2008/09/08(月)15:39
辻邦生 『西行花伝』
西行花伝
(新潮文庫、1999年)
―綺麗さを生きる
このシンプルな言葉の美しさ、そして重さ。
「ただ規則にのっとって、言葉を選んで、“綺麗な歌”を作るだけなら、何ということもない。歌作りを考える前に、まず、その綺麗さを生きなければならないのだ。そうして初めて、真に綺麗な歌が生まれる」、これが、「綺麗さを生きる」ということのおおよその意味だ。若き日の西行が師から聞かされたこの言葉が、その後の西行の生き方を決めてしまったように思われる。
この『西行花伝』は、かの西行の歌の“綺麗さ”の内奥にあるものを解き明かしてくれる、ドラスティックかつ繊細な、類のない評伝的物語だ。