907760 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

五所平之助監督1.≪挽歌≫2.≪わが愛≫

    五所平之助監督作品


1.≪挽歌≫
2.≪わが愛≫
ーーーーーーーーーーーーーー

  1.≪挽歌≫


映画≪挽歌≫は昭和32年の作品である。
原田康子の小説≪挽歌≫は多分そのⅠ、2年前の作品だと思う。

ずっと後になってこの小説を読んで、とりこになった。
今の時代でいえば若い女性と中年の男の不倫小説で片付けられるかもしれないが。

その当時センセーショナルではあったが、
小説にも映画にも格調高いものがあった.

そのストーリーそのものより、
この時代と、北海道釧路という舞台と、
そして生活空間そのものに憧れたのだ。

旧い洋館に住むヒロイン怜子、
建築家の桂木の住むモダンな家、

ことに怜子の家は木枠の窓、だるまストーブ、
ハイカラな応接セット、黒のダイヤル電話.

カットグラスでウイスキーを飲む怜子の父親の格好良さ.
”ダフネ”という喫茶店のしつらい。
そして、怜子のフアッションと桂木夫人の上品なマダムの
フアッション.
怜子はサブリナパンツにたっぷりとしたボックスコート、
おかめシューズ.
ロングヘアーをバレッタで止め、フエルトの登山帽みたいな
デザインのお洒落な帽子。
黒のタートルネックのセーターと好きなファッションでした。

小説の文字で表現されるその生活空間に何度も、何度も
読み返し、部屋の間取りや様子を想像する楽しみがあった。

そのころの映画にこういったハイカラな空間が
とても新鮮であった。

父親と怜子の会話をする雰囲気も少女の私にはすごく格好良く
見えた。

ああいう空間に将来住みたいと思ったのが今住んでいる家の
きっかけになったことは歪めない。

洋館ではなかったが中の古臭い空間は近づけたと思っている。

だから、後年念願かなって、映画を観た時に感動したのは
ストーリーではなく、
小説で想像していた空間が寸分たがわずに映画の画面に現れたからである。

喫茶店の名前は”ダフネ”...
ギリシャ神話の...。
求愛するApolloに追われ、父に願って月桂樹に変えられたという
ニンフーーーの意味と、西洋沈丁花の意味がある、
どちらであったかもう忘れたが.。
実は私はお店の名前もこのダフネにしたかったのですが...

タイトルの後..。
ーーーさいはての国、北海道.。---と出る。

昭和32年といえば北海道はまだまだホント!
最果ての地だったでしょうね。

羊が丘に父と弟とばあやと四人で暮している兵籐怜子は
幼い頃、左腕に関節炎をわずらったせいで、左腕が不自由だ。

そのせいか性格もちょっとひねくれたところもある。
女親のいないせいか、年をとるごとに女らしさが
無くなってくるのが心配だと父は言う。

ある日、散歩の途中で3,4歳くらいの女のこを連れた中年の
男性と知り合う。
彼の連れていたネルという子犬が玲子に噛み付いたのだ。

”どうにかしていただきたいわ”と生意気な口を利く玲子に
優しいまなざしで、そっと持っていたハンカチを傷口に
巻いてくれた。

怜子は町のアマチュア劇団の手伝いをしていて、久田という
ボーイフレンがいる。
しかし、怜子は淋しげな表情をしたこの おじさん に興味を
持った。

”ダフネ”といういつも久田と待ち合わせる喫茶店で
美しい夫人が久田の先輩の男性とお茶を飲んでいるところに
出くわす。
その夫人が桂木の妻であることを偶然知った怜子は、
小悪魔の性格がまた、覗く。

桂木は建築家で、怜子にアンコールワットの話しを
してもらったり、その淋しげな横顔を見ているうちに
だんだん魅かれていく.

