カテゴリ:徒然のままに
相変わらず、桂米朝師匠の「艶話」を一席‥。
【大根船】 大阪の東横堀。只今はがらっと様子が変わりましたが、昔はきれぇな水が流れてたんやそぉですなぁ。冬なんか朝は一面の水蒸気が立ち込めまして、川岸に住んでる人が顔洗ろたり歯を磨いたりして立ってると、水面を大根を山のよぉに積んだ船がやって来る。 ■大将、お早よぉさん。大根買ぉとくなはれ◆えぇ?■どぉです、えぇ大根。掘りたて、太い大根どぉだす。朝商い負けときまっせ◆何を言ぅてんねんな、そんな細い情けない大根ばっかり積んで来て■そら何を言ぃなはんねん。こんな一本選りのえぇ大根やがな……こんな太い。 ◆何が太いことがあるかいな。こんなもん、わいの道具より細いがな■おい、えぇ加減にしなはれ、朝商いやで。まだ口開き、一本も売れてないねん。朝っぱらからケチ付けられたら一日験(げん)が悪い。何ちゅうこと言ぃなはんねん。 ■さ、この大根。これとおまはんのと比べて、これが負けたらこの船の大根、全部あんたに上げるわ。その代わりこっちのほぉが太かったら験直しを考えてもらいたいなぁ◆……ん~~ん、そないぎょ~さん大根もろたかてしゃ~ないがな■く、糞ぉ。取る気ぃか?◆ほな、見したろか……ほれ、拝め。 ■お! 恐っそろしぃ奴が世の中にわ………… よっしゃ、しゃ~ない。この船の大根皆やるわ◆おいおい、こないぎょ~さん大根もろてもしゃ~ない、言ぅてるやろ■感心も得心もした。世の中にはえらい人があるもんや。わしも男や、一旦言ぅた以上は大根みな置いていく。さ、えぇよぉにしてくれ。 ◆ホンマにこんなぎょ~さん要らんちゅうのに……。正直な男やなぁ、行てまいやがったがな●ちょっとあんた、こないぎょ~さん大根買ぉて、どないするつもりやいな?◆買えへんがな、くれたんやがな●誰がいな?◆あの船の大根とわいのんと比べ合いして、負けたぁ言ぅてな。大根みな置いて帰りよった。 ●アホな事しなはんな、何をすんねやいな。あんたがそんな事するさかい、近所の評判やがな。わてが道歩いてたら笑いよんねんがな……ロクな事考えへんねんから、このオヤジわ。こんなぎょ~さん大根もろて、ただではいかんわ、何ぼか上げなんだら気の毒な。……あの船か? ●ちょっと~~~っ、大根屋は~~ん。お~~~い、その船~~~▲おい、船頭■え?▲あそこの家から呼んでるがな、お前とちゃうんか■え?▲向こぉのお上さんが呼んでるがな■どこの家のお上さん?▲あの家、ちょっと戻ったりぃな。 ■あかんあかん、あそこへは行けんわ。今度行たら船まで取られる。 お後がよろしいようで‥。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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