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鮭と町屋の暮らしブログ―味匠喜っ川便り

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朝の随想7 -村上の温かき市民性-

朝の随想7 「村上の温かき市民性」


村上で春を告げる風物詩として定着した「町屋の人形さま巡り」ですが、第一回目を迎えるに当たっては、マスコミの力をフルに活かし、大勢の人が来る仕掛けをしました。
しかし来た人達に本当に満足してもらえるだろうかと不安な部分があり、中でも迎える市民がどのような対応をしてくれるかが、私にとっては一番の心配事だったのです。



<心配事>
なぜなら私は以前、村上の観光の良くないところといって聞かされたことがあったのです。
それは、村上の人は愛想がないということでした。

人形さま巡りの企画を進めていた時に「何の練習もしないで、いきなり観光客を迎えたりすると、村上は冷たい町だと全国に発信するようなもので、村上の評判を落とすよ。」と忠告を受けました。
確かに城下町というところは敵が攻めて来れないように堀をめぐらせて作られた街です。
閉鎖的な環境の中で育まれた気質は、保守的であり、排他的であると言われています。


<お迎えの練習をするはずが…>
さすがに心配になり、旅の人をお迎えする練習をしなければいけないと思いました。
開催の4ヶ月前に、60軒の参加店に声をかけ、全体会議を開くことにしました。
ところが当日その会議に来てくれたのは僅か20人だけでした。
私は非常にがっかりしたのです。

その時、ある人が提案してくれました。「次の会議は今日来た20人が近所の参加店の人に声をかけて来ましょう。そうしたら40~50人は集まりますよ」。
この名案に会議は盛り上がって終ったのです。
そして気を取り直し、一ヵ月後に2回目の全体会議を開きました。
しかし集まったのは、私を含めてたった6人。
お迎えの練習どころか、こんなことで人形さま巡りが開催できるのかと、集まりの悪さに私は愕然とし、後はまさに祈るばかりの気持ちで本番を迎えたのです。


<村上人のおもてなし>
しかし、驚くことが起こりました。
一ヶ月の開催期間の中で来られた大勢の人達に、町屋がすごい、人形が素晴らしいと、褒められたのですが、その中でも一番喜ばれたのは、なんと村上の人の温かいおもてなしでした。

「どの家でも親切に説明してくれる、お茶まで出してくれたり、どうして村上の人はこんなに親切なのですか、これはみんな無償でやっているのですよね。」と期間中来る人来る人が口々に言ってくれたのです。
それまで家の奥に引っ込んでいたおじいさんおばあさんが出てきて一生懸命に人形の説明をしたり、一般の市民まで親切に道案内をして、正に市民あげてのおもてなしが、非常に喜ばれ評判を高めたのです。

現在、7回目の人形さま巡りを終え、リピーターの割合が3割と非常に高く、リピーターに支えてもらえる催しとなっていますが、これはこうした損得抜きで行なった市民の温かいおもてなしの結晶なのです。

一番心配したはずの市民の対応が、期せずして人形さま巡りの大きな魅力となり、非常に嬉しい結果となりました。
物事とはやってみなければ分からない面白いものです。
村上の温かき市民性に助けられ、市民への感謝の気持ちを強くした「人形さま巡り」でした。


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