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chery2974のブログ

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創作

2015年08月06日
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カテゴリ:創作











列車は光の世界を ひた走る

窓外の風景は 瞬く間に 過去へと捨て去られゆく


息を切らして進む列車の先に 待ち受けるのは

果てしない虚空へと連なる 隧道


誘導灯もブレーキも 持たない列車は 

暗闇のトンネルを 突き進むしか術がない

 暗黒の恐怖が 襲いかかる



牛飼いsignal.gif



やがて 常闇にも かすかな光明が・・


列車のスピードは しだいに緩やかになり

明るい光が まばゆく列車を照らし始める






ginga4c牛飼い.jpg




バナーushi_b牛飼い.gif






Last updated  2015年08月06日 23時16分21秒


2014年01月28日
カテゴリ:創作

 

 

 

 

 

 

「赤ちゃん、かわいかったでしょ?」と、静子ちゃんがつぶらな目で

よっちゃんの顔を覗き込みながら聞くので、 よっちゃんは、

「うん、とても小さかったよ。」と答えました。

「いいなあ、私も弟か妹がほしいなあ。」

よっちゃんには、お姉さんがいる静子ちゃんの方がうらやましいです。

静子ちゃんのおねえさんは、髪を三つ編みにしていつもかわいい

リボンをつけています。色が白くて 唇がぷっくりしていて、

そのさくらんぼのような口元が、よっちゃんにはとても好ましく

感じられるのです。 

 

静子ちゃんと家の前で別れると、寄り道せずに神社の前を通り過ぎます。 

今日は土曜日で、村田のおばさんのお家でお昼ご飯を食べることに

なっているので 、すこしだけ急ぎ足になります。

踏切に差しかかると、ちょうど遮断機が降りて急行列車が風を

切って通り過ぎました。線路脇の砂利道に咲いているピンクのコスモスが

風に巻かれていっせいに揺れてます。 

よっちゃんの住む家は、踏切を渡って左に曲がりますが、村田のおばさんの

家は、金物屋さんや八百屋さんが並ぶ道をまっすぐ進み、右に折れて

狭い路地に入ります。この道は雨が降るとぬかるんで、靴がどろんこに

なるので、雨の日には行きたくありません。 

今日はよく晴れてお日様が真上から照り付け、泥道も

乾いているので安心です。

狭い路地の両側に、同じような黒い家がずらっと建っています。

おばさんの家は路地の真ん中あたりにあり、玄関の両側に

木の塀があるので、外側からは中が見えません。

 

ガラガラと戸を引いて中に入り、暗くひんやり湿った土間を通って

お勝手に行くと、 「よっちゃんお帰り。ちょうど今できたところだよ。」

おばさんはガラガラ声で言いながら、大きなガラス鉢にたっぷりと

入れた素麺をちゃぶ台の真ん中にどんと置きました。

すると、ふすまの向こうから康男ちゃんがするっと出てきました。

康夫ちゃんはこの家の末っ子で、4年生です。

よっちゃんと一番年が近いけど、無口であまりしゃべりません。 

おばさんに、「よっちゃんと遊んであげなさい。」と言われると

仕方なさそうに、 隣の部屋に連れて行ってくれました。

そこは、上のお兄さんの勝ちゃんの部屋で、壁には橋幸夫の

ポスターが張られ、レコードが何枚も置いてありました。

「黙って入って怒られない?」 よっちゃんが尋ねると 、

「夕方まで仕事で帰らないから。」 と、言ったきり部屋を出て行って

しまいました。  

 『 勝ちゃんは橋幸夫のどこが好きなのかな?』

橋幸夫の目は一重まぶたで細いし、よっちゃんはあまり好きでは

ありません。西郷輝彦の方が素敵だと思ってます。

レコードのジャケットのどれを見ても、やっぱり同じです。 

 

