MY HIDEOUT ~私の隠れ家~

2008/02/04(月)03:11

「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」(2007・日本)

映画鑑賞記録(746)

只今、公開中です。 監督・・・北村拓司 アクション監督・・・小池達朗 原作・・・滝本竜彦 出演・・・市原隼人、関めぐみ、浅利陽介、三浦春馬、野波麻帆、板尾創路、他。 ・物語序盤・ 山本陽介は、生きる目標も意味も判らず、無為に過ぎてゆくだけの時間に、焦りを感じている高校生。 親友で常に自分より前を走っていると劣等感を感じていた同級生の能登が、バイクの事故で死に、陽介はまたも先を越されたと憔悴する。 そして自分も何かしなければと、高級和牛のパックを万引きして逃走。 人気の無い夜の公園へとやって来た陽介は、そこにぽつねんと腰掛けている女子高生を見付けて声を掛ける。 しかし彼女は冷たく、すぐに立ち去らなければ死ぬと警告する。 その時、空から雪の結晶が舞い落ち、チェーンソーを持った黒服の大男が空中から現れた。 突然の出来事に唖然とする陽介の前で、制服姿の彼女は果敢にチェーンソー男と戦う。 陽介のフォローもあって、手裏剣を心臓に命中させたものの、不死身の男は倒れず、再び空高く舞い上がって消えた。 両親と離れて、学生寮で暮らしている陽介は、もう一人の親友・渡辺に、この出来事を話すが全く相手にしてもらえない。 女子高生とチェーンソー男が忘れられない陽介は、彼女・雪崎絵理と再会して事情を訊く。 そして、兎に角、自分の成すべき使命は、絵理を助けて、謎のチェーンソー男を倒す事だと思い、実際には送迎係くらいにしか役に立っていなかったが、絵理に協力し、夜毎チェーンソー男を待ち伏せるように。 原作は、ひきこもり作家として知られる瀧本竜彦氏の、同名ライトノベル。 第5回角川学園小説大賞を受賞している。 チケット売り場で、タイトルが出ず、「ネガティヴ・ハッピー・エンディング」って言っちゃいましたよ。(^_^;) 通じたけど、言い直されて恥ずかしかったぞ。 予告編の映像のみで、筋書きを全く知らずに鑑賞。 トレーラーでは、チェーンソウを振り翳して襲ってくる黒服の大男と、女子高生が死闘を繰り広げていました。 だから、てっきりホラーだと思いまして。(^_^;) 蓋を開けてみると、予想していたような内容の作品ではありませんでしたが、これはこれで、なかなか面白かったです。 話は突拍子も無く非現実的な内容なのですが、描いているテーマはとても現実的。 人生の苦難と戦う事。 もっと端的に言えば、生きる事そのものでしょう。 主人公の陽介は、人生の意義を見い出せず、常に焦燥感を抱いている高校生。 何かしなければと思いながらも、何をして良いのか判らない。 そして自分が、いつも周回遅れで後ろを走っていると劣等感を持っていた親友の能登がバイク事故で死亡し、またしても先を越されたと焦る。 そこで兎に角何か!と思い付いたのが、高級黒毛和牛の万引き…。オイ。 陽介は所謂、フツーの高校生とは違った生活をしています。 親が遠方で仕事をしている為、学校の寮で暮らしています。 これがまたオンボロで、今どき、こんな薄汚い学生寮が何処にあるんだよ!とツッコミ入れたくなる場所です。 同室で、いつも亡き能登と三人で、つるんでいた渡辺は、何にでも手を出す多趣味な男。 カメラに絵画に小説にバンド、しかし、どれもモノにならず中途半端なまま、すぐに投げ出してしまう。 そして陽介が運命的な出会いをする、謎のチェーンソウ男と女子高生・絵理。 取り敢えず、若い男らしく、綺麗な女の子には興味を示してナンパ。 お葬式の帰り、絵理は初めてチェーンソウ男に遭遇し、何故か超人的な運動能力を手に入れた時、この敵は自分が倒さねばならぬ相手だと悟ったと言う。 突拍子も無い話に、思わず笑い出す陽介。 怒った絵里に、陽介はすぐに謝る。 何でもすぐに謝る奴は、心の底から悪いなんて思っちゃいない。 適当にその場を取り繕って、お茶を濁して逃げているだけ。 だから嫌いだと言う絵里の言葉は、心に突き刺さる。 ジャンルは、青春映画でしょうね。 自分が学生だった頃、「人生とは何か等と考えている奴に限って、人生に乗り遅れる。」という言葉を聞きました。 当時もそれは真なりだと思いました。 ただ同時に、私はそれでも、生きる事の意味を考えていたいと思い、実際に考え続けていました。 お蔭ですっかり乗り遅れたけどね。爆。 でも、冷めた顔して、スマートに生きるだけの人生なんて、つまんないよ。 紆余曲折、あちこち寄り道して、思い切り挫折して、不器用だけど、私はそういう人生が好きなんだな。 だから、この映画の根底に流れる思想には、共感できる所が沢山ありました。 きっと原作者も、生きるって何だ?と、一生懸命考えている人なのでしょうね。 全体的に軽いノリで進む、オフビートな笑いで構築されたストーリーですが、各エピソードの裏には繊細さを内服しています。 板尾さんが演じる担任も結構好きだったな。 刃向いもせず、何の主張もしない、今の高校生達に侘しさを感じている大人。 暖簾に腕押しといった感じの陽介に、「お前もその年で、もう人生諦めてんのか?」と尋ねる。 誰もが冷めている世の中。 自分独りが懸命に足掻こうとも、世界は何一つ変わらないと知っている。 だから、理想も持たず、夢も見ない。 熱く生きる奴なんて馬鹿だと、鼻先で嗤う。 でも、心の何処かで、きっと思っている筈だよね。 これで良いの?と。 途中で掛かる陽介達のバンドの歌は、凄くストレートな歌詞で臭いんだけど、ちょっと泣いてしまいましたよ。(^_^;) 映像面では、チェーンソウ男との戦闘シーンは、かなりの迫力です。 ワイヤー・アクションやカメラワークも決まっているし、CGも良い出来で見応え十分。 他に映像面で印象的なのは、幻の能登と陽介がバイクで走る場面で、真っ赤な花弁が画面いっぱいに舞い飛ぶシーンが美しい。 このチェーンソウ男の正体は、ネタバレしてしまうと、人生における苦難の象徴。 独り、辛い思いを抱える絵理は、コイツを倒して乗り越えなければならない。 そして本気になれるものを見い出せず、半端に生きてきた陽介もまた、戦わなければならない相手です。 ひきこもり作家のライトノベルが原作だけあって、リアリティーの欠如が難点である事は否めません。 絵理のエピソードにしても、現実を考えると、未成年の彼女が自宅に留まって、普通に高校の通学を続けられる道理も無く。 あと、キャベツと白菜、やたら高いよ…。 引き籠ってないで、たまには買い物にも行って、世間を見てこい。笑。 頭でっかちの空想家による妄想の産物と、斬って捨てる事は容易です。 けれども、この作品には確かに人を惹き付ける、真理があると私は感じました。 共鳴できるか否かが、評価の分かれ目でしょうね。 エンドロールの後に、ワンシーンあります。 これもある意味、意味深。 死闘が終わっても、世界は相変わらず、ちっとも変わらないし、人生から悲しみが消える事は無いのです。 ↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

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