神々の乱心 松本清張著
出版社/著者からの内容紹介
昭和八年、「月辰会研究所」から出てきた女官が自殺した。特高係長は謎を追うが──。満洲と日本を舞台に描いた未完の大作千七百枚
内容(「BOOK」データベースより)
昭和8年。東京近郊の梅広町にある「月辰会研究所」から出てきたところを尋問された若い女官が自殺した。特高課第一係長・吉屋謙介は、自責の念と不審から調査を開始する。同じころ、華族の次男坊・萩園泰之は女官の兄から、遺品の通行証を見せられ、月に北斗七星の紋章の謎に挑む。―昭和初期を雄渾に描く巨匠最後の小説。
皇居に宮中
阿片に関東軍
大本教への弾圧と出口王仁三郎の満州での活躍
昭和史の一番面白いところは、未だタブー視されている。
満州国建設と中国大陸での日本の阿片政策と天皇家の役割。
この本を読んで僕が思い浮かべたのがヨーロッパ王家や貴族の500年に及ぶ植民地支配とこれに連なる商人たちの暗躍なのだが。
フィクションによって清張が伝えようとした昭和という時代と戦争への狂想。
富や権力への野望と様々な人間模様が丹念に描かれるこの作品は癌に侵された清張が死の間際まで書き綴り未完となるも充分に楽しめる。
物語の核となる天皇家に伝わるとされる3種の神器に纏わる筋立ては、天皇家という神話の創生とも密接に絡み。
でっち上がられた天皇家という家柄が歴史となり、権威となり、権力となった経緯すら彷彿とさせる。
この国の歴史の中心に何があるのか?
稀代の歴史研究家でもある清張が死の間際まで全力で書いた神々の乱心は、見事としかいうほか無い骨太の傑作だ。
神々の乱心(上)
松本清張と昭和史
松本清張の「遺言」