506886 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

成定 竜一~高速バス新時代~

全70件 (70件中 31-40件目)

< 1 2 3 4 5 6 7 >

高速ツアーバス

2010.05.03
XML
カテゴリ:高速ツアーバス
既存の路線バス事業者や彼らと深い関係がある方々(愛好家の方も含む)とお話しする度に、今日の高速バスが置かれた環境を、失礼ながらきちんと認識なさっていないことに失望する。何度も繰り返すが、彼らが高速ツアーバスのことをまるで親の敵のように見る気持ちは私には嫌というほどよくわかる。4年ほど前まで自分自身がそうだったからだ。しかし憎さあふれるばかりに、汚いものに蓋をするように目を背け、「なぜ、こうなったのか」「今後、どうなって行くのか」を正しく理解することを怠ってしまえば、既存事業者の高速路線バスの将来に影響してしまう。

例えば<新規参入に対する捉え方>である。たしかに高速ツアーバスという業態は、あまりきれいではない生まれ方をした。高速バスは「乗合」の制度で動いていたのに、先にお隣の「貸切」事業の規制緩和が進み新規参入が増え供給量が増加したことを受け、まるで「屋上屋」のように「旅行」の制度を活用することで擬似的に高速バス事業への新規参入を容易にしたのだ。このことは一体何を意味し、何をもたらしたのだろう?

上で「貸切事業の規制緩和」と書いたが、制度的には1年遅れて乗合事業も規制緩和(需給調整と参入規制の撤廃)が行なわれた事実は、二つの意味で大きなキーになろう。まず忘れてはいけないのは、そのような規制緩和が行なわれたのは何もバス業界だけでないことである。「日本版金融ビッグバン」が行なわれた金融業界を筆頭に、我が国のサービス産業の多くで同様の制度変更が行なわれている。次に考えないといけないのは、そのような考えで乗合バス事業でも制度変更が見られたにもかかわらず、様々な事実上の参入障壁が残り、貸切バス事業に比べほとんど新規参入が見られなかったことだ。

となると、歴史に「もしも」をあえて持ち込むとすれば、高速ツアーバス業態誕生までに起こりえた「もしも」は二つである。一つは「もしも、バス業界でそもそも規制緩和が行なわれていなければ」であり、もう一つは「上記事態(貸切では新規参入が続いたのに乗合では進まなかった)を踏まえ、募集型企画旅行という別のルールを当てはめることで余剰となる貸切バスを高速バスとして運用するというアイデアが実現していなければ」である。まず最初の「もしも」については、「もしも」という仮定自体が成立しないと言っていいだろう。昨今、「事業仕分け」などで行政機関やそれに準じる組織の非効率さが問われているが、その行政も含めた広い意味での「サービス産業」の非効率さが日本経済の癌であり、それまでの護送船団方式を改めることで彼らの競争力を回復すべきと言う考え方はほぼ定着しているからだ。もしもある政権がバス業界の規制緩和を行なわなくとも、次の政権がそれを行なっただろう。バスにたずさわる人は、バス業界の中だけを見て規制緩和がよかった悪かったと自分の意見を言いたくなるだろうが、そもそも他の産業も含め国全体で同じことが行なわれているのだ。バスの運賃(に限らず、電気代や物流コストやら法人税やら)が高止まりすれば、それが日本製品の価格に転嫁され、結果として日本製品の競争力ひいてはこの国全体の競争力に影響するのだ。

次の「もしも」は<高速ツアーバスという業態が定着(第一段階としては関係者がそれを「思いついた」ことであり、第二段階としては行政がそのモデルを容認したことである)していなければ>、という仮定であるが、その「もしもの行方」を、このブログをお読みの方はどのようにお考えだろうか。「もしも高速ツアーバスが定着していなければ、既存の高速路線バスに大きな変化は無く(一歩譲って、成定がよく言っているように成長のチャンスはフイにしているとしても)、少なくとも従来どおりの市場規模を保っていられた」とお考えだろうか。私には、そうは思えない。高速バス事業は収益性が比較的高い(わかりやすく言えば「結構おいしい」)ため、参入を希望する事業者はかなりの数に上る。一方、事実上の参入障壁が多く残り新規参入が難しいとなれば、何が起こっただろう。数少ない「高速路線バス業態での純粋な新規参入」ケースである仙台~福島線(富士交通/桜交通)において公正取引委員会が動いたように、いや、ヤマト運輸が何度もの裁判を通して既存の運送業者や郵政省の既得権と戦ってきたように、全国あらゆる所で、参入障壁を巡る裁判沙汰が多発したことだろう。

その意味で、高速ツアーバスという事業モデルが生まれたことは、新規参入希望者への「ガス抜き」としてちょうどよかった。何度も書いているように、全く異なるルールが生まれたことで、全く異なる事業者が全く異なる市場(つまりこれまで既存の高速路線バスが苦手としてきた大都市間路線)を相手に、「高速バス」事業を展開することができたからである。既存の高速路線バスに影響が全く無かったとは言えないが、ここまではほぼ、老舗の事業者は高速路線バス業態で大都市と地方都市、あるいは地方都市同士を結ぶ路線、新興事業者は高速ツアーバス業態で新規参入し、大都市同士を結ぶ路線(ほんの一部のみ、大都市と地方都市を結ぶ長距離夜行路線)という風に、おおむね住み分けをできてきた。

しかし、これは機会があれば別途詳しく書きたいが、大都市間路線について高速ツアーバスは市場の開拓をほぼ終えつつあり、つまりは、彼らの成長率が鈍化しているということである。ということは、高速ツアーバス各社にとって次のターゲットは明確に、大都市と地方都市を結ぶ長距離夜行路線に他ならない。実はこれまで、高速路線バスと高速ツアーバスが、本当の意味で競合するケースはほとんど無かった。少なくとも高速ツアーバス各社にとって、高速路線バスと競合していると言う意識はほとんど無かった。「高速路線バスが耕し忘れていた、放棄された土地」を勝手に耕していたに過ぎない。しかしこれからはそうではない。既存の高速路線バスが既に定着している地方都市路線に、その高速路線バスをスナイパーターゲットとして狙い撃ちしてくるのである。従来の高速路線バスと高速ツアーバスの関係とは全く異なる本当の意味での「競争」「競合」が、これからスタートする。本当の意味での競争、競合だから、当然、落伍者は出るだろう。だが、その競争が高速バス全体を大きく強くすることもまた、事実である。






