2005/03/28(月)10:29
「おもしろくない」?
昨夜の腹痛のせいで久々に食欲がなくなり、昨夜はプリン2個食べただけだ。
…と書いておけば、皆さんはそれを信じて下さるだろうが、ウソはいけない。
プリン2個自体は本当だ。それで寝るつもりだったのも本当だ。
その後、ダンナが自分用に蕎麦(出たっ!)を茹でて、わんこサイズを私のところに持ってきて「食べる?」と聞いた。
いかにも私は弱々しげな風情でお椀を受け取り、イヤそうな、大儀そうな雰囲気をちょっと醸し出しながらお箸を持ち、わんこ蕎麦をちまちま食べ始めた。
…と書きたいところだが、言葉は正しく遣わなければいけない。
「食べ始める」とか「食べ終わる」とかいう時間の幅は一切存在しなかった。
鼻の上にクッキーを乗せられた犬がそれを振り落とすや否や、ぱくっと秒速以下でそれを食べるのと同じだった。
わんこマッハの私は「おかわり~」と元気よく言い、あろうことか丼一杯の蕎麦を食べた…
掲示板にいろいろと書き込んで下さってありがとうございました。
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時々、ネタがない日のために何か用意しとこうかなと思うことがある。
今日は何時間かは本当にベッドに突っ伏して寝ていたのだが、目が覚めてから、しばらく考え事をしていた。
一つには、そういう年齢だからだろうが、このところ昔のことをいろいろ思い出す。
結構「エッ、そんなん、なんで突然思い出したの?」と自分で驚くようなことも多い。
基本的には後ろをあまり向かないほうだが、こうして昔のことを思い出すのはそれが多かれ少なかれ、自分の血肉になっていることもあるし、それがまたこの先の自分につながることもあるだろう。
今日、思い出したことの一つは10年ほど前に1年ほどだけ付き合っていた7歳年下くんの言葉だった。
この年下くんはおもしろい子で、今でもどうしてるかなと思う。
私がちょうどロンドンに来る頃に同級生と結婚したのだが、それから3年くらいで離婚したと、人から聞いた。
彼は非常にユニークであり、それに「やりにくい」子だった。
こっちは社会人であっちは学生だったが、何かでお金を払う段になると、これは私が出すべきものなのか、彼に出させるほうがいいのか、いつも悩んだ。(笑)
彼は概して言いたいことを歯に衣着せずにずばっと言ってしまうし、それはこっちの特許だとそれまで思っていたのに大きくシフトチェンジさせられた。
言ってしまえば、若気の至りで振り回されていたというところだろう。
この年下くんから言われた言葉で一つだけ、今でもはっきり心に残っているものがある。
「あのな、どこでもいるやろ、『学校がおもしろない』とか『会社がおもしろない』って言うヤツ。オレ、それは絶対ちゃうと思うねん。それはな、学校とか会社がおもしろないのと違って『自分がおもしろない』ねん。でな、それを『自分がいる場所がおもしろない』のと勘違いしてるだけやねん。」
この言葉はかなりのインパクトで飛び込んできた。
おもしろいこと言うなと思って、まじまじと彼の顔を眺めていたが、本人はすましたものだ。
それ以来、その言葉が頭を離れなくなり、仕事やその他で何かいやなことがあるたびに「こんなふうに考えるのは『自分がおもしろない』と思ってるからちゃうか?」と自問自答するようになった。
すべてにそれが当てはまるわけではないだろうが、世の中に起こるネガティヴ発想のもとは、この「自分がおもしろない」症候群のタネの部分を回りの何かになすりつけているということでかなりの説明がつくのではないかと思う。
「会社がおもしろくない」「仕事がおもしろくない」という発想がアホらしくなって、一切自分から消えた。
(だから、会社がおもしろいか、仕事がおもしろいか、と言われて「ハイ」と答えられるかと聞かれると、そりゃまた別問題だ。笑)
誰かが自分に何か言ってくれる時、その言葉の中には驚くような力を持っているものがある。
言っている本人は別にそんなに素晴らしいことを言っているという意識はなく、浮かんだ言葉を言っただけかも知れないが、それを拾い集める受け皿をちゃんと持っていると、他人の言葉が思いがけず自分の道を開いてくれることがよくある。
人間はその受け皿作りのために人生をやっているのではないかと思うこともある。
その相手の年齢や職業やバックグラウンドに目をくらまされて、他人の言葉の重みを侮ってはいけないとつくづく感じる。
さて、年下くんはその後「彼女ができてん」と言ってきた。
(結局、彼はその彼女と結婚したのだ)
その時は少し悲しかったが、いつまでも引きずっているわけにはいかないので、それまでの付き合いは終わった。
しかし、突き詰めて考えるような話がしたいと、なぜかその後もどちらからともなく声をかけて食事をしに行ったり、展覧会を見に行ったりというような関係がロンドンに来るまで続いたのは不思議だったが、その時には気負いや駆け引きが存在していなかったから力が抜けていた。
ロンドンに来る直前の彼らの結婚式には「最後まで出席の返事待ってるから、なんとか都合をつけて絶対来てほしい」と当事者二人ともから言われてはいたのだが、まあそういうわけにもいかないから、二人の幸せを祈るにとどめていたのだが、彼女からは「彼はいつかトゥィッケナムであるラグビーの5ヶ国対抗を見に行きたいって言ってるんで、その時はちゃとさんのところに泊めてやって下さいね」とおそろしいことを言われていた。
彼女はたぶん、私と彼の間に何かを感じていたと思う。
それから6年、その年下くんには再会していない。
いい友達だったと、こっちは思っている。