テーマ:DVD映画鑑賞(13595)
カテゴリ:Deutscher Film
「白バラの祈り~ゾフィー・ショル、最後の日々」の感想をいろいろブログで読んでいたら、この映画と比較されている方が多い。
昨年のドイツ映画祭2005でこの2作を比較して見ると良いだろうと言われたり(誰が言ったのかは失念)、出演者も重複、こちらのラストにもゾフィーの名が出て来るらしいし、どうもこれを見ずに「白バラ」を語るのは片手落ちらしいので見てみた。 公開時にも映画館まで行ったんだけど、立ち見だったので諦めちゃったんだよねー。 監督が「es」のオリヴァー・ヒルシュビーゲル、ヒトラーが「ベルリン・天使の詩」のブルーノ・ガンツ(そっくり!ドイツ人ヒトラーは初めてなんだ)、トラウドゥル・ユンゲが「トンネル」のアレクサンドラ・マリア・ララ(妹役の人かぁ)、「白バラの祈り~ゾフィー・ショル、最後の日々」からはユリア・イェンチ、アレクサンダー・ヘルト、アンドレ・ヘンニックなどなど、近年のドイツ映画を代表するスタッフ&キャストを集め、並々ならぬ意欲を感じます。 まず言い訳しておきますが、私は歴史に弱いです。各地で同時進行するのが覚えられなかったから日本史を取ってたと言う理由だけでなく、試験勉強の時はいつも途中で寝ちゃったからという理由で、近世は特にダメです。 ドイツに興味があっただけで、別にナチスやヒトラーに興味があるわけではないので、その辺の知識はまったくもって乏しいので、それを踏まえて以下お読み下さい。 この映画はヒトラーの秘書だった若い女性の視点で語られます。最初の面接に集まった5人の内の一人がユリア・イェンチでした。 ユンゲはミュンヘン出身と言うのが効いたのか(ナチスが旗揚げされたのがミュンヘンだったからだそうです)、簡単なテストに通って無事採用されます。このテストはヒトラーが口述するのをタイプするというものですが、ユンゲがスピードに付いて行けなかったにも関わらず、ヒトラーはやさしく再度繰り返してくれます。 この映画が物議を醸したのは、このようにヒトラーを必ずしも悪の権化としては描いていなかった点のようです。 ここで描かれている第三帝国は原題の「der Untergang(没落)」の通り、1945年ソ連軍によるベルリン陥落の直前です。総統官邸でのヒトラーは狂っているとしか思えない指揮を執るのですが、冷静だったと言う説もあるようで詳しいことはわかりません。 ただ映画を見て感じる事は、彼も妻となるエヴァ・ブラウンや他の女性、子供や犬に対しては愛情を持って接していた、と言う事です。反面、部下には厳しく、裏切られた時には傷付いた分、容赦なく反撃しますが。市民に対する責任も全く感じていない。 ヒトラーの周辺を知らないと、人間関係が理解し辛いかも知れません。 私はゲッベルス、ゲーリングやヒムラーの名前くらいしか知らなかったので、この映画を理解するには知識が足りず、シュペーアとフェーゲラインがごっちゃになってたり、エヴァとの関係など少し混乱しました(やっぱりエヴァとの不倫は匂わせてたんだね。考え過ぎかと思った)。 市民軍との対立構図みたいなのも今イチわからなかったし。ユーゲント隊員達が痛々しい。一番まともな人だと思ったのはシェンク教授かな。 不思議だったのは、女性が皆、ヒトラーに熱狂してること。これは麻原なんかにも通じるかも知れないけど、元々女性は感情的になり易い事を差し引いても、何か彼の話術に魔力があったのでしょう。 逃げる機会があったにも関わらず、総統の側に居続けたユンゲ達もそうだけど、最たるものはゲッベルス夫人。殆どヒステリーとも言っていい程の崇拝ぶりで、この女が6人の我が子を殺すところにかなり時間が割かれているんだけど、淡々としてて本当に怖い。 そんな中でエヴァがとてもいい女に描かれています。彼女がいたからヒトラーもSSもあの状態の中で持ち応えられたように思う。ヒトラーと自決しようとも、何も言わずに添い遂げる大人の女です。 しかし、ドイツ女はよくタバコ吸うなぁ。 「ヒトラー」と言う邦題からすると、ここで話が終わってしまいそうですが、その後の人間模様が続きます。恐ろしいのは多くのSSは捕虜になるよりは自決を選ぶこと。この辺の映像は結構ショッキングです。 ヒトラーを亡くして、やっとユンゲ達も逃げ出します。普通の格好で逃げるより、SSと一緒の方が安全だったのでしょうか。ここで秘書仲間がどうしたか気になったんだけど、最後にちゃんとその後の経緯が出て来たので安心した。シェンク教授達も長生きしたみたいですね。あの少年も実在したんだろうか。 最後の最後に、実在のユンゲのインタビュー映像が挟まれています。ここでゾフィーの名前が出て来る。つまり、無知は時によっては犯罪となり得る、という事。実際にはユンゲは罪には問われなかったようですが、先日からの感想でも言ってるけど、知ること、伝えることの義務は果たされて行かなければいけない。「白バラ」と比較される意味はここにあったのですね。 ユンゲに感情移入出来なかった分、感動や衝撃はありませんでしたが、歴史を知るには良い映画でした。 公式ブログはこちら 公式サイトはこちら 日本語版がなくなってたので独語版ですが、授業用テキストまである充実ぶり。取り組み方が半端じゃない。 映画に関する情報はこちら DVDに関する情報はこちら 参考図書に関する情報はこちら 「ヒトラー― 最期の12日間 ― 」 「私はヒトラーの秘書だった」 かなり忠実に映像化してるようです。 それからこんなのも出て来ました。 「アドルフ・ヒトラー/最後の10日間」 ユアン・マクレガーが、ヒトラー役に挑戦 「ヒットラー」 結局これはカーライル主演になってしまったわけですけど。 ヒトラー ~最期の12日間~ スペシャルエディション[期間限定2枚組](個人秘書の視点から最後の12... お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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nackoさん、こんばんは。
ブロークバック・マウンテンの感想と合わせて読ませていただきました。 「ヒトラー~最後の12日間~」は注目していたのですが、まだ、未見です。 今週、「白バラ」を観に行こうと思っています。こちらでは上映期間が7日間しかありません。それでも、上映されるだけよいほうかもしれません。 めったにドイツ映画が上映されることなどないので、楽しみです。 (2006.04.02 22:06:57)
nanakoさん、再びありがとうございます。
ここはいつも閑散としてますので(笑)、こんなウザ長文読んでいただいた上にコメントまでいただけるのは、とても嬉しいです。 でも、ご覧になる前に感想読んでネタバレしちゃって大丈夫ですか? nanakoさんの所でも「白バラ」上映されて良かったですね!感想楽しみにしています。 私も今年はドイツ映画がマイ・ブームです・・・W杯には行けそうにないので、せめて映画だけでもと思って。 (2006.04.03 01:06:38)
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