2024/01/23(火)11:53
あの日の雪うさぎ
あの日 職場の入り口脇にちょこんと座ってた一匹の雪うさぎさん
凍てつく朝 左右の手のひらからざっくりと生まれてきたような
ちょっぴりいびつな愛嬌もの
おはよう いつもありがとう
がんばってね
私たちにはそう聞こえた
誰なんだろう
食堂での朝礼のあと みんな雪うさぎには目もくれず
それぞれの持ち場に戻っていく
私たちは冷えた厨房に入り 大忙しで彼らの昼食づくりに取り掛かる
時間も味も衛生管理もきびしすぎて あぁ リミットぎりぎり
うさぎはお日様を浴びてその日のうちに融けてしまったけれど
あれから何年経っても あの日のうさぎは ずっと私のこころの中にいる
視力の病気が悪化して 私は短く職場を去ったけれど
大きな窯でご飯を炊いて 今日もせっせとおむすびを握る若いあの子のこころの中にも
あの日の雪うさぎが ずっと 応援しているに違いない