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カテゴリ:お酒の話
素敵なお酒に出会った。
過日ある卸問屋主催の試飲会に出かけたときのこと。 例によって「何か面白いお酒はないかな~」と思いながらいろいろなブースを眺めていると、 あるお酒のブースで法被姿の女性が、一生懸命お酒の説明をしているのが目に入った。 『川中島 幻舞』というお酒だ。 いまどき女性の営業さんはそれほど珍しく無いのだが、ちょっと気になって試飲させていただいたところ....... 「う、美味いっ!」 お米の旨味が充分に出ていながら、決して重たくなること無く、後口もスッと切れる感じで、 また多分にフルーティーな風味もあり、バランスも良く、 この日試飲した他のお酒とは、明らかに一線を画していた。 いっぺんにこのお酒が気に入ってしまった。 さらにその女性にいろいろお話を伺っていると、この方は営業の方ではなく、 何と「杜氏さん」だったのだ。 皆さんご存知のことかと思うが、酒蔵という場は古来より「女人禁制」なのだ。 だから「女性杜氏」というのが登場したのはごくごく最近のことで、 まだ全国でも何人もいない、珍しい存在なのだ。 この杜氏さん=千野麻里子さんはこの酒蔵の一人娘さんで、 大学で醸造学を学んだ後に、ごくごく自然にこの蔵に入り、 前任の杜氏さんが病気で倒れた後にそのまま杜氏に就任されたそうだ。 そしてこの『川中島 幻舞』は、彼女が杜氏になって初めて自分で作り上げた作品なのである。 それだけにこのお酒に対する思い入れもたっぷりなのだろう、その場でちょっとお話しただけなのだが、 彼女の素朴な人柄がお酒に乗り移ったような、そんなやさしい味がした。 ついでながら『酒千蔵野』(以前は『千野酒造場』という名前だった)というこの酒蔵は、 現存する酒蔵の中では全国でも7番目に古いという、由緒正しい蔵元だ。 創業が1540年というが、お酒の名前にもなっているあの有名な『川中島の戦い』がこの10数年後のことだから、 まさにその戦場となったこの地で、上杉謙信と武田信玄の戦いを見守ってきたということだ。 参考までに武田信玄が陣中で、ここの蔵のお酒を飲んだという逸話が残っているらしい。 ちょうどNHK大河ドラマ『風林火山』も大詰めで、この『川中島の戦い』の真っ只中だが、 ドラマを観ながらこの『川中島幻舞』を味わうというのも、また一興かもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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