怜子はある日、桂木に”あなたはcoqueよ”と言ってしまう.
きっとして、すぐに淋しい表情になった桂木は
そのまま湖畔のホテルへ連れていく。

一方、桂木夫人は迫る久田の先輩、
古瀬との逢瀬も楽しそうではない。
そして密会の時に見せる夫人の苦しそうな表情にも魅かれた
怜子は彼女にも近づく。

そのやさしさと、不思議な魅力に夫人をも好きになった怜子は
苦しさを呑めない酒で紛らし、夫人を訪ね介抱を受ける。

桂木と夫人の間で苦しむ怜子。
夫人は怜子のそんな気持ちや、桂木と知り合いだと言うことも知らない。

夫婦の間は完全に冷え切っていて修復は不可能のようだ.
夫人の前では素直に甘えられるのに、桂木と一緒にいると
彼をいじめたくもあり、愛しくもあり、、、
揺れ動く少女から女になりかけの怜子は...。

ついに夫人を訪ねていた怜子は帰ってきた桂木と顔を合わすことになる。
やるせない怜子は家でウイスキーを浴び、もともと絵も描いている
彼女は夫人の肖像をデッサンして、桂木に借りたアンコールワットの美術書に重ねるのは印象的だ。

桂木はいい加減な気持ちで怜子と付き合っているのではないから、
怜子を諭そうとするが怜子の気持ちは暴走していくだけだ。

桂木が自分から離れないのは、自分への責任と、
自分への同情だ、
そして利かない左腕への
同情だと勝手に決めつける。

桂木も苦しんでいるし、夫人との離婚も本気で考えているが、
怜子は夫人を不幸にしたくないし、などで 問題は解決しない。

夫人は怜子に素直に好意を持っていて、怜子を可愛がりたい。
そうなればなるほど怜子は苦しむ。
夫人が怜子の家にも何度も遊びにくるうちに
ばあやが桂木のことW喋ってしまい夫人は全てを知る。

静かに帰っていく夫人を追って怜子は夫人に全てを話す。
”ママ、わたしママのことが好き。私はなにも望んじゃいないわ。
もう桂木さんとは逢わないわ。だから、前のように仲良く暮して、
ね、ママ”怜子は泣きじゃくる。

夫人はにっこり笑って
”私を好きだなんておっしゃってはいけないわ。
あなたはご自分を大切にしなければいけないわ.
今が一番大切な時なんですもの。”

怜子は今は桂木のことより、ママ...夫人を傷つけたことの方に
苦しんでいる。
結局、不幸な終焉を迎えることになる。

夫人は死を選んだ。
もとはといえば淋しさから久田と過ちを犯したことから
夫婦の間に亀裂が出来た.原因は自分にあると自分を責めた。
心配のあまりダフネで夜を明かした怜子のもとに
桂木が夫人の死を告げに来た。
一緒に死の現場に向かう二人。

原野を突っ走るジープ。
その途中に歩く古橋がいた.
”乗せてあげなさい”
”結構です”
湖に身を投げた夫人の遺体の前で気を失う彼女を
しっかりと抱きとめる桂木...

亡くなって20日ほど誰にも会わなかった怜子は久しぶりに
桂木邸へ来てしまった.

鍵のありかはわかっていたので、それから毎日、
彼のいない時を見計らって邸へ通い、
掃除、洗濯、夕飯の用意をする怜子。ママに謝りながら..。
桂木が置手紙をするようになる。

”東京へ転勤になるので一緒に来て欲しいと...。今日こそ
待っていてくれ”

桂木の車が帰ってきた...
裏口から出た怜子は小屋に身を潜め、嗚咽をこらえた。

そして裸足で邸を出て、ママと叫びながら坂を駆け下りていった.
それからどのくらいの時を経たのだろうか..。

ミミズク座の地方公園へ行くトラックから、怜子の眼に
思い出の湖が見えてきた.

止めてもらって湖を見つめている怜子は吹っ切れたようだ......
   終わり・

ジープの走る原野、
夫人と古瀬が密かに会うのは、釧路市から北に行った
塘路湖近くの、湿原。茫漠たる原野で、そのなかを
鉄道の線路が一本伸びている。
この鉄道は釧網線の塘路駅から北の開拓村へと通じていた
馬鉄、つまり馬が引いていた鉄道である.
今は廃線となっているが.