つまらなくなって勝ちゃんの部屋を出て、庭に面する縁側に行ってみました。

セミの鳴き声が聞こえます。庭に一本だけある木のどこかに

いるのでしょう。でこぼこした板張りに座ってぼんやりしていたら、

背中の方で、ボーンボーンボーンと時計の音が鳴りました。

驚いて後ろを振り返ると 、部屋の中はうす暗くはっきり見えない中で、

箪笥の上にある仏壇の中の金色が目にとまりました。

早くに亡くなった康夫ちゃんたちのお父さんのお位牌です。

よっちゃんは、一度も会ったことがありません。いつごろ、

なぜ、亡くなったのかも 知りません。よっちゃんが村田の家の人たちと

顔を合わせるようになったのは、よっちゃんがこの町に連れてこられ

幼稚園に入園し、しばらくしてからのことです。

おばさんとお父さんはいとこ同士なので、ずっと昔からの知り合いです。 

 

お勝手の方で、おとなの話す声がしています。畳の上をばたばた

走って行くと、そこに 

お父さんがブドウの入った袋を下げて立っていました。 

 


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Last updated  2014年01月29日 01時34分24秒
2014年01月25日
カテゴリ:創作

flower1328ひまわりライン.jpg 

よっちゃんがお父さんに手を引っ張られながら改札口を出ると

  お日様がかっと照り付け 、さっきドアに挟まれた指がますます熱くドクドクと

脈打つように痛みます。よっちゃんのお気に入りの、ひまわりの柄の

ワンピースの背中や脇の下には 汗がじんわりと滲んでいます。

駅前にはお饅頭屋さんや食堂がありましたが、しばらく歩いていくと、

道の両側は田んぼばかりが目につき、ぽつぽつと古い家が

立っているだけです。 遠くに警察署が見えました。

よっちゃんが、おばあさんの家に行く道をぼんやりと覚えてるのは

あの大きな建物のおかげです。警察署の手前の少し細くなった道を

左に曲がると、もうすぐおばあさんの家です。 

おばあさんの家は以前はお店を していたので、上半分にすりガラスの

入った大きな引き戸をがらがらと引いて中に入ります。

端っこの方には、ドアになっている出入り口もあります。 

今日はそのドアから入ると、中は薄暗くて 少しひんやりとしています。

土間になった通路を進むと、おばあさんがキセルで煙草を 

吸うのに使う長火鉢がおいてある部屋に、靴をぬいであがりました。 

おばあさんの姿は見えなくて、よっちゃんは少しだけほっとしました。

お父さんが、麦茶を出してくれてるおばさんに、

「義姉さん、包帯ありますか。よし子が手をはさんで しまって。」と言うと、

おばさんは、「これでしばらく冷やした方がよかでしょ。」と冷たいタオルを

持ってきてくれました。 冷たいタオルは気持ちよくて、痛みも

薄らいでいくようでした。  「おっかさんは?」とお父さんが聞くと

「すぐ近所に行っとらすけん、すぐに帰ってきんしゃですよ。早よ、二階に

上がって赤ちゃん見てつかーさい。」と、おばさんにせかされて、

よっちゃんはお父さんの後ろから急な階段を登りました。

二階にはみっつ部屋があって、真ん中の部屋におかあさんと赤ちゃんは

寝ていました。 おかあさんはいつもより色が白くて、パーマのかかった

髪の毛がへんな形に盛り上がってます。

お布団に寝ている赤ちゃんは小さくて、顔全体がピンクがかった色をして、

ぽやぽやした髪は少ししかありません。 

お父さんがじっと赤ちゃんを見ていると、おかあさんが

「抱いてみますか?」     「いや、いい。」

目を覚ましたのか、赤ちゃんがふぎゃ~と泣きだしたので、

よっちゃんはびっくりして、赤ちゃんを覗き込んでいた頭を引っこめました。

よしよしとあやしながら、おかあさんは赤ちゃんを抱きおこし、

浴衣の胸を広げておっぱいを飲ませ始めます。 

おかあさんのこんなに大きなおっぱいは、これまで見たことがありません。

青くすじが浮いたおっぱいは気持ち悪いな、とよっちゃんは思いました。 

赤ちゃんは、口の端っこから白い汁をこぼしながら、一生懸命に

吸っています。よっちゃんは、何だかこんな光景をずっと前にも

見たことがあるような気がしました。自分が赤ちゃんの時かな、

とも思いましたが、そんなに小さい時の事を覚えているはずもなく、

よっちゃんが、このおかあさんのおっぱいを飲んだことがないのは、

ちゃんとわかってました。

「よし子、おかあさんがお家に帰るまで、

村田のおばちゃんの言う事をよく聞いて、ちゃんと学校に行くのよ。」

胸元を直しながら言うおかあさんの言葉に、よっちゃんは「うん。」と

うなずいただけです。 

帰る頃に なってようやくおばあさんと、よっちゃんより一つ下の

まり子ちゃんが帰ってきました。

「もう帰るの?よっちゃん、また今度来てね。」まり子ちゃんは

大きな黒い目をくるっとさせてバイバイと手を振りました。 

おばさんに包帯を巻いてもらったから、

もうあまり痛くはないはずなのに、何だかズキズキします。

よっちゃんは涙ぐみそうになりながら、来た道をまた駅の方に

お父さんと戻って行きました。

 

