481227 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

成定 竜一~高速バス新時代~

2015.08.14
XML
カテゴリ:高速路線バス
ご存じの通り、新宿地区の高速バス停留所は(既設のバスターミナル発着便や、2年前に高速ツアーバスから移行した暫定停留所発着便も含め)全て、来春、新しいバスターミナル(BT)への集約が決まっている。「既存」高速乗合バスも、高速ツアーバスからの「移行組」も、同じBTで発着することになる。合わせて東京駅周辺でも、数年かけて新宿の2倍以上の規模のBTが整備され、「既存組」「移行組」に加え定期観光バスも同BTに集約されることが事業主体である中央区より発表済だ。また、これらよりインパクトは小さいものの、本年中に供用開始される公共のBT(高速バス用に整備されたもの)として大崎駅西口バスターミナルがあり、運営主体である(一社)大崎エリアマネージメントの公式サイトに情報が既にアップされている(乗入事業者の公募中。したがって顔ぶれは未定)。

公共セクター(国や自治体)による高速BTの整備(特に東京や大阪、京都)は多くの人が望んでいたことだ。私自身、「バス事業のあり方検討会」において高速ツアーバスという業態をどう取り扱うかの議論の中で、「公平な停留所配分」が制度的に担保されることが必要だと主張してきたし、新聞やテレビなどでも「行政によるBT整備が必要」と何度かコメントした。当然、上記3ヶ所のBT整備の動きは大いに歓迎しているし、特に供用が目前に迫っている大崎、新宿の2ヶ所については、準備に追われる関係者の皆さんを応援している。

一方、物事には必ずオモテとウラがある。高速バス用のBTを整備してもらえた地区においては、高速バスの発着が、今後、そのBT内に限定される(路上の高速バス停留所が全て廃止される)蓋然性が大きいとも言える。つまり、BTというハコの大きさによって、今後の高速バスの発着便数(総量)が制限されてしまうリスクがある。

2000年、道路運送法が改正された(乗合分野の施行は2002年)。それにより、同法第一条(目的)から「業界の保護」という文言が消え、「利用者の利益の促進と利便の増進」に変わった。それにより、乗合バス(高速バスを含む)においても新規参入による競争が促進されることになった(その際、北海道における会員バス問題以来の、高速ツアーバスを禁止する通達が廃止されたのだが、本筋と関係ないので省略)。一方、乗合バス事業への参入に際しては停留所の確保が引き続き必要である。ところが停留所の設置は同法ではなく道路法、道路交通法の範疇で、これらの法律やその運用に変化がなかったため、新規参入を希望する事業者にとっては停留所の確保という問題がハードルとなって立ちふさがることになった。

とはいえ、駅から離れた二等地で調整するとか、誰か(誰?)に助けてもらう(どんな?)とか、新設が認められ高速バスの新規参入につながった例も存在する。「既存」事業者にとっても、自社の路上停留所は、増便や新路線、続行便の設定などある程度の自由度を持ち運用できた。だが公共BTとなればその自由度は下がってしまう。足元では繁忙日の続行便が制約を受け、中長期的には新規参入が制限され業界の活力が失われるリスクがある。

まあそれでも、(高速ツアーバスからの「移行組」を含む)高速バス事業については、なんとか調整してうまく乗り切っていくだろう。現に、高速ツアーバスからの移行の際、諸般の事情で、彼らは東京駅や新宿の停留所において続行便の設定が大きく制限されることになったが、現在では、繁忙日は複数停留所にパラレルに配車(運輸局への届出が必要なケースと不要なケースがある)するなどし、事実上、続行便の台数を確保する方策を見つけ出している。しいて言えば、そのようなケースに備え、今回の大崎もそうだが、郊外の駅前なども含め、二番手の停留所をどういう風に確保、維持するかという工夫は必要になろう。

むしろ不透明なのは、今後増加が見込まれる個人向けバス商品の発着だ。邦人客、訪日客ともに旅行形態の変化が進み、お仕着せの団体ツアーから個人旅行へとシフトが進む。今日の高速バスよりは観光要素の強い、一方で出来合いのバスツアーでもない個人観光向けバス商品が充実すると私は見ている。例えば八重洲に新BTを設置する中央区にとっては、今時点においてインバウンドとは、銀座の路上に貸切バスを止め乗降する団体ツアーのことであるが、新BTが供用開始する頃には、都内のホテルに宿泊し自分なりのデスティネーションに向かうためBTからバスに乗りこむFITを指すようになっているはずだ。

現在進行中のBTの新設計画の容量が、それらを想定せずに決められていたとすれば、こういった個人観光向け商品の発着が路頭に迷う可能性がある。絵空事をと言われるかも知れないが、来春に供用開始する新宿のBTも、構想時点では、その後の高速ツアーバスの急成長も、その彼らが乗合化するなどということも、誰も考えていなかったのだ。

なおそのような新しい商品が、旅行会社が主導するバスツアー(募集型企画旅行)という立てつけで増えていくなら、停留所を確保する法的義務はない。ただそれでは、「集合場所」のわかりづらさや歩道上の混雑、車道上のバスの輻輳という、どこかで聞いたような問題が頭をもたげるだけだし(ましてや主要顧客としてFITを想定するならば、わかりやすさは最優先だ)、「既存」高速乗合バス事業者としては、自らのおひざ元に、高速バスともバスツアーとも判別の難しい個人向けバス商品がどうどうと乗り入れてくることを喜びはしないだろう。反対に、乗合(定期観光バス)ならば、どうしても停留所のキャップが問題となる。

結果として、個人観光客の増加という市場側のニーズと、ますます貴重になっていく都心部での発着枠との兼ね合いの中で、5年あるいは10年後、高速バスやその周辺のバス商品がどのような姿になっているか、今はまだ見えていない。私の立場としては、個人観光客向けバス商品というニーズが増加するという確信と、それが「観光立国」というこの国の次なる生き様にとって重要なパーツだという誇りを忘れずに、多くの関係者にアイデアを提供し、また彼らの間での調整を進めていくのみである。






Last updated  2015.08.14 13:41:11
コメント(0) | コメントを書く

PR

Profile


nalys

Category

Comments

京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
京帝117@ Re:新宿高速バスターミナル(02/21) 私がカウンターに座っていた時は、空いて…

Favorite Blog

新米支配人の奮闘記 solitudineさん

Calendar

Archives

2019.01
2018.12

Keyword Search

▼キーワード検索

Rakuten Card

Free Space


Copyright (c) 1997-2019 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.