怜子に扮した久我美子は適役でイメージどおりであったし、
桂木は森 雅之でこれ以上の適役はいない。

不倫とはいえ、一緒にはならなかったが
責任感の強い魅力ある男性であったことは間違いない。

夫人は巴里、オートクチュールのファッションを思わせた.
美貌と気品と優雅さ、優しさを備えた素敵な女性であった。

ちょっとしたいたずら心が不幸を招いたが、夫人の死は怜子の
せいではなく、夫人は自分自身が許せなかったのだと思う。

ストーリーは乙女にはロマンチックに映りましたが。

画面から来るオールドな雰囲気がたまらなく素敵で、
女性必見の映画です。

これもリメークものはダメですよ。

制作  松竹  昭和32年度作
監督  五所平之助
主題歌 越路吹雪
出演  兵藤怜子ーー久我美子
    桂木節雄ーー森 雅之
    桂木夫人ーー高峰三枝子
    久田幹男ーー石浜 明
    古瀬  --渡邊文雄
    ばあや ーー浦辺粂子
ーーーーーーーーーーーーーーー

2.≪わが愛≫


さて、女性映画の3番手、≪わが愛≫
これは井上靖原作の≪通夜の客≫の松竹映画化作品です.
昔の女優さんてどうして、皆さん 声が魅力的なのでしょうか.

若尾文子、久我美子、岸 恵子、有馬稲子、高峰秀子、八千草薫
皆さん少し低めでしかも色っぽくて品がある.
今の娘のようなきんきん声ではない。
それが、若くても大人の魅力の美点ともなっている.

もと新聞記者の通夜の席にそこに座っている客の誰もが知らない
一人の女性が焼香にやってくる。
無論、喪主である記者の妻も知らない婦人である.
ひっそりと、言葉少なに頭をたれ、帰っていく。

居酒屋で一人お酒を飲みながら
回想シーンに入る.
用事を済ませたらきっと帰ってくるからと言い残して出かけたまま、
久々の東京で突然倒れかえらぬ人となってしまった恋人。

世間☆一般社会では不道徳と言われる男女の中であるが、
女は命がけでなんの代償も求めず、ちからいっぱい男を愛した.

新津は新聞記者を辞めてから、鳥取の山奥に篭り、ある研究をしてい
た.
そこに、ひっそり、しかし情熱を持って彼を愛する一人の女性が
寄り添って一緒に生活していた。

ーーーきよは 新津がまだ記者をしていた若い頃、
使っていた待合の娘であった.
きよは少女のころから新津が好きであった.
戦時が始まり、きよも少女から大人の女性へと美しくなっていく。
新津もいつしかきよを愛するようになる。
そして、記者を辞める決心をした新津は鳥取の山奥へ.
きよはあとを追っていく。

その粗末な家での隠遁生活の中で、村八分に合いながらも、
二人だけの生活はきよにとっては幸せな毎日であった。
次第に里の人たちとも打ち解け、
きよの立場を知ってからでもやさしく接してくれ
穏やかな日々.2年、3年の歳月が過ぎた。

が、彼女の胸の中では、いつこの穏やかな生活が壊れるか
不安を感じない訳ではなかった.ーーーーそして突然の男の死.
二人暮らした想いでの家、そこを去る日彼の形見を大事に大事に
抱きしめ、二人の間を認めてくれていた里の人と別れ
山を降りる時に男の声が訊こえたーーありがとうーー
”わたしは3年間愛して愛して愛したんだわ”と幸せな気持ちで
どんどん下るのでした.

妻子ある男との許されぬ愛.
美しいおだやかな山々を背景に恋の苦しさ、妖しさ、
甘美さ、馥郁たる香り、激しさ、切なさ、哀しさを、
余す所なく、謳いあげた珠玉の作品である.

有馬稲子さんの着物姿もなかなか良いですねえ。
里の生活だから、紬に織りの帯です。
着物での現代劇はこれしか知らない。
淋しげな顔立ちなので笑顔の方が良いんだけど、
やはり淋しい顔.

信じていても不安が何時も付きまとう.。仕方ないけど.
引き返せないのでしょう、

個人的にはそういうことは余計なお世話だからして
なにもご意見はない.
ただ言えるのは、きよにとって愛の代償ではなく、
後悔もなく一生懸命愛することが出来たと言う
満足感で十分だったのでしょう.

どんな形にせよ、精一杯の誠意が与えられない男はつまらんし
惚れる価値がないと言うところでとめておきましょう.

しかし稲子さんキレイ.
喪服姿....もキレイ.
自然体の着物姿がとっても良い。
何かの番組で稲子さんが話してらしたが
この≪わが愛≫の出演で女優として
生きていく決心をしたそうで
彼女自身が一番好きな作品だそうです。

製作 松竹  1960年度作
監督  五所平之助(一時代を築いた監督)
原作 井上 靖 (通夜の客)
出演 有馬稲子/佐分利 信/丹阿弥谷津子/乙羽信子
    東山千栄子 




Copyright (c) 1997-2020 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.