐ近くの北朝鮮で三〇〇万人の人民が餓死したと言われている。 『わたしの娘を百ウォンで売ります』 女は憔悴していた ――わたしの娘100ウォンで売ります 書かれた紙を 首にかけ おさな児を わきに 市場に たつ その女 女は 唖者であった 売られる 娘児と 売る 女を ながめては 人々の 投げかける 呪詛に 地べた みつめる その女 女は 涙も 枯れていた 母が 死病に かかっていると わめき 泣き叫ぶ 娘児は その母の裾 にぎりしめ 女は ただ くちびる 震わせるばかり 女は 感謝も 知らなかった あんたの 娘ではなく 母性愛を 買うと ひとりの軍人 100ウォン差し出すに その金 もって どこへやら 駆け出した その女 女は母であった 娘売った 100ウォンで 小麦粉パン かかえ 慌て 駆け戻り 別離れ行く 娘児の 口へ 押し入れる ――赦しておくれ! 慟哭する その女 人道支援という名で各国より救済米という形で送られてきても、物乞いする人々には目もくれず、先軍を叫ぶ所に支給され、そのコメを食べて力を得た先軍…独裁者の命だけを救っている。人道主義の裏切り、赤十字の傲慢ぶりが分かる。と詩人は語る。 食べ物も無く鍋釜まで徴用された戦時中の日本のような状態が半世紀以上続く北朝鮮という国家。 こういった状況は、「救済米というな」という詩で綴られる。 世界の 国々よ この国に 米なるものを 送り 救済米と 言うなかれ その 赤き 赤十字は 我らが 血で 血塗られたり その米で 兵士を 増大し 砲身を つくり 残れば その米で 閲兵式 武力示威 食べたる 力を 誇示する 先軍 これに なお 力つけさせる 援助だ 支援なのだ 独裁者なるを 救済するだけの 人道主義への 背信 赤十字社の 欺瞞 どうか 世界の 諸国家よ 送る 米の あるなら いっそ 我らの 頭上から 無一物の 我らの 頭上から ああ 砲撃して おくれ! 脱北詩人「張真晟」(チャンジンソン)は、「わたしの作家」と北朝鮮の金正日から呼ばれるほど、一世を風靡した若い北朝鮮の詩人だった。 最も貧しい国に最も富裕な王がいるということを知ったとき、彼は脱北を決意する。 2004年に北朝鮮と中国の国境を流れる豆満江を渡る。幅数メートルしかない河を渡りながら、腹が立ってしかたがなかったという。 こんな近くに自由があるのに、われわれはこんなにもしんどく生きていると、恨めしかったと、詩人は回想している。 (-∧-)合掌・・・ わたしの娘を一〇〇ウォンで売ります お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008年09月12日 13時33分14秒
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