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渡辺真由子のメディア・リテラシー評論(旧)

渡辺真由子のメディア・リテラシー評論(旧)

カナダ恋愛事情(アルク)

■コラム■
「恋愛先進国のカナダでは、日本人はモテモテ!?」
                    (初出典:アルク出版 2005年)


  カナダでは、男女の間に暗黙の了解がある。異性同士が部屋で2人きりになるとき、純粋な友人やビジネス上の関係であれば、ドアは開けておくのだ。やましい意図があると誤解されるのを防ぐためである。逆にドアを閉める場合、2人の間には何かあるということだ。ところが、実際はカナダ人がドアを閉める相手は恋人だけではない。私が暮らす大学寮では、ステディーな彼氏、彼女がいるにもかかわらず異性を自室に連れてきて、そっと後ろ手にドアを閉める学生が何人もいる。大らかな国民気質のカナダ人は、たとえどちらかに恋人がいても、お互いに気に入れば深い仲になるということは日常茶飯事なのである。一方、同性同士が2人きりという状況でドアが閉められていると、これまた気軽にノックしていいものか判断に迷う。カナダでは同性のカップルが珍しくないからだ。ダウンタウンには同性愛者たちが昼間から手をつなぎ、堂々と歩くストリートがあるし、2005年7月には同性間の結婚が世界で4番目に合法化されたばかりである。

  そう、あまり知られていないが、カナダは恋愛や結婚に関して進歩的な国なのだ。日本では取り組みが遅れている夫婦別姓も、カナダでは選択ができる。また、ブリティッシュ・コロンビア州では2003年度、初産が30歳以上という女性の割合が実に50%を超えた。キャリアや自由を十分におう歌してから、子育てという大仕事に取り掛かろうというわけだ。個人の選択が尊重されるカナダ社会では、日本のように「女性は何歳までに結婚して出産すべし」といった周囲からのプレッシャーがないのも理由だろう。

  国際恋愛のチャンスにも事欠かない。うれしいことに、日本人女性はカナダ人男性に大人気なのだ。これにはもともと、彼女たちが彼らにあこがれているという事情がある。特に語学留学の場合、日本人同士は群れがちで、英語を話す機会に恵まれにくい。そこで手っ取り早く英語を上達させる方法として、カナダ人の彼氏を欲しがるのだ。しかも白人ならカッコいいし、と……。カナダ人男性も自分たちの人気を心得ていて、「アジア系の女性は小柄でかわいいもんね」とウェルカムである。しかし女性たちよ、簡単に喜んではいけない。日本人女性がモテる本当の理由は、「軽そう、従順そう、お金持ってそう」というところにあるのだ。同じアジア系でも、韓国や中国の女性は自己主張がしっかりしていて立場も男性より強いのに対し、日本人はすぐに遊ばせてくれる、しかも男の言いなり、といったイメージが浸透している。何ともなめられた話ではないか。日本人女性を専門に「狙う」カナディアンのやからにカフェや図書館で声を掛けられ、そのままついて行って危険な目に遭うケースもある。とはいえ、まともに国際恋愛をはぐくんでいるカップルもたくさんいる。つまり、女性側がどれだけ意思表示をはっきりさせ、人を見る目を持つかがカギと言えるだろう。ちなみにカナダではエイズ問題も深刻なので、注意を怠りなく。

  片や、日本人男性の人気ぶりはと言うと、悲しいかなカナダ人女性とのカップルはほとんど見かけない。下手すると女性のほうが体格が大きくたくましい、という事実に言葉のハンディも加わり、日本人男性はなかなか男として見てもらえないようだ。だが、落ち込むには早い。実は、カナダ人のゲイからは引く手あまたなのである。極東のエキゾチックな薫りとお肌の滑らかさがタマらないらしい。

  さらに、カナダは世界中から移民や留学生が集まって来る国でもある。つまり、出会いの機会があるのはカナディアンだけではないのだ。こちらでフランス人男性と恋に落ち、結婚、出産までした日本人留学生もいる。あなたがヨーロッパ系フェチであろうと、中東系マニアであろうと、カナダでお相手を探すのには不自由しないだろう。異性愛、同性愛、そして多国籍愛と、カナダはその気になれば恋愛で多様な選択肢を手にできる、おいしい国なのである。


渡辺真由子


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