[息子の成長・・・生後１ヶ月～]の記事一覧 | ☆雨上がりの虹の下で…☆

医師に告げられたこと（８）

一週間から一ヶ月置き、二ヶ月・三ヶ月・半年と検査の間隔も開いて、今では急な場合を除いては一年置きになりました。小さい頃を思えば、今は自分の調子が悪ければ言葉で伝えられるので、私の心労も減りました。それでも注意することは、有ります。感染症に注意すること。これは抜歯した時に、そこから心臓にばい菌が入らないように、抗生物質を処方してもらいます。転んで大きい怪我をした時も、同じような配慮がいります。後は　肺高血圧と言って、元気な血液が塞がらなかった穴から流れ出す量が増えて、肺の動きに負担をかけてしまう病気です。酷くなると手術も必要になるそうです。高熱が長引くのも危険です。ですから、冬はいつもより注意して、様子を診ています。それらを気を付ければ、皆と同じ長さの命を頂けるので、とても有り難いと思います。息子が家族と共に生きていけることに、感謝しています。

医師に告げられたこと（７）

一週間後　朝早くから検査が始まり、終わったのは１６時を回っていました。本当　病院って一日仕事ですね・・・。レントゲンはすぐだったのですが、心電図やエコーは動くと困るので、息子が眠るのを待ってから始めるのです。特にエコーの前は、シロップのようなものを飲ませて、眠らせるのです。息子はなかなか眠らなかったので、１５時過ぎから検査が始まりました。エコーで心臓の動きを見ると、何やら赤い色や青い色が出たり入ったりしているのが分かりました。先生がキーボードを打つと、心臓の音が聞こえたり動くのがアップに見えたり、それをプリンターで写真のようなものにしたり・・・。画像を大きくして先生が言いました。「この青い色（心臓に戻っていく古い血液）の中に、赤い色（心臓から出発する元気な血液）が混ざってしまっているんですよ。診察室に戻ったら詳しく話しますからね」待合室で待つこと３０分余り。診察室へ呼ばれました。不思議と落ち着いていました。初診までの一ヶ月の不安を思うと、ハッキリさせて治療していこう！と言う思いのほうが、強くなっていました。「心雑音の原因が分かりましたよ・・・」先生は予め用意してあった心臓の絵を描いた用紙に、赤鉛筆と青鉛筆で詳しく描きだしました。「ここに穴が開いていてね。この穴から元気な血液が汚れた血液の方に、漏れているんですよ」「穴が開いているんですか・・・。どうしたら閉じますか？治りますか？」お父ちゃんが質問しました。「息子さんの診断名は、心室中隔欠損と言いましてね。簡単に説明するなら、心臓の壁に穴が開いていると言うものなんです。新生児の心疾患の中でも、割合　多いものなんですよ。場合によっては、手術も行いますが・・・。まだ　身体が小さいので、少し様子を見ていきたいと考えています。まれに３歳までに穴が開いてる周りの筋肉が発達して、そこを守るように塞ぐことがあるんですよ。自然治癒力なんですけどね。今すぐ手術をしなければ命に関わるほどの重症では無いので、定期検査で様子を見ていきましょう」「もし　手術が必要なら、何も分からない小さな頃の方が良くありませんか？」大きくなれば息子が恐怖を感じるのでは？と思い聞きました。「僕が考えているのは、手術後のリスクのことです。息子さんのような手術の例は数多くあり、手術自体が失敗することは、今の医療レベルでは　まずありません。穴を塞ぐことは問題ありませんが、手術の間　人工心肺を使います。手術が終わった後、治療の済んだ心臓を体内に戻すのですが、その心臓が上手く動かなくなって心停止し、それで亡くなることがあります。息子さんの穴の大きさや状態を考えると、その重いリスクを背負って手術をするより、自然治癒に賭けた方が良いと思います」私もお父ちゃんも、先生に賭けてみようと思いました。「酷なようですが　初めに言っておきます。絶対と言う言葉は　僕は使いません。どんな小さな病気でも、患者さんに絶対　治ると言う約束は出来ないのです。予想もしなかった事が起こるかも知れません。けれど、僕に任せてもらった以上　患者さんと一緒に、精一杯　努力します」先生の言葉は正直で、心強いものでした。「何か少しでも不安を感じたら、連絡して下さいね」帰りがけに看護師さんはそう言って、注意事項の書かれたメモを渡してくれました。