Last updated  2010.05.03 10:45:31
コメント(0) | コメントを書く
2010.04.08
カテゴリ:高速ツアーバス
私が今の会社に転職した時点では、サイト上での利用者のメイン導線は「空席検索」ではなく「ディレクトリ型」であった。つまり、「○月○日 ○県→○県 大人○人」と条件を入れて「検索」を押す形ではなく、「関東発」ボタンを押すと関東から各地への路線(「東京→仙台」「東京→大阪」など)が一覧表として表示され、どれかの路線名を押すとその路線に紐づく便の一覧が表示され、さらにどれかの便を選んでクリックするとその便の詳細(内装のイメージ写真や空席カレンダーなど)が表示される仕組みになっていた。当時はまだ高速ツアーバスの企画実施会社の数も少なかったし(ちなみに高速ツアーバス予約事業に参入した際の取扱社数はわずか9社。現在では60社を超えている)、1社ごとの商品数も少なく、利用者にとっては一つ一つの便詳細ページを開いて空席状況や価格、車両タイプなどを確認してもさほど手間ではなかったのだ。むしろ空席検索型にしてしまうと乗車希望日に満席の便は表示されないから取扱商品がシャビーに見えてしまうというこちら側のデメリットの方が大きかった。昔の話ではない。わずか4年ほど前の話だ。

しかし、3年半前に私たちでは、メイン導線を「空席検索」に変えた。東京~大阪間を中心に商品数が一気に増える一方、私たちのサイトの販売力も拡大し満席となる率が高くなっていた。全ての便について一つ一つ詳細ページを開いて価格や内容を確認し、また一覧に戻って次の便の詳細を開けばその便は満席で、また一覧に戻って次の便を開き・・・・・・という動きが利用者に負担となりそうな状況に変わったからだ。だから日付や人数など条件を入力し「検索」ボタンを押すとその日に空席がある便だけが一覧表示され、必要に応じて座席グレード順や価格順などで利用者が並べ替えまたは絞込みできる導線をメインに据えたのだ。もちろん、興味がある便をクリックすれば詳細を確認できるのは以前と同じだ。というより、宿泊予約等、他のサービスとようやく導線を統一できるだけの商品が揃った、ということだった。イメージで言うと、イチゴを買いたい客が、あるお店では佐賀産が350円で、別の果物屋に行ったら長崎産が400円で、次のお店では栃木産が350円で、と価格や見た目(おいしそうかどうか)をいったん記憶して比較し、長崎産と決めたら2番目のお店に戻り購入・・・という動きから、スーパーのイチゴ売り場に行ったら佐賀も長崎も栃木も同じ棚に並んでいて、一目で比較し長崎産を手にとってレジに向かう動きに変えたのだ。

同時に、企画実施会社側での価格設定の方法も変えた。企画実施会社が商品を登録する際、一度登録した料金は原則的に変更できない(販売する座席数だけはリアルタイムに出し入れできる)形で、要するに各社のパンフレット上の販売価格をそのままサイトに登録してもらっていたのだが、この時期からは価格そのものを(理論上は1円単位で)リアルタイムに変動させるようにしたのだ。合わせて、レベニューマネジメント概念を本格導入し、データ分析に基づき各社の価格設定を支援するようにした。

この変更が高速ツアーバス業態全体に与えたインパクトは、私たちが想定していたよりも大きかった。繁忙日には在庫切れ(早々に満席になること)が発生していることはわかっているが片道回送になっては利益が出ないと続行便の設定に二の足を踏んでいた各社が、最初から「ウラ」が回送になることを覚悟で「オモテ」便に思い切った高値を付けて片道輸送で十分に利益が出せるよう工夫するなどし、繁忙日の在庫切れはずいぶんと解消した。さらに私たちでは、旅行業免許も保有する貸切専業のバス事業者に、繁忙日だけの「スポット運行」をしないか提案に回った。ふだんは普通の貸切バス会社だが、連休や年末年始だけ彼ら自身が高速ツアーバスを企画実施し自社のバスを運行させる。自社企画実施とはいえ年に数回の運行のためにチラシやポスターを作るなど無駄なので、全席を私たちのサイトに登録する。もちろん、データ分析に基づき私たちの方から「○月○日は東京→大阪 3台 往路は8,000円 復路は4,200円くらいがベストですよ」といった支援はする。空席検索型の導線なら、その日だけ運行するスポット便であっても画面上は定期運行便と同列に並ぶので十分に予約が入る。平成エンタープライズなど、その形からスタートし定期運行に移行、今や3列シートの高速ツアーバス専用車だけで10台を超える。

高速バス繁忙日はおおむね貸切バス閑散日だから、貸切バス事業者にすれば稼働率向上にとって非常に都合がいい。しいて言えば、旅行業免許は持っていても自社でツアーを日常的に企画実施している会社は多くないから、貸切バスの営業マンが自ら座席表を作成したり夜中に乗車受付を手伝ったりしないといけないが。私自身も何度も新宿や大阪まで乗車受付を手伝いに行った。最初はそこまでして「まずはやってみましょうよ」とお願いしていたのが、そのうち事業者の方から「今度の連休はどこに何台出したらいい?」と相談が入るようになる。一番面白かったのは近所の高校のサッカー部が全国大会に出場するだろうと大量にバスをキープしていたのに予選で敗退したため応援ツアーがキャンセルになり、あわてて高速ツアーバスのコースを設定し最後の1週間で5台を満席にしたことだ。

もう一つ、空席検索型にしたことによる変化は、座席タイプを中心に商品バラエティが一気に増えたことだろう。企画実施会社としては多数の候補からなんとか自社の便を利用者に選んでもらいたいから、座席タイプはもちろんアメニティグッズや朝食付きなど商品の個性を競い始めるようになる。従来の、公共交通機関にありがちな「無色透明」「最大公約数的」な商品から、顧客セグメントに対応した個性を主張し始め、「お客様自身が、バスを選んで乗る時代」が生まれたのである。さらに未だ一部とはいえ、その「選択肢」の中に高速路線バスもようやく入りつつある。

一方、上記の形だと繁閑に合わせて在庫(増発)をコントロールできるのは4列スタンダードタイプだけとなり、現状では高速バスくらいしか使い道のない3列シート車は閑散日に合わせた最低限の台数しか各社持ち合わせていない。結果として繁忙日には上級車両が早々に在庫切れになりスタンダードだけが空席検索結果に表示される、という事態が起こっている。次は何とか、3列シートを各社がどんどん増発設定できるような環境(要するに高速ツアーバスと補完関係になる3列車の使い道)を考えないとなあ。取り急ぎ老舗貸切専業バス事業者や観光型のバスツアーが得意な会社などとアイデアを出し合うことになろう。新しいアイデアを考えるためにブレストをする時は、いつも本当にドキドキする。






Last updated  2010.04.08 18:50:49
コメント(0) | コメントを書く
2010.03.23
カテゴリ:高速ツアーバス
就職活動にあたって私はホテル業界を選び、かつ国内系ホテルチェーンの本社機能に志望先を絞った。その頃から既に「新御三家」を中心に外資系ホテルの方が世間の評価は高かったが、それでも国内系にこだわったのは(英語が得意でない、というような話は別として)、運営受託やフランチャイズなど、実際のホテルの経営主体(社員の所属企業)とブランドが異なる仕組みの元で、自分自身の帰属意識、愛社精神というのが正常に保てるのか、自分なりに心配だったからだ。

