法廷で僕の質問の半分近くを却下したK裁判長。その基準は?(2)
既述したように、検察は、長崎大学法医学教室のI教授を鑑定証人として出廷させ、白血球の一種である好中球が受傷部位に集まる時間的特性から、FさんとS子さんがそれぞれ殴打された時間を決めつけようとしましたが、この好中球による方法は誤差が大きすぎました。 この論点について、僕はメモで次のような質問をしたのです。「好中球が受傷部位に集まる時間的特性は気温の影響は受けないのですか。Fさんが殴打されたのは寒い12月の日であったし、検察官は被告人が経営する鉄工所の敷地内で暴行が行われたと言っているので、寒い海風も吹きつける鉄工所の状況からすると、Fさんは暴行を受けて長時間、相当に寒い中に放置されていたことになります。このような、気温が10度程度かそれ以下の場合の、好中球の活動は、受傷時期の特定に大きな誤差を生じさせるのではないですか?」 この僕の質問に窮したI教授は、僕を後押しする裁判官からも攻撃され、ついに白旗を上げられました。「裁判員の貴方。なかなか、良い質問をしますね。そうです。誤差は1,2時間どころか、貴方が考えているように、それ以上、5時間以上あるかも知れません」 検察が主張する、「Fさんは被告人が経営する鉄工所の敷地内で、夕方から夜にかけて、大量出血を伴なう殴打行為を受け、意識を失った状態で相当長い時間放置されていた」というストーリーを嘘かも知れないと感じさせた瞬間でした。 このことが、鉄工所に大量出血の痕跡が認められなかったことと合わさって、「Fさんが被害に遭った場所は、対馬市内の何処かである」と検察に訴因変更をさせることになったと識者は全員言うのです。 この「好中球が受傷部位に集まる時間的特性」についての僕の質問は、K裁判長の妨害を受けなかったので、メモに書いた全文が、無事に左陪席判事により読み上げられたのです。 法廷の机の上には筆記具とメモ用紙が刑事部職員によって開廷時、いつも、このように準備されていました。こんなに小さい正方形のメモ用紙に証人への質問を書いていました。長文だと1枚の表裏には書き切れず、メモ用紙を2枚使うこともありました。その時は、裁判長、左陪席判事が読みやすいように、メモ用紙の右上に赤鉛筆で、3-1、3-2、3-3などと朱書きしていました。