医師に告げられたこと（６）

いよいよ　先生の診察が始まりました。お父ちゃんより少し若いかな？小太りで黒い眼鏡をかけた優しそうな男の先生でした。紹介状にサッと目を通し、息子をベッドに寝かせました。聴診器を胸に当て、しばらく　ジッと目をつぶってから、カルテに色々　記入していました。「酷くは無いけど・・・。放っておいていいものでもないのでね。今度　検査しようか」と、検査室に連絡を入れました。「一週間後、来れるかな？」「はい」すぐに順番が終わりそうになったので、慌てて質問しました。「私、治療の為にずっと薬を飲んでいたんですけど・・・。それが原因ですか？」ずっと聞きたかったことでした。「うーん、絶対とは言えないけれど・・・。それは無いと思いますよ。飲んでた時期が違いますし、心臓が形成されるのに影響の無い薬ですからね。・・・自分を責めたら駄目ですよ」先生の言葉に、やっと肩の力が抜けました。部屋を後にする私たちに、先生が言いました。「僕も一緒に頑張るから、お父さんもお母さんも負けないで！」暖かな気持ちに包まれて、心に希望が芽を出しました。先生の「一緒に頑張るから」と言う言葉が、いつまでも胸に響き続けました。

医師に告げられたこと（５）

看護師さんに名前を呼ばれて診察室に進むと、まず　息子の身長と体重を計ってくれました。そして　もう一度呼ばれるまで、椅子に座っているようにと言われました。そこでなんとも愛らしい女の子を連れたお爺さんが、話しかけてきました。「どこが悪いの？」「まだ・・・。今日　初めて診てもらうもので」おどおどしながら答えました。女の子が遊びに夢中になるのを確認すると、お爺さんが言いました。「あの子、私の孫なんですがね・・・。余り長くないんですよ」「えっ！？」私は絶句しました。楽しそうに人形で遊ぶ姿から、お爺さんの言葉の意味がすぐに理解できませんでした。「身体の中に、チューブを通してるんですよ。他に治療法が無くってね・・・。学校に通ったことも無いんですよ」私は言葉が出てきませんでした。お爺さんは眠っている息子の頭を撫でて「頑張れよー」と言ってくれました。私は泣かないように「ありがとう」と答えるのが精一杯でした。お爺さん、私とは初対面なのに・・・。どうして話してくれたのかなぁー？きっと　女の子の前では、泣きたい気持ちを堪えていたんだろうなぁ・・・。誰かに聞いて欲しかったんだろうなぁ・・・。生きたいのに生きられない・・・そんな子供たちがいる。命の大切さを実感しました。

医師に告げられたこと（４）

待ちに待った予約の日がやって来ました。お父ちゃんも仕事を休んで、付き添ってくれました。少し緊張気味の私に「まだ　何かあると決まったわけじゃないんだから」と言いました。何てお気楽な人なんだろう・・・。私は他人事のようなお父ちゃんの態度に呆れましたが、逆にそれが良かったんだな・・・と、後にそう　思いました。二人して落ち込んでたら、救いようがありませんものね。お父ちゃんなりに、私を気遣ってくれていたのです。病院の中は専門の科にいくつも分かれていて、その待合室には人が溢れていました。前日から近くのホテルに泊まりがけで来られている家族もいました。かなりの時間　待たされたのですが、そこで私は　苦しんでいるのは一人じゃないと知りました。ここに居る全ての母親が、私と同じなんだ。今まで嘆いていた自分が恥ずかしくなりました。笑顔で子供に接している姿を見て、その　強さに感動しました。私もあんな母親になりたいな・・・。どんな結果が出てもいい！私がこの子を一生懸けて守っていくんだ！！息子の順番が回って来る頃、自分が少しだけ強くなれた気がしました。