大阪で最高級される「ザ・リッツ・カールトン大阪」を例に取れば、鉄道線路を地下化した後の余剰地に阪神電鉄がビルを建て、その中で阪神グループがホテルを経営している。社員は原則、阪神電鉄の100%子会社「株式会社阪神ホテルシステムズ」所属だ。一方、阪神は高級ホテルの運営ノウハウや国内外でのブランドを持たないから、米国の「ザ・リッツ・カールトン・カンパニー」に運営を委託。具体的には、人事権まで持つ総支配人の派遣を受け、その指揮の元、リッツ側が作成した運営マニュアルに基づいてサービスや調理を行なう(阪神側は、売上高等に応じ運営委託費をリッツ側に支払う)。当然、社員の名札にも「リッツ」のロゴが入っており、普通に利用する分には、そのホテリエ(スタッフ)が阪神の社員であることはまずわからない。「ヒルトン」「ハイアット」など一般に「外資系ホテル」と呼ばれるホテルチェーンで、実際に「外資」、つまりそこで働く社員の所属企業が外国資本である例は多くない。「外資系ホテル」ではなく「海外ブランドのホテル」というのが正しい。

当時の私は、例えば阪神や、あるいは小田急(「ハイアットリージェンシー東京」の経営は「株式会社ホテル小田急」)などの社員としてその会社から給料をもらう一方で、お客様の前では「リッツ」や「ハイアット」の制服を着て「ザ・リッツ・カールトンの成定でございます」と胸を張って言えるのかどうか心配だったのだ。それで「いいホテル」「ベストなサービス」をそれで実現することができるのか、生意気にも勝手に疑問視し、「所有」「経営」「運営」を三位一体で行なっている国内系老舗ホテル企業にこだわったのだ。

そのようなホテル企業を選んだことを後悔はしていないものの、その後ホテル経営を学んでいく上で上記の心配が杞憂だったことはよく理解できた。「ホテル経営の三要素」(所有・経営・運営)をあえて分離することの意義は実に幅広い。本日ここでは「いいホテル」「ベストなサービス」を実現するという目的にどう寄与しているかに絞って話を進めたい。

一言にまとめると「甘えの排除」である。上記事例で言えば、仮にリッツ側が、もらっている委託料に満たない分量しか阪神側にもたらすものがなければ(例:リッツ側から大阪に派遣された総支配人が能力不足、とか、世界的にリッツのブランド価値が低迷し海外での集客が少ない、など)、阪神側はリッツ側に委託条件を低下させるよう圧力をかけるだろうし、極端な話、委託契約を延長せず「パークハイアット」等の別ブランドに委託先を鞍替えする可能性を示唆するかもしれない。リッツ側からすればそれは困るから、スタッフがベストなサービスを行ない売上や利益がより増加するよう必死の支援をする。逆に阪神側が手を抜けば(例:人員不足でサービスレベルが低下、とか、カーペットが擦り切れているのに補修しない、など)、リッツ側は「ザ・リッツ・カールトンのブランド基準に達しないからすぐに改善しろ」と言うだろう。極端な場合、ブランド供与を断ち切り、大阪でのリッツブランドの展開は他の企業とパートナーを組んで行なうぞ、とプレッシャーをかけることもあるだろう。

互いに「いがみあう」ことがいいと言っているのではない。しかし、同一の会社が所有も経営も運営も一貫して行なえば、(その利点も多くあるものの)どこかに甘えが出る。総支配人の人選も、食材仕入れやスタッフ配置等、現場でのコスト管理も、最終的には一つの会社、一人の社長の判断になる。「売上が伸びないから、利益を確保するために食材のレベルを下げてコスト削減しておくか」という誰かの意見に対し「それをしてしまうとウチのホテルのブランド価値を保てないよ」という対立意見は出てこなくなってしまう。

学生時代の私自身がそう感じたように、一つのホテルをよりよいホテルに育て上げるにあたってこのような「牽制」関係を持ち込みことは、「和」を重要視する日本人にはとっつきづらい印象を与える。一つの会社がホテル全部を司れば全員で一丸となって邁進するのに…とつい考えてしまう。しかしよく考えてみれば、そのホテルがよいサービスをしてブランド価値を上げ売上や利益を増やすことができれば運営側(米リッツ)にも経営側(阪神)にもメリットがあるわけで、お互いに大切なパートナーなのだ。大人の企業であれば、お互いに得にはならない足の引っ張り合いなどしない。いがみあうデメリットより、より高めあうメリットの方が大きい。それなら「耳が痛い」ことをお互いに言える関係は重要だ。

「所有」「経営」「運営」の分離は、これ以外にもまだまだ多くの利点がある。その利点を高速バスにも、と考えるなら、それは高速ツアーバスに近くなる(もっともそれは「理念」としての高速ツアーバスであり、現状が理想に遠いことはお恥ずかしい限りだが)。少なくとも既存事業者では、高速バスの運行と営業を別セクションにすることがその一歩となるだろう。例えば私の会社では、毎月末、集客が目標に満たなければ各サービスの事業側責任者が全社員の前で詫びるし、システム障害などがあればシステム側責任者が同様に詫びる。各自に与えられた責任範囲を全うできていないからだ。だが一人の課長が「運行」も「営業」も両方に責任を負えば、それぞれに甘えが生まれる(以前は「運行だけ」考えておればよかったのかも知れないが)。実は電鉄会社には、百貨店やホテルなどマーケティングのセンスが求められるグループ会社も多く、新卒社員は数年目に「運輸系」「流通系」などと振り分けられるケースが目立つが、「高速バス営業課長」のようなポジションができ、(「運輸系」ではなく)「流通系」の有望な若手のキャリアパスの一環として定着するようであれば、今より大きく前進だ。航空会社の組織・人事システムなど、参考にできるものはたくさんある。






Last updated  2010.03.23 18:47:36
コメント(0) | コメントを書く
2010.03.19
カテゴリ:高速ツアーバス
昨年の高速ツアーバスの年間輸送人員は、年間400~450万人だったと推計している。2010年はその約30%増を目指している。業界全体の数字は集約できていないが、私のサイトに限って言えば今年に入ってから対前年20%台半ば増ということで、目標には少し不足だ。そもそも2007年は前年に対し約80%増、2008年は前年に対し約50%増、そして2009年は約30%増と、成長率は着実に鈍化してきている。ポートフォリオ別に見ると、全体の40%近くを占める首都圏~京阪神の成長率が10%前後の増加にとどまっている。その次の規模の首都圏~名古屋、首都圏~仙台が20%を切る成長率。上記3路線で全体の70%ほどのポーションを占めているから、他の路線(首都圏~青森や京阪神~鹿児島など)がいくら高い成長率を見せても全体の成長率は上がってこない。

