2011/10/12(水)17:34
『とじ・はぎなし ネックから編むセーター』
『とじ・はぎなし ネックから編むセーター』(日本ウォーグ社)
首のほうから肩回りを編んでいって、それを袖と身頃に分けて、それぞれ裾、袖口に向かって編んでゆく工程でセーターを編むための本です。
この工程の利点は、各パーツを編んでつなげる工程がないまたは極めて少ないことと、セーターだったら輪で編むつまり表編みだけしていられる点が挙げられます。
元は1980年代後半から90年代初めのころよくその技法の本が出されましたが、当時のセーター本といったら肉襦袢を着させられたような肩がモリモリした形なので、私も興味を持って昔の『ネックから編むセータ』の1と2に当たる古本を以前手に入れましたが、とてもそのままでは使えません。
なので、待望の一冊タイトルで予約買いしました。
実際の中身は、丸ヨークとラグランの代表作品が見やすい写真で詳しく解説されており、総作品数は17と少ないながら、使用針は6号近辺から14号あたりまで(すべて棒針)まで満遍なく、ネックから編む工程の入門書の性格が強い本です。
昔の本と比べて、増し目の部分に穴が空かないように考えられていると思います。
ラグラン線の巻き目の向きに気を遣っているのもよい。
個人的には、丸ヨークの作品は、そのまま編めると思いました。
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しかし、ラグランの作品は、ちょっとこのまま編むのはどうかなと思いました。
その理由を、サッカー日本代表(8-0)タジキスタン戦を見ながら描いた下記のつたない絵を使って説明します。
本書のラグランセーターは、いずれも(1)のような、腕を真横に広げた形のでき上がりです。
しかし、そんな服の形であれば、(2)の真っすぐ編んでつなげたのと一緒で、ラグラン袖にする必然性はあまりありません。
せっかくラグランセーターをつくるなら(3)のように自然に腕が下がる形にならないものか。
(4)の既製服のようなカーブがかかったラインであればなお望ましい。
ネックから編んでも、計算次第で(3)(4)のラグラン線は不可能ではないと思います。
要は、袖と身頃を必ずしも同じ段数で増し目していかなくてもよいのではないか、ということです。
そして、あれだけ丁寧に解説してくださるのであれば、後ろをヨーク下、ラグラン下で伸ばして前後をつける形だけでなく、後ろネックに引き返し編みがある形をしっかり解説してくれる作品も欲しかった。
雪国なので、首筋涼しくないようにしたいのです。
そのほか、丸首だけではなくVネックも欲しかったとか、欲を出せば切りがありませんが、今回はせっかくの日本の『ネックから編む』復活1号なので、まず出版されたことを大いに讃えたいと思います。
これがまた夏物や、かぎ針へと広がっていくことを期待しながら、トップランナーの作家さんたちによって、ただ簡単であればよいだけではない、よりよい形のニット服が追求されていくことを望みます。
この写真ちょっと色が変ですが、実は青色です。
https://www.nhk-book.co.jp/home_files/info/2011/oshirase_28.html
前作同様、作品が田舎くさかわいい。
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