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カテゴリ:感動したもの
日本刀は、鉄板と鉄板がサンドイッチ状に何層も重なってできています。
その作り方を 『真っ赤に焼けた鉄板同士を重ねて、叩いてくっ付ける』 と勝手に思っていました。 日本刀の製作工程といえば、刀工さんが金槌でガンガン叩いているイメージがあった所為です。 しかしそんな知識は、現在の日常生活では磨き上げる機会がないため、 研ぎなおされることなく、そのまま ---------- しかし去年の夏、その勝手な思い込みに疑問の影がさしました。 忘れていたことを、何の脈絡もなく思い出したりするのは不思議で面白いのですが、 日本刀とは関係ないので割愛です。 鉄板をいくら真っ赤に加熱しても、くっ付ける瞬間は炉から出すため、 表面が空気に触れ、表面が瞬間的に酸化されるため、接着力不足になるのではないか 疑問を持つことは誰でもできますが、その疑問から真相にたどり着くのは簡単ではありません。 その疑問自体が間違えている場合もあるからです。 間違えた地図では、インディ・ジョーンズでも宝物には遭遇できません。 ---------- 日本刀が実際に存在しているということは、 鉄板の空気酸化が接着力不足とはならない証明にほかなりません。 しかし、鉄板がいくら赤熱していようが溶けているわけではないので、 鉄板同士がくっつく感覚がつかめませんでした。 ---------- 思考だけで結論を出すことは危険です。 「思考する」ことは、自分自身の知識の並べ替えをすることです。 思考とは、持っている知識のジグソーパズルで、絵を再現するようなものです。 苦労してひとつの絵をつなぎ合わせると、人はその知識に愛着がわきます。 そのため、実際の絵と違う点を指摘すると、激しい反発を食らいます。 それが、明らかに間違えた絵であっても。 知識と心を分離した、冷静な姿勢を保つことができれば、思考の達人です。 ---------- 百聞は一見に如かず。 独りよがりの考えほど危険なものはないため、どうしたらいいものか悩みました。 そしてついに我慢できなくなり、仕事をさぼって、鍛冶場を訪ねました。 ---------- 結論から言うと、 ・炉の中で、真っ赤に焼けた鉄板に灰をまぶす。 ・すると、パンケーキのバターのように、鉄板の上で灰が液状に溶ける。 ・そのまま炉から出すと、鉄板の表面が液状の灰でコーティングされていて空気に触れていない。つまり、酸化が起きない。 ・そのまま鉄板同士を重ねると、間に液体状の灰が挟まる。 ・そこで、金槌で鉄板を叩くと鉄板間の液体状の灰が押し出され、同時に鉄板同士が一瞬でくっつき、酸素が鉄板と結合することができない。 ・鉄板は一度も空気に触れることなくくっつく。 ---------- その匠の技に激しく感動しました。 当時は、おそらく酸化・還元などの知識は知らなかったはずです。 感覚と直感で、最高の手段を獲得したことに、感涙しました。 現代ならば、真空中で張り合わせるなどするでしょう。 知識があるがあるため、その知識に縛られてしまうはずです。 毒と薬は紙一重です。 どちらかというと、毒なのですが。 想像と直感は、知識に対抗しうる武器だと、感じました。 --------- という話を、仲良しの板前さんに話したら、 「いやあ、自分も職業柄、刃物には興味がありまして。 日本刀を借りてきて、専門の機関に頼んで電子顕微鏡で刃を見たんですよ」 ううん。何とも素敵な話です。 電子顕微鏡でしか見えない世界を、直感と想像で描き、 それが正しかった生物学者がいましたが、それはまたの機会にします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.09.10 23:22:46
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