私たちの会社が高速ツアーバスの予約受付事業に参入した2005年11月の時点で、全体の60%以上を首都圏~京阪神が占めていた。理由は二つ。高速ツアーバスという業態自体が、京阪神からTDRに、首都圏からUSJに観光客を送るというバスツアーの延長線上で生まれたため、元より同区間を中心に展開されていたこと。もう一つが、路線ポテンシャル(※)に比べて既存の高速路線バスが需要の掘り起こしを十分にできていなかったことだ。いつも書いている通り、既存事業者は大都市でのマーケティングがおおむね不得手だ。また他の同距離の夜行路線に比べて路線ポテンシャルが非常に大きいことから、何往復かを採算ベースに載せただけで「ドル箱」だと満足してしまっていたのである。
※「路線ポテンシャル」=「同区間の、鉄道・航空・自家用車などを含む総移動量」×「距離や競合条件等を勘案した上で、高速バスが本来占めるべき市場シェア」。「本来占めるべきシェア」は、例えば長距離になればなるほど所要時間差が大きくなるためバスは不利なので下がっていくし、鉄道側の直行列車の有無とか、鉄道駅と市街地中心地との距離、などの条件で変動する。

だから私たちでは、まず徹底して首都圏~京阪神を育て上げる戦略を採った。企画実施会社側で価格をリアルタイムに変動させられるようシステム改修すると同時に、私たちの側で徹底したデータ分析を随時行なって各社に情報をフィードバックし適切な価格設定をサポートすることで高速バスにおけるレベニューマネジメントの手法を確立。自社で旅行業免許を保有する貸切バス事業者に対し自社企画・自社運行のスタイルを提案し、商品ラインの拡充を急いだ。あわせて、メールマガジンやポイント付与キャンペーンなどウェブならではの手法で新規需要を開拓した。2007年、同区間の伸び率は最大で対前年3倍を超えた。その成功を踏まえ、同一の手法を2番手にあたる首都圏~名古屋、首都圏~仙台にも展開。実質初年度にあたる2006年に比べると、2009年の高速ツアーバス各社への送客人数は全国で3.5倍に増加している。

だが冒頭に書いたように、成長率は着実に鈍化しつつある。これも理由は二つ。一つは、全体の規模が大きくなったために、成長「率」で見るとどうしても数字が小さくなってしまうことだが、問題なのはもう一つの「頭打ち感」の方である。大都市間路線には「既存事業者が耕し忘れていた広大な空き地」があったために、いわば敵がいない状態で簡単に需要を掘り起こすことができた。その過程で一部の高速路線バスに影響を与えたことは確かだが、大都市間路線の高速バスのシェアは以前の数倍にまで成長したことも間違いない。しかし、その「空き地」はそろそろ尽きつつある。

残る「空き地」は、大都市~地方都市・観光地間の路線の、大都市側の潜在需要である。国交省のデータを分析し、高速路線バスの輸送シェア(ある区間の総移動量のうち、高速バスを使って移動している人の率)を方向別にソートしてみると、地方側居住者のシェアが大都市側居住者のシェアの約2倍となっている。中央高速バスにたとえて言うと、首都圏から山梨・長野に向かう出張者や観光客が(鉄道や自家用車ではなく)高速バスを選んでいる比率に比べ、長野・山梨から首都圏に向かう出張者や買い物客が高速バスを選んでいる比率が約2倍なのである。大都市側の、特に観光客については、間違いなく掘り起こし余地がある。これは長距離夜行路線でも同じ傾向なのだ。

だからこそ私たちは、高速路線バスの取扱いをさせてもらい乗車率の向上に役立ちたいと、高速路線バスを運行する既存事業者にご提案している。ただそれも、「予約サイト」の立場だからできることだ。高速ツアーバス各社の立場に立てば、「おいおい、我々を置いていくのかよ。一緒に成長させてくれよ」ということになるだろう。ただ、ほとんどの企画実施会社はウェブによる集客だけに頼っている。大都市間のような「空き地」ならともかく、既存事業者が地元での圧倒的な存在感から市場の掘り起こしを済ませ、それを元に多頻度で便利な高速路線バスを運行している区間に、ウェブによる集客だけで後発参入するのはかなり難しい……その意味で高速ツアーバスは「踊り場」に差し掛かりつつある。

さて、既存事業者やその関係者の方で、ここまで読んで「そうか、憎きツアーバスは頭打ちなのか。一息つけるな」と感じた方、どれくらいいらっしゃるだろうか。もしいらっしゃるなら、その考え方、その危機感不足こそが高速路線バスを、いや路線バス業界全体をこの体たらくに導いてしまったことを大いに反省すべきである。頭打ちなのは「これまでの」高速ツアーバスの事業モデルでしかない。高速ツアーバスの第1フェーズは(安全面等のブラッシュアップは除き、ビジネスモデルとしては)ほぼ完成に近づきつつあるが、高速ツアーバスの挑戦の「第2フェーズ」がこれからスタートするだけのことだ。そのための戦略、必要なパートナー……一つ一つ組み立て上げることこそ私たちの腕の見せ所だ。

私のサイトでは、高速路線バスの取扱いも今後順調に増えていくだろうが、高速路線バス“だけ”の味方をするつもりもまた、いっさいない。路線やツアーといった業態を問わず、高速バスの「知恵袋」として取引先にアイデアを提供し、かつ高速バスに1人でも多くの利用者を掘り起こすことこそ、私たちの役割である。業界全体でさらに成長できると確信しているからだ。「成長なんてしなくていいから、とにかく波風は立てないでほしい」などという後ろ向きの事業者やその担当者なら、申し訳ないが、お役に立てることはないだろう。もちろん、高速ツアーバス企画実施会社でもそんなメンタリティの会社なら同様だ。私たちは今後とも、「1人でも多くのお客様に自社のバスに乗ってもらうにはどうすればいいか」を本気で考えている会社とだけ、お取引させてもらえればそれでいい。






Last updated  2010.03.19 19:19:26
コメント(0) | コメントを書く
2010.03.18
カテゴリ:高速ツアーバス
先日、学部学生さんの卒業論文について書いたばかりだが、別の大学の大学院生さんからも修士論文が届いた。こちらは、バス産業の(特に規制のあり方についての)研究では有名な教授(私も日ごろよりいろいろ勉強させていただきお世話になっている先生だ)の研究室に所属する学生さんである。『高速バスと貸切形態ツアーバスの競争条件適正化に関する研究』。タイトルを読むだけで先日の卒業論文とよく似ている。

先日のものは、指導担当の准教授が主に環境学や交通でも安全面がご専門の先生ということで、どちらかというと「安全性の公平な比較と、それに基づいた今後の制度の提言」という趣旨だったのに対し、こちらの先生はずばり「規制」「制度」がご専門だから、より営業面、制度面での比較と提言になっている。ただ、高速路線バスと高速ツアーバスという近いけれども異なる業態を比較し今後のあり方を提言している点では非常によく似ている。もちろん、似た論文を2篇続けて目にすることになったのは決して偶然とは言い切れないだろう。それだけ、この問題が注目を集めているということなのだ。

