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村井亮介の いまどきノベル

村井亮介の いまどきノベル

若君っ貴公子のご自覚をっっ 7

<若君っ貴公子のご自覚をっっ 7>



タケヤ・ソフトウェアのビル前にバスを横付けされると相談役は


「おい、そこらに警察はいないだろうな。


こんな格好でぞろぞろと乗り込むの見られたら面倒だぞ」


と意外にも現実的なことを口にする




「直継様、大丈夫のようでござる」


社員、一人が返事をして社長が



「トツゲキ~~~」


と号令をかけた



「若、まずは先鋒として先陣をお切りなさいませっっ」


ユリ姫が叫ぶ


「合点(がってん)」


「ずっと私めがお供いたしまする」


「うむっ」




入り口の自動ドアが全開にされているところから、


二人は真っ先におもちゃの刀を振りかざして突入していった。



待ってましたとばかりに二人の中年男性が同様に刀を振りかざして応戦してくる


「いざっいざいざ。


我こそは竹屋家先鋒、小坂弾正である。


いざっ尋常に勝負っっ」


立ち止まって固まる孝太


(痛いな~~この人)


「ほらっ、若、若も名乗られませ」



「・・・」



「ほらぁ、若ぁったら」


「・・・我こそは中杉家嫡男中杉景龍なり。


いざ勝負っっ」


もう完全に開き直った孝太であった


<ピシッピシッピシッ>


あっという間に相手の兜に赤くインクをたっぷりとつける孝太。



小坂と名乗った相手は唖然として


「なに?今の?」


と、つぶやいた


「面、胴、面の三段打ちでござる」


「ええーっ、そんな本格的なことすんのっ?」


と呆然とする相手に、



ユリ姫が


「戦場でござれば観念なさいませ」


と一喝する


「やられた~~無念~~~」


と大げさに倒れる小坂。



「あの、痛くなかったですか?」


心配して尋ねる孝太に倒れて顔を伏せたまま小声で


「こら、死人に話しかける武将がいるか」


「あ、すみません」


「死人に返事をするな、さっさと先へ進め」


と囁くのだった。



もう一人の武将は必死の形相でユリ姫と刀をぶつけ合っている


「いざっ拙者がお相手するっっ」


と割り込む孝太


「拙者こそは小谷田茂信なり、いざ勝負っっ」


「中杉景龍なりっ」


大上段に振りかぶる小谷田の右腕の籠手を鋭くピシッと打つ孝太。


相手の右手は真っ赤に染まる



「えっ、なに、いまの?」


「抑え籠手でござる」


「むっ」


右手を下へおろし、左でだけで刀を持ち替える小谷田。


そこへ鋭くピシッ


「逆胴っっ」


「うわあっっやられたぁ~無念」


またも大げさに倒れる相手方の社員



孝太が二人を倒している間に他の中杉家武将たちは階段を使い上へと昇っていく


「若、敵、本陣は9階の社長室でござるぞっっ」


と走りながら告げていく直継役の山城


「承知つかまつった」


ユリ姫と二人揃って階段を上がっていく孝太にユリ姫は


「若、お見事」


と微笑む




途中何人もの死んだ演技をしている人をまたいでいく、


どうやら、こちらが優勢のようだ



一人の竹屋の社員の足をうっかり踏んだ


「あ、すいません」


またも顔を伏せたまま小声で


「俺、死んでるからね」


と囁く敵の社員



「若、行きましょう。


この上の階が敵本陣でございますぞ」


目を輝かせるユリ姫


「おうっ」





戦っている他の社員を尻目に9階に辿り着くと一番乗りだった


「中杉家嫡男、中杉景龍、敵本陣一番乗りでござるっっ」


ユリ姫が叫ぶと、下の階から


「おうっ」


と何人ものかけ声が返ってくる


(なんか、これって結構楽しいじゃん)


すっかり溶け込んでいる孝太であった。



「ここが社長室ですわ。


敵の本陣でございますぞっ」


「いざっ、我こそは竹屋家嫡男、竹屋勝則なりっっ」


社長室の扉の前にいる一人の中年男性が名乗りを上げる


「中杉家嫡男、中杉景龍なりっっ」


「面っっ」


思い切り打ち込まれて受けた刀を取り落とす勝則


「面っっ」


「うわあ~~やられた~~」



またも大げさに倒れ込むのを無視して社長室の扉を開け突入する



つづく


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