短編集 『クリスティーに捧げる殺人物語』
(ティム・ヒールド 編集、 中村保男 他訳、 ミステリアスプレス、1992年) 英国サスペンスの女王アガサ・クリスティに捧げられた作品集。「大戦間時代を舞台にした推理物を」というモチーフで、ピーター・ラヴゼイ、ポーラ・ゴズリングら英国推理作家協会の実力派13人が短編を書き下ろした。クリスティの作品を彷彿とさせるのは時代設定のみならず、各人がそれぞれに趣向を凝らしたクリスティ・パスティッシュ、あるいはパロディを生み出している。 特に楽しめたのは、ジュリアン・シモンズの「メイヘム・パーバの災厄」。メイヘム・パーバは“ごく英国的な小さな町”。そこに住むさまざまな人々と、密やかなトラブル...もっとも印象的な登場人物は、白髪に澄んだブルーの眼をした聡明な老婦人。クリスティのどんな作品のパロディか、容易に推測できるだろう。他に、かの名高いベルギー人の名探偵が“実名で”登場するパスティッシュ作品も(スーザン・ムーディ「恋のためなら」)。 もう一作、特に興味深いものをあげておく。H.R.F.キーティング「ジャックは転んだ」。ここに登場するのは、“クリスティ作品中の作中人物”。菜食主義者のフィンランド人探偵スヴェイン・イェルソンの名は、クリスティの愛読者なら聞き覚えがあるはずである。彼の登場に私は喝采を送った。常々、人気女流探偵作家オリヴァ夫人―クリスティ自身の反映とも言われ、ポアロ氏の友人として活躍する人物―が生み出した(とされる)このフィンランド人探偵の活躍を描いた作品はないものかと思っていたからだ。この短編と出逢えただけでも、この本を読んだかいがあったというものだ。↓クリスティーに関することなら,,,↓アガサ・クリスティー百科事典↓デビッド・スーシェがポワロ役を好演した名シリーズ↓【ポイント5倍☆21日am9:59迄】名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 1/デビッド・スーシェ[DVD]