そしてお二人とも、きわめて公平に、客観的にこの問題を捉えているという点で共通している。特に制度面で比較をする前提として、既存事業者の側からよく耳にする「競争条件が不公平→高速ツアーバスの方が廉価にサービスを提供できる→だから高速ツアーバスに乗客が流れている」という論理が正しいのかどうか、この学生さんは冷静に分析している。総合予約サイト(例えば私のサイト)が<インターネットの検索エンジン対策を行うことにより潜在的利用者を誘導する。また、居住地や嗜好に合わせたメールマガジンの発行、実際の利用者の感想をホームページに記載するなどの戦略をもち、高速バスとは別の方法で市場開拓を行った。その結果、現在のツアーバス増加につながった>とした上で、<都市部ではバス事業者が多く1社あたりの事業規模は小さい。事業規模の小ささ故に、マーケティング能力には限界がありテレビでコマーシャルを流すようなことは不可能だろう。ツアーバスは中小の事業者が多いこともあり、事業規模はさらに小さい。しかし、インターネットを巧みに使いこなす旅行社や商品取扱者の存在により、ここまで成長してきたと言える>と、ウェブの活用度合いの差が高速ツアーバス成長の大きな要因であることを突き止めている。逆に、駅前一等地に停留所を確保でき、かつ予約なしの当日発券にも対応できる高速路線バスの有利さも明記している。

また、誤謬の典型として私がよく引き合いに出す「内部補助理論」についても、<高利益路線が他の高速バスやツアーバスに奪われて赤字の乗合バスの内部補助が不可能となると言う点である。もっとも、赤字の乗合バスの維持は内部補助におけるのはあまり好ましいと筆者は考えていない。それは高利益路線がいつまでも続くわけではないという点に尽きる。赤字の乗合バスについては内部補助ではなく、運行を民間委託するなど経費を節減しつつ、市町村による運行が望ましい>としており、きわめて客観的な書きぶりである。これは先日の卒業論文も同様で、<この内部補助そのものに関しては元来から議論があり、高速バスの利用者がなぜ赤字路線の赤字を運賃として負担しなければならないのかという意見がある。私の考えはその意見と同じであり、加藤(2006)p34 ※にある様に、赤字路線が地域振興のために必要であるならば、公的補助を検討すべきではないかと考える>としている。ちょっと先まで考えれば内部補助に頼った事業のあり方がいかに不安定か、研究者の先生方はもちろん学生さんでも理解できているのに、一生バスで生活していくはずの事業者の社員自らが将来の自分たちの首を絞めるような論理からなぜ脱却できないのか私は理解できない。
※ここでいう「加藤(2006)」とは名古屋大学・加藤博和准教授の論文を指すが、恐らくは誤記で「加藤(2009)」とすべきではなかったかと思われる。『運輸と経済』2009年3月号「特集・新時代の高速バス」に掲載された同先生の論文『日本における高速バスの現状と課題~ツアーバス台頭を踏まえて~』p34ではないかと。ちなみに加藤先生ご本人は「誤植を見つけるのが特技」だから、もし本論文にお目通しされていれば既にお気づきかも知れない…。

話を戻すと、そのような背景を冷静に分析した上で、本学生さんは新しい高速バスの制度のあり方についてきわめて前向きな提言をしている。私がこれまで拝見した中ではもっとも私自身の腹案に近い内容となっている。だから逆にここでは詳しく紹介できない。今の私の立場から私案段階で発表してしまうのは、その案の良し悪し以前に実現が遠のく状況だからだ。機が熟すまで私の中にとどめておき、タイミングを見て正しい手順で発表するよりないだろう。しかし一般論として言えることは、【1】EUなど諸先進国では「平場の路線バス」「貸切バス」の他に、名称はともかく「高速バス」に相当する制度的分類があること、【2】高速バスには「繁閑の差」がつき物で(かつ高速バス繁忙日はおおむね貸切バス閑散日でもあり)、繁忙日には余裕のある貸切車を活用することで多くの乗客のニーズに応えられること、【3】あえて「企画・催行」と「運行」とを分けることで(もちろん、事業者の希望により両方を担うことはかまわないが)、相互に役割と責任範囲を明確にでき、双方がより専門的な取り組みができること。以上を踏まえ、誰かの既得権益を守るための規制ではなく、高速バス全体の発展に寄与する制度であるべきだということであろう。

将来的に新しい制度を模索するとして、従来の高速路線バスのあり方だけを「正」とするのは避けなければならない。もし高速ツアーバスという事業モデルが確立していなければ、もしそこに競争という概念が取り入れられておらず結果としてウェブマーケティングの活用に消極的なままであったら、例えば今日、例えば明日、私のサイトなどから予約して各社の高速ツアーバスに乗る、万を超える数のお客様はどうなっていたのか? その数は大都市間路線に限って言えば高速ツアーバス誕生前の高速路線バスの輸送人員など軽く超えた数字なのである。これだけの数の取りこぼしにも気づかず、従来どおりの業界秩序が守られ従来どおりの事業者が従来どおりのやり方で高速路線バスを運行することを指して「バス業界のためにはその方がよかった」と言うのなら、そこでいう「バス業界」とは誰のものなのか? 繰り返すが高速ツアーバスの現状を満点などというつもりは私にはさらさらないが、高速路線バスの従来の姿だけを「正」として一切の変化を拒む姿勢とは、私はずっと戦い続けたい。1人でも多くのお客様が高速バスを利用してくださることこそ、私たちの希望なのだから。






Last updated  2010.03.18 18:28:13
コメント(0) | コメントを書く
2010.03.15
カテゴリ:高速ツアーバス
縁あって、ある大学の経済学部の学生さんの卒業論文を読ませていただいた。『ツアーバスと高速バスの現状とあるべき姿 ~ネガティブ情報を用いた安全性の比較と運輸安全マネジメント制度への提案を通じて~』。もちろん一学生さんの論文であって、よく目にする研究者の皆様のそれに比べると不足している部分もあるだろうし、事業に直接タッチする者から見ると実態と合っていない点もないわけではなかったが、客観的、かつ真摯にこの問題に取り組んでおられた。本学生さんはもちろん、指導担当の先生のことも私は存じ上げなかったのだが、この論文を読んで何かを感じるのは誰も同じらしく、たまたま目を通した私の知人がわざわざ送ってくれたものだ。そして私も、研究者ら多くのバス産業の関係者に転送させてもらった。

本学生さんは、あずみ野観光バスのスキーバス事故や近鉄バス「フォレスト号」の横転事故などの報に接し、この問題に興味を持ち始めたそうだ。特にあずみ野の事故は彼の身近なところで起こったようで、それがこのテーマを選んだ大きなきっかけらしい。当時は、制度面で共通するスキーバスと高速ツアーバス(この二つは運用面では大きく異なるのだが…)が同一視され高速ツアーバスに対しても否定的な報道が相次いでいたのは確かだ。一方で彼は、「高速(路線)バスは安全、ツアーバスは危険」と安易に決め付ける報道のあり方に疑問を抱き、客観的な評価を本論文で試みている。

