2007/05/27(日)20:22
「リトル・ミス・サンシャイン」**追記あり**
先週の日曜に3本DVDを借りてきたうちの1本がコレ。
「リトル・ミス・サンシャイン」
どんな映画かはよく知らなかったが、去年の暮れから今年の初めにかけてゴールデン・グローブ賞やオスカーの行方についての記事(おもに「ドリームガールズ」)を眺めていたら、この「リトル・ミス・サンシャイン」、中でも子役のアビゲイル・ブレスリンとジジィ役らしいアラン・アーキンが各映画祭の助演賞候補に上がっていて(実際に受賞したものも複数)かなり健闘しているようだったので、まあいつか観るかと思っていた。
こういう賞に惑わされてはいけない。
レオナルド・ディカプリオとわがマット・デイモンが出ていた「ディパーテッド」も賞取り合戦のトップを走っていたが、実際に観てみたらぜんぜんわけがわからず、途中で寝てしまってそれっきりだ。
さて「リトル・ミス・サンシャイン」。
あまり期待はしないで観たのだが、おもしろかった。
舞台はずばり崩壊してしまっている家族の話だ。
その、崩壊してしまっている家族の中で、一人、輝かしい栄光に向かって夢を捨てない小太り・メガネのおチビ娘。
カリフォルニアで行われるミスコンテストに出ようとしているのだ。
家族全体を乗せて走るロードムービーというのはちょっと珍しいように思う。
アメリカの家族でありながら、映画の進行上の家族の捉え方、出来事のあり方、その映し方みたいなのはどちらかというとアメリカ的ではなくヨーロッパの感覚に近いと思えた。
*頭の中で描いた成功論(常に勝者たれ)に埋没している父・・・グレッグ・ギネア
当たり役だと思う。
たいして重みがないにも関わらず見せかけの重厚感に捉われている役柄をよく描いている。
*ヤク中・禁句ワード連発の手に負えないジジィ・・・アラン・アーキン
アラン・アーキンという役者はこの映画で初めて知ったが、各賞を手にしたこの役柄が個人的にそこまでいいとは思えなかった。(こんなジジィが本当に家にいるとしたら不幸だと思う)
*それぞれ問題を抱えた家族の中核である母・・・トニ・コレット
トニ・コレットのこの役柄は私としては結構好感が持てた。
各自がそれぞれ故障しているこの家族の中で、この母にもどこかいびつなところがありながらも、これではいけないと焦っている姿がいい。
キャメロン・ディアスと姉妹役で共演していた「イン・ハー・シューズ」でのトニ・コレットは、前歯がすいているのが気になって気になって、好きになれなかった。(爆)
*その母の兄(学者肌だがゲイで、自殺未遂を起こしたばかり)・・・スティーヴ・カレル
実はスティーヴ・カレルは好きではなかった。
アメリカ版の「The Office」を見た瞬間に、もちろん役柄として、見ている人に嫌悪感を起こさせる上司を演じる上では合格なのかもしれないが、もともとのイギリス版の「The Office」でのマネージャー役のリッキー・ジャヴェイスは演じていないところで成り立っているドキュメンタリー風ドラマなのだから、スティーヴ・カレルが出ている「The Office」は見た瞬間、クサいっ、と思っていた。
が、この「リトル・ミス・サンシャイン」の中での彼はなかなかよかった。
多少、深遠な部分と繊細な部分もちゃんと持ち合わせているのに(いや、それを持ち合わせているがゆえか)少し壊れてしまった人、というのがよく描かれていた。
*ちょっと小太りでメガネをかけたおチビ娘役・・・アビゲイル・ブレスリン
うーん、まあ私としては普通、という感じ。
ものすごく子役として見ている人をうならせるというわけではない。
とは言え、最近は山盛りいる「見ていて恐ろしくなるほどうまい子役」ばかり、というのも別な意味で怖いものがあるので、これくらいでいいのかも、と思う。
*そのおチビ娘の兄役・・・ポール・ダノ
まったくの新人かと思っていたら、以前に見たケヴィン・クラインの「卒業の朝」にすでに出ていたとは知らなかった。
わけのわからない兄役だが、こういう若者も今の世の中にはあちこちにいるのではないかと思わせてくれた。
映画の中では、もともと崩壊している家族ではあるが、それぞれの人物自身がもう一度、いろいろな意味で本当に壊れてしまいオーバーホールが必要な状態となってしまう。
いろいろな意味で。
(いや、つぶれなかったのはおチビ娘くらいか?)
表目に見ると家族再生の物語とも見えるかもしれないが、それとともにアメリカという国の、一種何か宗教がかったような価値観をトントンとノックして「これで本当にイインデスカ?」と小さな声で問いかけているような映画。
ミスコンテストのシーンは、以前に亡くなったジョンベネ・ラムジーちゃんを思い出した。
<追記>
大事な(自分にとって、ですが)ことを書き忘れた。
この映画、せっかくアメリカのちょっとおかしなところにぼやーんとした、加減のいいライトを当てていると思うのだが、クライマックスの部分でいかにも「アンタらはアメリカか?」というようなお手盛りの展開にどうしてしまったんだろう・・・非常にもったいない。
あんな、誰が考えてもそうするのに躊躇するような陳腐な演出にさえしなければ5点満点の4.4くらいは上げられたのだが、あの陳腐な演出のおかげでマイナス0.5。
なのでこの映画は5点満点の3.9・・・だけど子役に免じて4.0に切り上げ。