その男ゾルバ..・・・・アンソニー.クイン
”その男ゾルバ” 1964年度作品製作 米監督 マイケル・カコニヤス出演 アンソニー・クイン、アラン.ベイツ イレーネ.パパス、リラ.ケドローバ あらすじ亡くなった父の残した炭鉱を再開しようとギリシャはクレタ島に渡ろうとしていた英国の作家、バジル(アラン.ベイツ)は、待合所で不思議な魅力を持つゾルバ(アンソニー.クイン)と出会った。強引にゾルバはバジルに現場監督として雇ってくれと言い、バジルは何となくO.Kしてしまった。島に着くと一軒しかない安ホテルに落ち着く事にしたバジル。ホテルの経営者はもう、老年と言った方がよい未亡人であった。彼女はフランス人で昔は踊り子だったようだが何人もの男たちを遍歴した女性で、ここではよそ者でもあり、孤独でもあり、ゾルバを最後の男として愛している。バジルは見るもの、聞くもの珍しく興味を持った。閉鎖した炭鉱の再開ではやはり朽ちた柱などが倒れ、最初から無理だった。そこでゾルバは発想を変え、バジルに製材所をやろうと提案した。とてつもないことを思いつくゾルバは自分でもわかっていて失敗してもいいか?とバジルに打診した。O.Kしたバジルに嬉しさを身体で...ダンスで表現した。そのおおらかさにバジルは益々ゾルバに魅かれていった。炭鉱はバジルのものであるがその上の山は修道院の所有物。ゾルバは修道士達を天性のユーモアで説得し、山の木の伐採を許してもらった。さて、頂上から海まで、ケーブルを張って木を降ろす計画だったが・・・・。ゾルバは酒を愛し、女を愛し、人生を謳歌し・・・・だが失敗も多い憎めない男。ホテルの女主人が昔の栄華を唯一の自慢として話すのを黙って聞いてやるゾルバ。例え、バジルにとって苦笑いの話でもだ。女を真に理解するゾルバはこの女主人にとって今何をしてやればいいかをよく知っていた。結婚も約束し、ウエディングドレスも用意してやろうと思っていた。しかし、ケーブルの材料の手配の為に島を離れたゾルバは酒場の若い女と一緒で何日も島を留守にした。帰ってきたゾルバに敏感な女主人は泣いてゾルバを責めた。老いの不安と体調のすぐれない彼女はただただ、ゾルバとの結婚を願っていた。着飾れば着飾るほどに老醜の浮き上がる彼女にまるで幼女のようにゾルバは接した。バジルとて彼女をレディとして扱った。さて、島にはもうひとり美貌の未亡人(イレーネ・パパス)がいた。島の男たちは彼女をものにしようと虎視眈々と狙っていたが彼女は誰にも冷たく、心も開かなかった。中でも、男たちのリーダーの息子は彼女に本気で熱を上げていたが見向きもしない彼女に仲間たちは、彼女の家の窓を割るなど嫌がらせをしていた。いつもの嫌がらせに、たまたま居合わせたゾルバとバジルは彼女を助けた。生憎の雨に蝙蝠傘をそっと差し出したバジルに未亡人は島の男たちに向けるきつい眼差しとは違う優しい目を返した。未亡人から届いたお礼のクッキー。咄嗟に隠したバジルだったが、久しぶりに帰ってきたゾルバはすぐにそれを見つけ、未亡人の気持ちを汲んでやれと世話を焼いた。何日かしてバジルは未亡人を訪ね、その夜はそこに泊まった。それを知ったリーダーの息子は海に身を投げて死んだ。逆恨みをしたそのリーダーは仲間達と一緒に礼拝に来る大勢の信者達の前で彼女を取り囲んだ。ナイフを持って彼女に迫る彼を一旦はゾルバが救ったが、目を離した隙に彼女はリーダーに刺され死んだ。何故?未亡人が独身の男と恋に落ちて、姦通在なのか??ここにギリシャ悲劇を盛り込んでいるのでしょうね。??バジルは紳士だ。自分のせいで彼女を死なせてしまったことを悔いた。体調のすぐれなかったホテルの女主人は病が重く、死期の近い事を知っていた。バジルの立会いの元、ゾルバは彼女と式を挙げた。死期の迫った彼女の財産を狙って島の女たちがぞくぞくと集まって来た.まだ息を引き取ってもいないのに黒衣の老女達が部屋の中にまで入ってきて座り込み何を盗み取るか見回しているその姿は背筋が寒くなる。しかし、これはギリシャの古くからの習慣なのだろう。入って来られた彼女にしてみれば”お前はもうすぐ死ぬんだ”と言われているようで切ない。”怖くない,俺がそばについているんだよ”とゾルバは彼女を抱きしめ、そしてその腕の中で息を引き取った。振り向くと部屋にはベッドと彼女だけになっていた。異国人,まして異教徒の彼女は教会の墓には葬る事は出来ないのだとゾルバはバジルに言った。可愛そうだというバジルにゾルバは”死んだ彼女にはもう何も分らんさ”と吐き捨てた・人生を謳歌し、豪放磊落なゾルバの言葉だからこそギリシャの風土に培われた諦観が滲み出ています。木材運搬ケーブルはちゃちなものだったが一応,竣工式というか試運転を行ったバジルとゾルバ。修道士や老僧も交え、始まった。ものすごい勢いで下ってくる大きな木材。三度目でケーブルの柱はドミノ倒しのように崩れていった。焼けたマトンを頬張りながら大笑いをする二人。”坊さんがびっくらこいで逃げていったぜ”ワハハと・・・・”やっと腹の底から笑ったなあ”とゾルバはバジルの肩を叩いた。明日は島を去ると言うバジルはゾルバに島の あの踊り、ダンスを 教えてくれと・・二人ステップを踏むのだった。強靭な生命力を感じさせるギリシャ人ゾルバ。軽妙にそして温かく,真実を達観して豪快に生きるゾルバ。几帳面な英国人作家とこの豪放磊落な正反対のギリシャ人との奇妙な友情は最初から最後まで心地よく、ラストのダンスで本物となった。同じくギリシャの風土を描いた”日曜はダメよ”の底抜けに明るいギリシャ人気質・対照的な目線で描いた”その男ゾルバ”は二人の友情が強い信頼関係となっていくのを縦軸に愛、友情、生きる事の素晴らしさ,歓び,苦しみ、そしてギリシャの風土に根付く”死”というものを真っ向からどうだ!と言わんばかりにつき向けてきた。ゾルバの恋人を演じたリラ.ケドローバはこの作品でアカデミー助演女優賞を受賞。愛と優しさ溢れるゾルバはクイーンあって生まれた作品。不朽の名作でしょう.