2008/07/28(月)02:35
「ゆれる」(2006・日本)
監督、脚本・・・西川美和
出演・・・オダギリジョー 早川 猛
香川照之 早川 稔
伊武雅刀 早川 勇
新井浩文 岡島洋平
真木よう子 川端智恵子
木村祐一 丸尾明人 検察官
ピエール瀧 船木 警部補
田山涼成
河原さぶ
キタキマユ
田口トモロヲ 裁判官
蟹江敬三 早川 修
・物語序盤・
早川猛は東京で売れっ子写真家として活躍している若者。
彼は母の一周忌法要で、久し振りに田舎の実家に顔を出す。
遅刻してきた上に、喪服も着ていない猛。
葬式の時にも帰らなかった猛に、父の勇は嫌味を言い、二人は親戚一同の前で大喧嘩。
弟とは正反対の温厚で真面目な性格の兄・稔が、二人の間に入り、その場は収まった。
稔は父の経営するガソリン・スタンドで働いていた。
そこで最近アルバイトとして働き始めた川端智恵子は、兄弟の幼馴染だったが、実は猛が上京する前、二人は秘かに交際していた。
翌日、稔・猛・智恵子の三人は、兄弟が幼い頃に良く行った思い出の渓谷に行楽に出掛ける。
かつて猛と共に東京へ行く勇気を持てなかった自分を悔み、猛に未練を持っている智恵子。
彼女は引き止めようとする稔を残して、川に架かった吊り橋を渡って写真を撮りに行った猛を追い掛けて行く。
しかし橋の途中で、高所は苦手だと言っていた稔は、智恵子に追付いて体に触れる。
痴漢じみた行為に、思わず腕を振り払った智恵子に稔は逆上する。
その直後、智恵子は吊り橋から転落した。
遠くから二人を見ていた猛は、慌てて橋に戻り、呆然と渓流を見下ろしている兄を宥め、事故だと言い聞かせて、警察に連絡する。
猛の証言で、智恵子の死は不幸な事故として処理されたが、精神的に不安定になっていた稔は、職場で苦情を言う客に暴行し警察沙汰に。
そしてそこで、自分が智恵子を橋から突き落して殺したと自白してしまう。
猛は東京で弁護士をしている伯父・修に、兄の弁護を依頼するが…。
最も身近な他人・・・兄弟。
同じ親から生まれても、性格はそれぞれ違う。
血の繋がりという、決して切れない因縁を持って生まれた人間。
それは、互いに繋がれたまま憎み合えと、天に掛けられた邪悪な呪いのようだ。
不安定な吊り橋は、田舎の平凡な暮らしと、自由と可能性に満ちた新たな世界を結ぶ象徴でもある。
そこを渡るには勇気と思い切りが必要だ。
智恵子は稔に、それまで見せた事のない冷淡な声で、自分は怖くないと橋を渡ってゆく。
その一方で、吊り橋は、全く異なった生き方をしてきた兄弟を繋ぐ、細く頼りない糸の象徴でもある。
橋の向こうへ行ってしまった弟と、橋のこちら側に残った兄。
二人が同じ橋の上に立った時、微妙なバランスで保たれていた橋は、大きく揺れ動き、それまでの関係を破壊してゆく…。
ラスト、一瞬浮かんで、バスに遮られた稔の笑顔は、どう解釈すべきなんだろう?
その直後、テーマソングの「うちに帰ろう」が流れてくるので、素直に兄弟の糸は再び繋がって、ハッピーエンディングになったと捉えて良いのだろうか?
香川照之の笑顔が非常に寂しげなので、「来てくれて有難う。さようなら。」とも取れて、迷う部分もあるのですが。
そちらに考えると、救われないので、稔は猛と一緒に家に帰ったと思いたいけれど。
静かに進むストーリーなのですが、兄弟の葛藤と確執の内面が、とても丁寧に描かれています。
本心を見極めきれない稔の行動と、兄の言動を受けて、少しずつ微妙に変化してゆく猛の思い。
取り敢えず、今更ながら、香川照之さんは上手いね、と。(#^.^#)
吊り橋の上で智恵子に迫る稔は、観ている私も、「キモッ!」と鳥肌が立つ位、気持ち悪い粘着質系ネクラ男で、あそこまで実感させてくれるのは流石の演技力よなぁ。
普段の香川さんて、穏やかで優しそうで、嫌悪感とは無縁という感じなのに。
オダ・ジョーもオダ・ジョーらしさが出ていて、弟役を熱演していましたが、やっぱり地味だけど香川さんに軍配かな。
兄弟の確執は稔と猛だけかと思ったら、一代前の修と勇も、都会行きの人と家業を継ぐ人の問題で揉めてたんですか。(^_^;)
田舎に残った方は、こんな所に縛り付けやがって…と恨み、都会に出た方は、親の財産は全部お前が取ったやんけ!と怒っている。
いつでも、何処にでも起こり得る揉め事ですよね。
しかしガソリンがリッター125円だったので、その看板に複雑な思いが。笑。
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