その客観的評価の基準として用いたのが、国土交通省が公表している、事業者ごとの「ネガティブ情報」である。ただ高速ツアーバスについては、実際にどの事業者が運行しているかは公開情報からだけでリスト化できるはずもなく、実際に高速ツアーバス各社の集合場所に繰り返し足を運び運行事業者を特定したとのこと。このあたりの熱心さには本当に頭が下がる。一方、「ネガティブ情報」から事業者ごとの事故・違反点数をデータで収集し、それを分析することで「必ずしも高速路線バス事業者に事故・違反が少なく、高速ツアーバス運行事業者に多いというわけではない(むしろ、一部の事業者分類においては逆転している)」という結論を導いているが、まあ、事故・違反点数だけで比べると、事業者の規模が傾向として圧倒的に大きい高速路線バス側に不利にはなろうから、私もこれを持って「ほらみろ、高速ツアーバスが危険という考え方は間違っている」と吹聴するつもりは一切ない。大切なことは、客観性をもってこの問題に取り組むその姿勢なのだ。

いわゆる「内部補助の問題」(高速バスの利益が圧迫され平場の路線バスの縮小を余儀なくされる問題)についても、本来的には事業者は内部補助のスタイルを転換すべきとしつつ、<現実にはそのような転換はなかなか上手く進んでおらず、高速バスの採算悪化による赤字路線の廃止という問題を抱えたまま、ツアーバスとの価格競争に望んで>いると、本来あるべき姿とそれについていけていない現実とを公平に目配りしている。安易に「高速バスの競争激化が地域の交通ネットワークを崩壊させている」と叫ぶ人には、そのような発言が結果として乗合バス事業者や地域住民にとって長い目でプラスになるのか、該当部分だけでいいから本論文を読んだ上で考えていただきたいくらいだ。

先日、私の仕事に好意的な既存事業者の経営者の方から「高速路線バス取扱は増えそう? 営業は順調?」と尋ねられ、具体的な事業者名はお伝えできないながら「おおむね順調です」とお答えした後、「でも」と付け加えた。「でも、地方の事業者さんを中心に、私の会社がマーケットプレイス(総合予約サイト)だということを未だ認識してくださっていない会社も多いようで……。私の会社が高速ツアーバスを自ら企画実施していると勘違いなさっているんですよね」と申し上げたところ、「えっ? そんなこと、サイトの画面見たら簡単にわかるじゃない!?」

おそらく、この一言に集約されていると思う。既存事業者が本当に高速ツアーバスに負けたくないと考えるなら、たとえ5分間だけでもサイトを見るはずだ。面倒でもなければ、コストがかかるわけでもない。私のサイトの画面を見れば、ウィラー・トラベルもオリオンツアーもキラキラ号も(そして一部の高速路線バスも)予約が取れることはすぐ理解できるはずだ。自分たちの事業を大きくしよう(少なくとも、これ以上小さくならないようにしよう)と本気で考える人なら、ライバルたる高速ツアーバスに自分で乗ってみるだろうし、そこまではともかく、サイトくらいは見るはずだ。ウェブを使わない年配の経営者の方であったとしても「そのツアーバスなるものは、どんな会社がやっているんだ?」と部下に尋ねるのが普通だろう。

それが、現実には上記実態なのである。お題目のように「ツアーバスは安全性に問題がある」「地方の路線バスを縮小させている」と叫ぶことが、失礼ながら、自社の高速バスの将来に「本気」である証だとは思えない。もちろん必死で新しい取り組みを行なっている事業者も、担当者レベルはそれを望みながら会社全体ではそうはいかず歯がゆい思いをしている課長クラスや若手も私は多く知っているが、一方で、自分たちの数字が悪いことを高速ツアーバスのせいにして(それも最近は「1000円高速」の“おかげ”で下火だが)、会議の言い訳に使っているに過ぎない担当者も多く知っている。「昨日と同じようにバスを走らせていればさえ昨日と同じようにメシが食えるんだから、余計な話を持ち込まないでくれよ」と迷惑顔の担当者には、まずはぜひ、本論文を読んでいただきたいものである。(内容より先に)一学生さんでさえバスの将来をここまで真摯に考えてくれているその姿勢を学んでいただきたい。ましてや、道路運送法が改正され需給調整が撤廃されたとはいえ、主に「バス停の権利」を中心に実態として参入障壁が大きく残る寡占業界なのである。寡占主体の側が変化を拒み結果として市場をシュリンクさせている罪深さを、認識すべきである。

本学生さんに卒業後の進路を尋ねると、バスとは関係ない某一流企業の名前が返ってきた。このような優れた学生さんにも「一生バスにかかわる仕事をしよう」と選んでもらえるような業界に、変わっていくことはできるだろうか。






Last updated  2010.03.15 18:13:20
コメント(4) | コメントを書く
2010.03.11
カテゴリ:高速ツアーバス
本日から、富山県のイルカ交通の高速ツアーバスの取扱を開始した。イルカ交通といえば、乗合バス事業にまったくの新規参入でありながら2008年に高速路線バス(高岡~名古屋線「きときとライナー」)を運行開始したことが特徴的である。私も「きときとライナー」のニュースを聞いた際には大変驚いた。道路運送法が改正されて以後も、乗合バス事業については事実上のさまざまな参入障壁が残り続けたため、しばらく高速路線バスへの新規参入は見られなかったからだ。そのあたりは東京海洋大の寺田先生が詳しいが、既存事業者の越境的新規参入や、既存事業者の分社子会社による参入などを除くと、高速路線バスへの純粋な新規参入は富士交通/桜交通、おびうん観光(ただし既存事業者と共同運行)、それにこのイルカ交通くらいだろう(空港連絡バスを入れると、高知駅前観光の例もある)。

本ブログの読者の方にはイルカ交通は人気なのか、たしか2度ほど、「イルカ交通を取り扱ってください」というようなコメントをいただいた。特に2度目のときは、ちょうどイルカ交通と細かい打ち合わせを進めていたタイミングだったから、しかし個別の案件の進捗状況をこのブログに書くわけにはいかないから、なんとお答えしたらいいか迷った記憶がある。

私たちが同社とお話をし始めたのはずいぶん前の話になるのだが、双方でかなりゆっくりとお話を進めてきた。上記のようにファンの方にはずいぶん人気のある同社だが、やはり既存事業者の反応を考えると、大手事業者の乗合商品よりも先にイルカ交通の商品を取扱うことは私たちにはずいぶんとリスキーだったからだ。イルカ交通の経営者である村西会長は、既存事業者の既得権益に風穴を開けようというよりは、新しいことにいろいろ取り組むのが本当に大好きなだけ、というメンタリティだと思われるが、既存事業者のなかには、「新しいことに取り組む」会社自体に極端にネガティブな反応を示す方が多い。

