朝の随想6 -一歩前に出る勇気-朝の随想6 「一歩前にでる勇気」<人形さま巡り開幕> 平成12年3月1日、「第一回 町屋の人形さま巡り」が開幕しました。 雪のちらつく寒い朝のことでした。 私にとっては、これは単なるイベントではなく、明日の村上のためにと意を決して取り組んだ市民による非常に重要な町おこしだったのです。 ですから、開幕して向かえた最初の土・日にどっと町に人が押し寄せた時には、胸が熱くなり思わず涙がこぼれてしまいました。 評判が評判を呼び、どんどん訪れる人は増えていきました。 <マスコミ効果> 一ヶ月の開催期間に実に3万人もの人が訪れ、一回目だというのに全国から大勢の人がやってきたのです。 これは黙っていて来てくれたのではありませんでした。 実は一年前からマスコミとのパイプを着実に作り、テレビ、新聞、ラジオと、どの局は誰が担当でと全て調べ、連絡を取り、確実に取材に来てもらえるよう、全力で取り組んだのです。 県内の新聞社ではカラーで見開き2ページ使って大々的に特集してくれ、また全国紙にも掲載されたのですが、中でも極めつけは、その半年前に東京渋谷にあるNHKに行って、この企画について話をしました。 「市民の心意気で、普段は見れない江戸や明治の町屋の生活空間を公開し、時代雛や武者人形など4000体もの人形さまを展示し披露します。60軒が参加し、まさに町中が人形さまを飾る美術館になります。これを取り上げてもらえませんか。」 と話したところ「今まで、町おこしを取り上げたことはありません。でもとても面白そうな企画ですね。取材に伺いましょう」と言ってくれました。 一か八かの気持ちでトライしたことによりNHKの全国放送が動いてくれたのです。 今でも忘れもしない3月12日教育テレビ「新日曜美術館」で全国に放映されたのです。 なんとその次の日から思い描いたように北は北海道、南は九州と、まさに全国各地から人が押し寄せてきました。 この後、人形さまの評判が口コミでどんどん広がり、平均すれば一日に千人もの人がやってきたわけですから、それまで閑散としていた村上にとって、それはもうお祭り騒ぎというより事件が起こったに等しいできごとでした。 <うれしい波及効果> 町にはぞろぞろ人が歩き、お土産を買う人が非常に多く、飲食店も大賑わい、村上駅の利用客も土日は3倍近くにもなり、一日では回りきれないと市内の瀬波温泉に宿泊する人まで増えました。 町に衝撃が走るほどの成果をあげたのです。 お金もない、組織もない、不安と孤独からスタートした取り組みが、徐々に協力者を増やし、力をつけはじめ、会が結成され、このような大きな花を咲かせたのです。 NHKの全国放送も「そんなの無理だ」と諦めてしまったら何も起こらなかったのです。 「一歩前にでる勇気」、その一歩の勇気から物事が生まれるのだということを学びました。 私にとって、人形さま巡り開幕の3月1日とは、奇しくも私がまちづくりの師匠と仰ぐ会津若松の五十嵐大祐さんに出会い、まちづくりを志した丁度2年後の日のことでした。 |