2009/11/01(日)22:39
『沈まぬ太陽』
あまり宣伝が大々的な映画というのは、往々にして肩透かしを食らったりすることも多い。
そんな懸念もあったが、「映画の日」の今日は1,000円で観られるということもあって、
妻も観たがっていた『沈まぬ太陽』を一緒に観賞して来た。
いやいや、なかなかどうして、素晴らしい出来ではないか!
物語は1985年の御巣鷹山ジャンボジェット墜落事故を軸に展開する。
ストーリー自体はあくまでもフィクションだが、事故自体は現実にあった出来事だし、
ここに登場する半官半民の『国民航空』というのは、紛れも無く今話題の“あの”航空会社だ。
ある意味ドキュメンタリー的な部分がフィクションの中に混在しているわけで、
場合によってはリアルの人物に対して、一方的なイメージを植えつけてしまうことも有り得る。
聞くところによると、遺族の方の描き方を巡って考え方の相違があり、撮影が難航したともいう。
それでも今、あえてこの作品を映像化して世に出そうとしたスタッフたちの、
並々ならぬ決意には拍手を送りたいと思う。
あの墜落事故を風化させないためにも、後世に伝えていくべき映画だと思う。
またこの映画の公開に歩調を合わせるかのように、
日航の経営危機についてのニュースが取り沙汰されているのも、何か因縁めいたものを感じる。
日航に対しては、今一度自らの足下をしっかりと見つめ、
襟を正して再建の道を歩んで欲しい、というメッセージなのだろうか。
エンタテイメントとしての映画性も疎かにはされていない。
全体的に重苦しく、かつ長い(202分)作品だが、
それでも最初から最後までずっと引き込まれっ放しだった。
主人公の理不尽な人事異動のことと、ジャンボジェットの墜落事故、
このふたつの大きなテーマをあえて区切らず、それぞれの時間軸を交互にかみ合わせながら物語を進行させ、
その合間に家族愛などの要素をちりばめていった、脚本の上手さゆえではないかと思う。
あとはやっぱり、個々の役者もそれぞれの持ち場で、それぞれいい仕事をしている。
主役の渡辺謙にとっても、彼のキャリアの上での代表作になるものではないだろうか。