今回は、イルカ交通の「次の、新しいこと」として、東京線の高速ツアーバス「ドルフィンライナー」をまずは毎週1回、自社で企画・運行することになり、私たちはその販売のお手伝いだ。空港連絡などを含む、比較的短距離の路線や昼行路線は高速路線バス形式で、比較的長距離の路線は高速ツアーバス形式でと使い分けるのは、上記の高知駅前観光のほか、サンデン交通、イーグルバスと共通で、当面(つまり新制度ができるまで)のひとつのあり方ではないかと思われる。高速路線バス名古屋線「きときとライナー」の取扱については今の時点でははっきりと書けないが、実現したら当然この場でもご紹介することになるはずである。

私たちでも乗合商品の取扱が開始しそれが大きく報じられ、それがさらに拡がりを見せそうな手ごたえを実感している今のタイミングでイルカ交通の取扱を開始するというのは、ちょうどいいタイミングだったわけだ。しかしまあ……せっかくこのように地方の新興バス事業者のチャレンジをお手伝いするという前向きなニュースのはずなのに、「業界の秩序」なるものに配慮しなければならないこの業界の実情を考えると、いやいや、悔しいというか、悲しい思いさえしてくる。

ぜんぜん別の話になるが、私のサイトで高速路線バスの取扱を開始したことを聞いて、ある高速ツアーバス企画実施会社の担当者が、「ウチら、これからは“路線さん”とも戦うことになるんですね」と言っていた。その会社はかなり手広く高速ツアーバス事業を行なっておりその担当者とも私が今の会社に入社して以来の付き合いだから業界の「古株」に当たるわけだが、その彼の上記発言は、高速ツアーバス各社は高速路線バスと戦っているつもりはこれまで一切なかったことをよく表わしている。昨日書いたように、高速ツアーバス各社は新しいマーケット(例えば私のサイト。もちろん各社の自社サイトも含めたウェブマーケティングの世界、といってもいいだろう)において、他の高速ツアーバスと毎日、いや毎時毎分競争しているわけで、“路線さん”のことなどほとんど視野に入っていなかったのだ。高速ツアーバス各社は新しいマーケットを求めて、かつその新規マーケット内で少しでも大きな存在感を得ることを目指して競争し、その競争がさらにマーケット拡大を加速させてきた。

高速路線バスの世界では、ダブルトラックがまったくないとはいえないものの、おおむね事業者同士の競争はない。いろいろ確執?がないわけではなさそうだが、とはいえ既存事業者同士は相互不可侵の関係だ。それに慣れている既存事業者の皆さんは、高速ツアーバス各社(と、イルカ交通のような新規参入事業者)が一致団結、束になって攻めてきているような印象をお持ちのようだ。しかし実際に高速ツアーバス各社は、“路線さん”のことを意識する前に、むしろ自分たちの世界での競争に忙しい。その競争こそがマーケット拡大を誘引しているから、外から見れば「一致団結、仲良くやっている」と見えるのかも知れないが、高速ツアーバス企画実施会社同士は一義的には競争相手だ。既存事業者から「成定さんの所が4条の高速バスを扱ったりしたら、ツアーバス会社は怒らないの?」などと聞かれることも多いが、高速ツアーバス各社は競争の中でビジネスをするのが当たり前であり、私のサイトで高速路線バスを扱っても彼らにとっては既に数多いコンペティターが1社増えるだけに過ぎない。既存事業者の側から「ツアーバス陣営は」などという発言を聞くたびに、両方の「陣営(?)」の気持ちがわかる私には、あまりにも一方的にかつ過剰に意識しているのが見えて、少し悲しいというか、むしろ滑稽にも見えてくる。

まあ、どのような背景があれど、イルカ交通のような元気な新興事業者のお手伝いができるというのはうれしいことだ。とにかく面白いこと、新しいことをするのが大好きなイルカ交通の村西会長が次はどんなアイデアに挑戦なさるか、楽しみに待っていよう。






Last updated  2010.03.11 19:53:23
コメント(0) | コメントを書く
2010.01.15
カテゴリ:高速ツアーバス
一昨日、取引先(高速バス・空港連絡バスの運行会社や高速ツアーバスの企画実施会社)向けの「管理画面」上で新機能を導入した。「カスタマイズページ」。さっそく1社使ってくれたのでご紹介したい。

バスを予約しようと私のサイトを訪れた利用者は、乗車日・乗車地→下車地・人数を指定して「空席検索」を行なう。そうすると該当日に該当区間で空席がある便の一覧が表示される。その「空席一覧」上では、より細かい乗下車地(東京駅か新宿か、など)と出発・到着時刻、それに価格(運賃または料金)などが表示される。さらに基本情報に加え、「3列シート」「トイレ付き」「アメニティ付き」「女性専用」といったサービス内容を示すアイコンと、1行の「キャッチコピー」も表示されている。平日の首都圏-京阪神などでは80もの商品が並ぶから、利用者はその中からまずは「興味がある」商品の商品名をクリックし「商品詳細ページ」を開く。そこでは、座席やアメニティグッズのイメージ写真や、詳しい「セールストーク」など、より詳細な情報を見ることができ、いくつかの商品を比較検討のうえ最も自分に合っていそうなバスを予約する。これが従来の流れだ。

ちなみに、もし乗車日や人数を指定しての「空席検索」機能ではなく、「路線一覧・商品一覧」から好みの商品を選ぶ形だと、リアルタイムの価格変動や、ここまで多彩な商品ラインナップは生まれなかっただろう。首都圏→京阪神で80の商品が並んだとして、「A社の3列シート」のページを見たら希望の乗車日は8,000円で、「B社の3列シート」を見たら希望の日は満席で、「C社の4列シートは6,000円」で…と各商品ごとにページを開かないと、希望の乗車日に空席があるか、価格はいくらかを確認できないようでは、利用者に大きなストレスがかかる。従来の高速路線バスの「ある区間にはせいぜい1~2路線」という状況ではそれで問題なかったし、価格変動しない状況でもそれで問題なかったが、多数の商品が並び、かつそれがリアルタイムに価格変動するようになればそれでは不十分だ。「検索」という機能を導入したことで利用者はバスどうしを本当の意味で比較しながら予約できるようになったし、それが高速ツアーバス各社の商品作り(ビビッドな価格変動にしても、また多彩な座席・商品ラインナップにしても)を大きく変えたことは間違いない。

これまでの紙のパンフレットや時刻表であれば掲載できる情報量に限界があるが(あるいは多くの情報を掲載しようとすると逆にわかりづらさを招くが)、ウェブであれば、より詳しい情報を知りたい人はどんどんクリックして深い階層まで情報を見に行けばいいし、逆に使い慣れている人はそこまで見る必要もなくさくさくと予約すればいい。そうなると、情報量は多いに越したことはない。一方で、ウェブページを作るのは決して簡単ではない。デザインのセンスも必要だし、そのデザインをウェブ上で表現するための技術的な知識(HTMLタグなど)も必要だ。通常のバス事業者や旅行会社なら、専門業者に依頼して作ってもらうことになる。

