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成定 竜一~高速バス新時代~

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2013.08.06
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カテゴリ:高速ツアーバス
昨日、高速ツアーバス連絡協議会の年次総会を1ヶ月遅れで開催し、8月末の解散を決議した。本来ならば、万歳三唱?したり、メディアを招いて派手に伝えてもらったりすべきところかも知れないが、関越道事故と、事故以降の論調を踏まえ粛々と終わらせた。それでも、国土交通省と日本バス協会から幹部の皆様に来賓としてご臨席いただき、懇親会も盛り上がった。高速ツアーバス業態の成長も、同協議会の設立も、そして事故後の修羅場を乗り越え無事に移行完了できたのも多くの関係者のご協力の賜物であり、まずは深く感謝。

組織としての解散自体はともかく(これにも、業態がなくなったんだから即解散という考えと、少なくとも各社の事業が安定するまでしばらくは残すべき、という考えがあるが)、今般の制度改正について、突き詰めて考え抜けば様々な思いが、私自身にはある。

まず高速ツアーバス連絡協議会としては、「あり方検討会(旧)」冒頭の意見表明(2011年1月)において、<安全性・公平性を担保しつつ、柔軟な営業を可能とし、高速バス市場の最大化を支援する「新制度」を時間をかけてでも構築する>ことがゴールだと表明している。公平性とは「停留所の権利へのイコールアクセス」であり、柔軟な営業とは「レベニューマネジメントなど今日的なマーケティング手法」を指す。その点、今回の制度改正は、その両面において(若干の不足点はあるものの)協議会の意向が実現したと言える。

もっとも同発表を私は、<IT化など消費環境の変化、現制度の限界を踏まえ、短期的、長期的両面のアプローチで制度の最適化を目指す「ロードマップ」を作成し、期限を決めて「新制度」の構築を目指してはどうか>とまとめており、もう少し長期的に物事を考えていたと、今振り返ればそうわかる。そしてあの資料を作り発表した際、組織の意向としてはそれ以外の選択肢はないと納得しつつ、私個人としては複雑な思いが拭えなかった。一本化を進める役回りをなんとか務め終わった今でも、複雑な思いは消えたわけではない。

ひとつには、国の制度のあり方の話。高速ツアーバスは規制が甘いとよく言われるが、実際には旅行業法における消費者との契約に関する規制も、道路運送法における貸切バスの運行に関する規制も、特に後者の方は決して甘い内容ではない(乗合バスよりも貸切バスの方が危険であっていいわけではない)。だが、それを守っていないヤツがいる、つまり問題点は規制の「実効性」にあるのだ。だからといって事業モデル自体を禁止するというのは、どう考えても理屈に合わない。もっともその点は、議論の中で名古屋大・加藤先生が、<高速ツアーバスという事業モデルには、法令遵守意識の低い貸切バス事業者が運行にかかわりやすい「リスクを内在」している>と述べられ、これは非常によく考え抜かれた発言であったので、これを機に、一本化という結論へ向け急速に議論が収斂し始めた。

「理屈」の方はそれで片付いたのだが、もう一つの観点は、業界のために本当にプラスになる結論かどうかという点である。「あり方検」では(私は「ツアーバス側」で参加していたわけだが)、「既存側」から集合場所問題が持ち出されるたびに、<では停留所の権利の開放を>と、オウム返しを続けた。「戦略」としては、<では一般的な貸切バス、特に観光バスツアーや、幼稚園などの通園通学バスの路上乗降は問題ないのか?>と返す手法もないではなかったが、ここは停留所の権利一本にしぼった。停留所の権利という話は、間違いなく「既存側」のアキレス腱であった。

結局、ご存じのとおり、高速ツアーバス各社の移行に際し国土交通省が停留所の確保を「支援する」ということで決着した。結果としては「ツアー側」は停留所を確保し安定感を持って事業を継続でき、「既存側」は高速ツアーバス各社を従来よりおおむね不利な乗降場所に追い込むことができた。「あり方検」当時から描いていた構図がほぼそのまま実現したわけだ。しいて言えば、事故の影響とそれを受けた移行期限短縮の結果、「ツアー側」の状況(特に停留所と管理受委託制度の詳細)が想定よりは不利な条件にはなってしまったが。

問題は、この結果が業界に何をもたらすのかという点だ。短期的には、続行便設定の難しさなどから繁忙期を中心に「ツアー側」は事業規模の縮小を余儀なくされる。もっともそれは高速ツアーバスの6割を占める大都市間3路線において影響はあるものの、地方路線が98%を占める「既存側」にとっては大したメリットはない。ただし「既存側」の本丸たる地方向け、短中距離路線においてもやがて本格的な競争が始まり得るリスクを「既存側」が明確に認識するきっかけになれば、中期的には業界の再成長を呼び込むと私は見ている。

ではその先はどうなるのか? 高速ツアーバス業態(募集型企画旅行)は短・中距離路線に不向きだと何度も書いてきたものの、それでも福岡~宮崎や大阪~徳島などでは「ツアー側」が一定の存在感を勝ち取ってきた。そして高速ツアーバス業態には参入障壁はない。旅行業免許や貸切バス事業許可は要件さえ満たせば取得できる(繰り返すが、残念ながらその要件を守っていないヤツがいたことが問題なのだ)。一方、今月以降、高速バス市場に参入を望む者は、すべからく、停留所の権利という見えない壁を乗り越えなければスタートラインにも立てない。業界の顔ぶれが、2013年8月1日時点で事実上固定されたことになる。そのことが、長期的に見て業界の活力を奪ってしまわないか、私には不安である(ちなみにこの「停留所の権利」に関して、以前ご紹介した大分交通・蛯谷さん達の論文が、運輸政策研究機構のサイトで読めるようになったのでご確認されたい)。この問題は、今回の制度改正に関わった者の責任として、いつも念頭に置いて仕事を進めていきたい。

さて話は変わるが、連絡協議会が無事に解散することで、個別に契約をいただいている一部の会社を除くと、私はもう「移行組」各社とは無関係になる。本音を言うと、私にとって「同志的」感情を共有するのは「既存組(の中の、改革派)」の人たちであり、旧・高速ツアーバス各社の多くとはしょせん「仕事上の関係」という意識であった。しかし今回、移行期間が1年に短縮されるという修羅場を経験し、特に停留所調整やその後の段取りを主体的に担当したメンバー達とは初めて「仲間意識」が芽生えたのも事実である。いつだって、どんな背景があれど、戦友は貴重な存在である。今後はむしろ私は「既存組」のブレインとして彼らとは競合先として向き合う機会の方が多いだろうが、バイタリティ溢れた彼らが再び業界を引っ掻き回してくれることを、恐れと期待を込めて心から祈っている。





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Last updated  2013.08.08 15:31:53
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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