医師に告げられたこと（３）

お酒に頼るようになったとは言っても、母性って不思議ですね。育児に支障が無いように、知らずに量をコントロールしているのです。夜中に息子が泣いても、ちゃんと起きられるようにとか・・・。時間もお父ちゃんが帰ってくるのに合わせていたり・・・。このままじゃ　いけない！それは自分が一番よく分かっていました。それでも飲んでいる時は、少しだけ楽になれるような気がして、逃げていました。自分のせいで息子を病気にしてしまったんじゃないか・・・。今まで飲んできた薬？今までしてきた治療？妊娠中に追突事故に遭った事？そのどれもが原因になったのではないか・・・。問いかけがずっと頭から離れずに、自然と涙が溢れ止まらなくなりました。「孫が心配なんだから、電話ぐらいいいじゃないか」そっとしておいて欲しい私の気持ちを打ち明けると、お父ちゃんはそう言いました。孫が心配？義母は私に、お父ちゃんのことを「可哀想」って言ったのに？いつもお父ちゃんの心配ばかりしてるのに？一度も私の気持ちなんて、聞いてもくれないのに？孫ができて嬉しい気持ちは分かるけれど・・・。私の気持ちはどうなるの？「そんなに聞きたいんなら、お義母さんも義妹たちもお父ちゃんに聞けばいいじゃない！」「なんで皆　私ばっかりなのよ！！」「なんでお父ちゃんが居ない時に、電話してくるのよ！！！」皆も心配なんだから、仕方ない・・・。そう言い聞かせて気丈に振舞ってきたもう一人の私が、私の中から消え去りました。お父ちゃんはしばらく何が起きたのか理解できないようで、呆然として私を見ていました。

医師に告げられたこと（２）

紹介していただいた病院は、飛行機を利用して訪れる方がいるなど、重い病気を持つお子さんがいる親御さんなら、一度は聞いたことがある名の知れた病院でした。予約の日まで１ヶ月近く待たなければならず、その間の　不安な気持ちといったらありませんでした。心配をした義母や義妹たちが電話をくれるのですが、まだ初診さえ受けてない私は、どう説明していいのか分かりませんでした。今ならその時の皆の気持ちも嬉しいのですが、当時は　自分自身がその事実を受け入れることさえ出来ない状態で、そっとしておいて欲しいと思いました。それでも電話は掛かってきました。「お兄ちゃんが可哀想・・・」ある日の義母からの電話で、元気の無くなったお父ちゃんに向けて何気なく私に呟いた一言が、弱っていた心にグサリと音を立てて衝き刺さりました。可哀想！？私が元気な子供を産んであげられなかったから・・・。私を責めてる？何とか持ち堪えていた気持ちが一気に崩れ、自分を責めて眠れなくなった私は、気持ちを紛らわす為にお酒に頼るようになっていったのです。

医師に告げられたこと（１）

それは産後の一ヶ月検診での事でした。私より先に診察が終わった息子を助産師さんが抱いてくれて、椅子に腰掛けた私が医師と向き合ったとき言われたのです。「早いほうがいい。県立の病院を紹介しますよ」えっ！私　また　なんかトラブル？「どこが悪いんですか？」恐る恐る聞くと「心臓の雑音が気になるんでね・・・」し・・・心臓？！「すぐ　予約を取って、紹介状を書くからね」そんなん　今まで言われた事　無かったのに・・・。そうだったんかー。私、心臓も悪かったんやなぁー。いっぱい病気したけど、やっぱり言われるとショックや・・・。「えーと、生後１ヶ月の男児なのですが・・・」予約の電話を入れてくれている医師の声がそう聞こえて、私は　それが息子の事だと。さっきまでのことは、自分の早とちりだと気づいたのです。とりあえず　予約の日時のメモと紹介状を渡され、産院を後にしました。家に帰るまでのことは、頭の中が真っ白でよく覚えていません。