カテゴリ:よのなか
青森県庁が来年度からAIによる議事録作成を目指しているとのNHK青森の報道がありました。
会議などの議事録AIで作成へ https://www3.nhk.or.jp/lnews/aomori/20200216/6080007506.html 人間の手打ちで議事録をつくる業界では、私の実感としてですが、一定の質の原稿を作成できる作業者が不足ぎみの上、将来性を考えると若い人に入ってきてもらいにくい現状があります。なので、特に地方議会のような双方の発言者が原稿を用意して質問・答弁するたぐいの会議については、人間を手打ちの苦行から解放するAI化は今後大いに進んでほしいと思います。 しかしこの報道で気になるのは、試験的導入で「9割ほどが正しく文章に変換されている」という点であります。どういう立場の人が、何をもって9割と判断し、9割なら使えると考えているのか否か、記事だけではちょっとわかりかねます。 9割が正しいといいますと、10字に1字が間違いで、100字に10字が間違いで、1000字に100字が間違いで、1万字に1000字も間違いで、10頁のうち1頁が間違いで、100頁のうち10頁も間違いです。その間違いは1カ所に固まっているのではなく、全体に不規則に入っているので、聞き直してAIちゃんがやらかした間違いを消しては打ち直し、さらにその打ち直しが間違っていないかまた聞き直して仕上げないと、人に読んでもらえる原稿にはなりません。 私は時に1本5万字を超える原稿も納品するので、もしも「5000字直さなければいけないけど、それ全部直して出して」なんてAIちゃんの下請をさせられるのであれば、最初っから自分で打ったほうがよっぽど作業が速いです。そして、5万字に2字3字間違いを指摘されてもああやっちまった恥ずかしい、という気持ちでやっているのが我々の業界です。 「9割正しい」は「1割も!間違っている!!」ひどい原稿であって、無能なAIちゃんのために人間は新たに上記のような苦行を強いられることになり、せっかく機械を入れたのに人件費が削減になるどころか、二重にお金がかかる話になります。なので青森県庁さんには、9割で満足して結局人に苦労をかけちゃう無能AIちゃんを納品してもらうのではなく、さらに限りない精度を業者さんに求めて皆が納得できる超優秀なAIちゃんを育てて、全国でも先進的な議事録づくりを目指して頑張っていただきたいと思います。 さて、いくら専門用語だのを学習させても、AIの議事録づくりの最大の壁になるのは、発言者の質だと思っています。必要以上の早口、声が小さ過ぎる人、滑舌悪い人、歯が入ってない人、外国出身の人、地方の訛ってる人、なじみの薄い専門用語・外来語の不明瞭、語尾の不明瞭、発言時のマイクスイッチ入れ忘れ、所属と名前を言えというのに名乗らないで話し出す、指名してないのに声を出す、外野からの不規則発言、せき、くしゃみ等々、人間の集まりですから、100%エラーなしにしろといっても無理な話です。 しかし良質な記録を後世に残すためには、そのようなエラーのもとを最少にするために発言者も努力しなければなりません。その最たるものは国会の議事録であり、国会議員の皆さんには常に整然とした議事運営を望みます。しかし最近は、最も範を示さなければならない安倍首相が率先して不規則発言をしているのが困ったものです。長期政権ゆえ野党は精神攻撃に出ることもあるでしょう。そこで一々動揺して、議事録が残ること、苦労して議事録をつくっている衆参事務局の存在を忘れて余計な声を出してしまっては、いつぞや熊本県議会に連れてこられた赤子以下であります。 さてさて、新型コロナウイルスの影響で、天皇誕生日一般参賀が中止となり、東京マラソンはエリートランナーのみ開催になるなど、大勢の人の集まりが自粛になり始めています。首都を守ることは大事なのでものによってはやむを得ないでしょう。企業の間でも、テレワークや時差出勤の推奨、会議中止の動きになっています。中でも会議中止は気がかりです。これから年で最も会議の多い年度末です。法律上開催しなければならない会議がある団体などはどう対応するのでしょうか。基本的に不況には負けない議事録業界ですが、ことしは仕事が減るかもしれません。これを機にテレビ会議が普及するとよいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年02月18日 13時39分55秒
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