 

 

 

 

 

 

 





 
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Last updated  2014年01月26日 01時00分05秒
2014年01月24日
カテゴリ:創作



ごとごと走る電車の揺れと同じように、小柄なよっちゃんの体は

隣に座ってるお父さんの体にぶつかったり、反対の向きに倒れそうに

なったりします。そっとお父さんの顔を見上げると、

お父さんは腕を組んで目を閉じたままちっとも動きません。

お父さんは、お家でもいつもよく寝てるのです。

お向かいに座ってるおばさんも、時々首がコクッコクッとなって

何だか鶏が寝てるみたい、とよっちゃんは思いました。

 

古びた木製の電車の窓から吹き付ける風は、

少し湿り気を帯びているものの、夏休みの頃と比べるとずいぶん

涼しく感じます。上げ下げ窓からすーっと 入ってきた風は、

よっちゃんのおかっぱ頭の髪をかき分け、広いおでこを丸見えにし、

       生え際にかいた汗をかわかしていきます。

          急にぎーっとブレーキの音がして、電車がガタンと止まり、

      よっちゃんの体は危うく通路へ転がり落ちてしまうところでした。

        思わずお父さんのズボンのポケットをつかんでいたようで、

よっちゃんがよいしょっと体勢を整えると、お父さんは薄目を開けて

よっちゃんを見ましたが、すぐにまた目を閉じてしまいました。 

ホームを挟んで向こう側にも同じ電車が止まっています。

ぴーっと笛の音がすると 、その電車はよっちゃんの乗った電車とは反対

方向へ走り出し、すぐに茶色のお尻しか見えなくなってしまいました。

 

よっちゃんは、足をぶらぶらさせて田んぼの稲がさやさやと揺れるのを

見ながら、もうすぐ会える赤ちゃんのことを考えます。

そう、お母さんがおばあさんの家で男の赤ちゃんを産んだので、

会いに行くところなのです。おばあさんはちょっと怖くて、

あまり会いたくないけれど、赤ちゃんは見てみたい。 

少し前にいとこになった、みや子ちゃんまり子ちゃんにも会いたい。 

「次は終点〇〇、〇〇」という車掌さんの声がすると、よっちゃんは

座席からすとんと降りて、早々と降り口のドアの前に立ちました。

ガラス越しに、「カクイわた」とか「 キッコーマン」とか書いた看板が

目の前を通り過ぎて行きます。やがて、電車はギギギーと車輪を

きしませて止まりました。よっちゃんの胸は少しドキドキしてます。

早く、早く!と気持ちがはやるけどドアがなかなか開きません。

 

ようやくドアがあいたと思った瞬間、右手に鋭い痛みが走りました。

あっ、手が挟まれてる! 

よっちゃんは、思いっきり右手を引っ張り出すと、まだ座席に座ってる

お父さんの元へ駆け戻り、お父さんの硬い膝の上に突っ伏して

しまいました。

お父さんはびっくりしてよっちゃんの体を起こすと、

「どうした?」と聞きますが、よっちゃんは何も言えません。

挟まれた右手を差し出すと、中指の指先から第一関節の少し下まで 赤く

ぷっくりと腫れていました。

「大丈夫、大丈夫。すぐよくなる。」 と、お父さんが言うので、

よっちゃんはジンジン痛くて泣きたいのをぐっとこらえました。

「さあ、行こう。」と、お父さんはよっちゃんの痛くない方の手を取って

さっさと歩き出します。

よっちゃんは、お父さんに引っ張られるように電車を降りたのでした。

 

                       つづく

 

 

 

 

 

 

 





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Last updated  2014年01月25日 00時49分38秒
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