2008/10/25(土)11:21
「ウォンテッド」(2008)
"WANTED"
監督・・・ティムール・ベクマンベトフ
原作・・・マーク・ミラー、J・G・ジョーンズ
出演・・・アンジェリーナ・ジョリー、ジェームズ・マカヴォイ、モーガン・フリーマン、テレンス・スタンプ ペクワー、トーマス・クレッチマン、コモン、クリステン・ヘイガー、マーク・ウォーレン、他。
・物語序盤・
ウェスリー・ギブソンは、会社で顧客管理担当をしている冴えない青年。
巨漢の女性上司からはいびられ、彼女は同僚に寝取られているのに、怒る事すら出来ず、パニック障害の薬で、ストレス過多の生活を誤魔化しながら生きている。
そんな彼の前に、ある日、謎の美女フォックスが現れ、彼女はウェスリーが命を狙われていると、こちらも謎の男と銃撃戦を繰り広げる。
派手なカーチェイスの末に、追跡を振り切ったフォックス。
失神していたウェスリーが見慣れぬ場所で目覚めると、周囲には凶悪そうな男達が…。
リーダーらしき男スローンは、自分達が"フラタニティ"という秘密の暗殺組織で、ウェスリーの父も優秀な暗殺者だったが、仲間クロスの裏切りに遭い、命を落としたという。
亡き父と同じ資質を持つ、特異な体質である事を知らされたウェスリーは、それまでの人生に別れを告げ、組織に参加すると決意する。
だがそこでウェスリーを待っていたのは、常軌を逸脱した過酷な訓練だった。
毎日、大怪我をしながらも、徐々にタフな精神と暗殺術を身に付けてゆくウェスリー。
原作は、マーク・ミラー&J・G・ジョーンズによるグラフィック・ノベル。
予告編が流れていた時期から、有り得ないアクション映像に期待していた一作でした。
巷の評価を一切読んでいなかったので、もしかすると中身の無い映像だけのハズレかと思っていたのですが、実に面白い映画で拾い物でした。
弾丸の軌道が円弧を描いてターゲットに命中したり、弾丸同士をぶつけたりと、現実には不可能な事ばかりなのですが、映像がスタイリッシュで、観ていて心が弾みますね。
カーチェイスも、絶対に無理という離れ業の連続ですが、カッコイイから受け入れられてしまう。
完璧に漫画の世界なんですけどね。
また革新的な映像表現だけでなく、ストーリーも確りと練られているので、ドラマとしても楽しめます。
予想外に、悲しい展開になってしまいましたが。
腰抜けで喧嘩一つ出来ないウェスリーの監督官として、厳しくも思い遣りを持って接するフォックス。
彼女は子供の頃に検事だった父を殺され、社会にとって害悪となる人間を抹殺する事で、秩序を守るという"フラタニティ"の掟を信奉している純粋な女性。
暗殺リストは、何処に存在するか不明の上部組織が決定し、織物に織り込まれた暗号でスローンに通達されるシステムである。
初めての暗殺の時、ウェスリーが投げ掛けた疑問は、私も感じました。
末端のアサシンは、ターゲットがどんな人物かも知らず、命令に従って殺してゆくだけ。
本当に、そのターゲットは社会にとって害悪なのだろうか?
誰がどんな基準で判断しているのかも判らず、盲目的に命令に従う事に疑問と怖さを感じました。
上の人間が、公明正大な人物ではなく、自分の私利私欲の為に、邪魔な存在を抹殺させていたとしたら?
殺し屋は、そんな事まで考えなくて良いと言えば終わりですが、社会の秩序を守るという信念の下に働いているメンバーにとっては、大きな問題でしょう。
この疑念は、その後の物語の根幹となってくるのですが、その時点では漠然としたものであり、ウェスリーもフォックスの過去を知って、殺しの任務を進んで受けるように。
彼が殺したい相手は、勿論、父を殺した裏切り者クロス。
しかしその裏には、ウェスリーの与かり知らぬ陰謀が隠されていた。
待ち望んだクロス抹殺の命令を受けたウェスリーは、危険な罠と知りつつ、クロスに弾丸を提供している人物を訪ねる。
だが単独では危険だと彼を案じていたフォックスに、スローンが手渡した命令書の氏名はウェスリー。
任務の為には私情は簡単に捨てるフォックスだが…。
生きる目的そのものだった組織が、既に自分達の存在を否定していると知ったフォックスの選択は悲しいものでした。
自分と同じ様な思いをする遺族を、これ以上増やしたくないと願い、正義を行っていると信じてきたのにね。
しかし紅一点のアンジーとしては、美味しい役どころでした。
このシーンも一言で言って、100%有り得ないものなのですが、カッコ良すぎて納得してしまいました。笑。
予告編でもこの映像は流れていましたが、まさか、こういう場面だったとは…。
深く考えると、難しくて答えの出ない問題です。
この人間は生きる価値なし、と誰が決められるのか。
でも確かに、こんな奴は死んだ方が社会の為だと思える凶悪犯は存在する。
けれども、その判断基準は、果てしなく曖昧です。
ただ映画自体は、テーマを深く考えるようなものではなく、飽く迄娯楽として楽しめる作品に仕上がっていました。
それにしても、浸かっているだけで、傷や骨折までも(!)治ってしまうという、蝋(?成分不明…)風呂って凄いな。笑。
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