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贅沢な昼寝

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Oct 5, 2003
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カテゴリ:中山間地
棚田


田植えかと見紛うほどの水量がある田。
今年は例年になく雨続きであったため、田が乾く暇もなく稲刈りの時期になってしまった。

この日は日曜日で快晴でもありあちこちの田で作業をしていた。県外ナンバーの車がとまっているから、この日のために手伝いに駆けつけたのだろう。
狭い田には大きなコンバインは入らないから、旧式の機械か手作業となる。民俗資料館で見たことのある木製の脱穀機も健在だ。
プラスチック製のそりを田の中に入れ、刈り取った稲を積み入れ滑らせて畦まで運ぶ。
畦道には藁で編んだ背当てが置いてあった。束ねた稲を背負ってはさ木まで運ぶためだろう。
重労働であることは想像に難くない。

田の脇にはお年寄りが使う電動の乗り物。
働く人のほとんどがお年寄りだ。
「いいご身分だね」
目が合ったご婦人に挨拶をするとこう声をかけられた。
じきに80歳になるという。
「子ども達は外へ働きにいっているから生活は成り立つんですよ。せがれは米作りはもうやめろというんだけれど、私は田んぼ一筋できたし田んぼを大切にする世代。田んぼは捨てられませんよ。祖先に申し訳ないしね」

松之山の棚田は全国的に有名だ。
日本の原風景を求める写真家たちはこぞってここを訪れる。
町役場にいけば職員の方が町で作成したフルカラー印刷の「棚田マップ」を開いて、どこが今素材として適当かを詳しく話してくださる。
過疎化が進む町は棚田を観光資源として観光客の誘致に力を入れている。

確かに美しい。
黄金色の棚田の帯。藁葺き屋根の家。光に輝くはさ木の稲束。畦に実った橙色のかぼちゃ。真っ赤な唐辛子。
屋敷の前にむしろを広げて豆の束を打っている姿は、幼い頃母の実家の近くで見た光景と同じだ。

実った稲の香りを存分に吸い込み、秋の一日を気持ちよく歩いたが、一心に働く人にカメラを向けることはどうしても出来なかった。





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Last updated  Aug 30, 2004 05:26:42 PM
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