そこをなんとかしようと考えたのが、今回の「カスタマイズページ」だ。私の会社のデザイナーが、数点の「テンプレート」(雛形)を用意した。各社は、ふだん在庫や価格をコントロールするための「管理画面」を通して、例えば「画像1」のところにバスの外観写真を、「画像2」のところにアメニティグッズの写真を、「テキスト1」のところにワープロ感覚で「○○バスの自慢は…」などと書き込めば簡単にウェブページが出来上がるように準備したのだ。言ってみれば、このブログを書いているのと同じ操作感覚である。各社は、最大10ページまでカスタマイズページを表示することができ、利用者が多数の候補の中から最終的に1つの商品に絞って予約するまでの様々なステップで、このページを参考にすることができる。ずっと申し上げてきた「バスを選んで乗る時代」に向けてのさらなる一歩といこうとである。

<一例  MKの「カスタマイズページ第1号」。まず公開されたのは1ページだけでそれもまだまだ「手作り感」が見られるが、今後リアルタイムに加筆修正可能であるしページ数も順次増えていくだろう。このページは、例えば、MK便の「商品詳細ページ」の左上に設置された「会社案内」ボタンなど様々な箇所からリンクされている。※モバイルでは表示されません>

同機能は、私のサイトの宿泊(ホテル・旅館)予約部門からの横展開(ぱくり)だ。実は数年前にこの機能をホテル・旅館に提供開始した際、ビジネスホテルや普通の旅館の間では「何も書くことがない」という声が大きかったのだという。それどころか高級旅館でさえ、「伝統と格式」「心のこもったおもてなし」「新鮮な素材を使った料理」などいかにも典型的な決まり文句ばかり並んだ。しかし今は違う。普通のビジネスホテルや旅館や民宿が、自分たちの「売り」は何なのか真剣に見つめなおし、それを積極的にアピールするように変わっている。

単純にウェブ上での情報量を増やすだけなら、従来どおり業者に依頼して「きれいなホームページ」を作ってもらえばいい。しかしそれではコストも時間も必要だし、自社サイトへの集客にもコストがかかる。本当に現場で商品を考えたり在庫をコントロールしているような担当者自身が、自分たちの「売り」を真剣に考え、業務の合間などにちょこっと管理画面を触って自分たちのページを修正していくような雰囲気になって欲しい。逆に言うとこれからは、「自分たちの方からお客様にアピールする」という積極的なマインドを持たない会社ならば、数多くの競合のなかで埋もれてしまうことになる。当然、私としては、高速路線バスを運行する既存事業者の皆さんが、安全性や信頼感も含め、この機能を使って自社の高速バスの魅力を積極的に発進していただきたい。それを彼ら自身が(業者任せではなく)管理画面から操作するようになって欲しいのである。






Last updated  2010.01.15 18:30:52
コメント(0) | コメントを書く
2010.01.12
カテゴリ:高速ツアーバス
新年のビジネスが本格的に動き出したというか、連休明けに出社するとアポイントやご取材のお申し込みのメールが山ほど溜まっていた。会社のスケジューラ上でアポイントがどんどん増えていくのは「仕事をしてる気分」になってなんとなく嬉しいのだが、そこに既存事業者の名前が並ぶのはもっと嬉しい。それに、街でバスに出会った際、最近、それらの中に「取引先」(東京空港交通)や、「まもなく取引先になりそうな事業者」(会社名は言えないけど)の比率が増えてきたのもちょっと嬉しい。

そんな時にはつい車内を見上げて乗車率をチェックしてしまう。もっとも、これは学生時代からの私の癖だ。バス好きの友人たちと高速バスを乗っていて対向車線の高速バスとすれ違うと、車両タイプなどそっちのけで「どれくらい乗っているか」をチェックしてしまう(バスを乗り歩く友人など限られているから、対向する高速バスの「車両チェック係」「方向幕や運行ダイヤから行き先を判別する係」などに自ずと「役割分担」が進むが、その意味では私はもう何年も「乗車率チェック係」だ←マニアックな話で恐縮です)。これまでなら、乗車率の低い高速バスとすれ違ったりすると、「もったいないなあ。なんとかあと数人でも乗ってくれないかなあ」と漠然と悔しさを感じていたのが、今だと「あの路線を扱わせてもらえたら、1便あたり何人増やせるかな」と真剣に考え込んでしまう。その路線を売るためにはこうやってああやって…と妄想はふくらむ。

よく既存事業者の皆様は、高速ツアーバスを指して「あの料金でよくやっていけるな」とおっしゃるが、私に言わせると、高速路線バスこそ「あの乗車率でよくやっていけるな」という感じだ。つまり既存事業者の皆様は、どうも「乗客数を増やす」「乗車率を上げる」という発想になりづらいようだ。「平場」の路線バスを地域独占で走らせてきた彼らにとって乗客数はアンコントローラブル(制御不能)ということらしい。しかし乗客数はコントローラブル(制御可能)である。乗客数の増加こそ、マーケティングの出番である。いや、端的に言えば、価格弾力性が大きいタイプの路線(※)においては価格を下げればさえ簡単に乗車率は上がるが、本当は「乗車率が上がればさえ、それでいい」ということではない。<※鉄道や他社の高速バスと競合が激しい路線ほど価格弾力性が大きく、鉄道が不便で高速バスが独占状態にある路線ほど価格弾力性は小さい。この価格弾力性の大小の見極めはレベニューマネジメントのために非常に重要である。また、乗客数の最大化のためにマーケティングができる役割は、決して価格施策だけでないことも合わせて強く明記しておく>

しかしそれで乗車率が上がっても単価が下落し収益(運賃収入)が悪化すれば意味がない。「バス一運行あたりの収益=販売単価(全乗客が支払った運賃・料金の平均)×乗車率×座席定員」であり、そのうち「座席定員」は原則的には車両購入時(数年に一度)しかコントロールできないから、あとは「販売単価」と「乗車率」のトレードオフの関係をいかにバランスさせるか、ということが重要になる。ここで「運賃・料金」や「価格」ではなく「販売単価」という語を用いたのは、乗車している乗客が支払う運賃・料金が一人ひとり異なるからだ。高速路線バスで言えば乗車距離が短い乗客は運賃の額が小さいし、高速ツアーバスでいえばダイナミックプライシング導入の結果、予約した時期によって一人ひとり料金が異なる。今後は高速路線バスでも同様のケースが増えるだろう。その組み合わせも重要だということだ。

限られた座席定員を、どのくらいの販売単価でどのくらいの乗車率に持っていくか。乗車率が当日になっても低いからといってどんどん運賃・料金を下げれば、その瞬間に数席は売れるかも知れないが、ライバル会社が追随し不要な値下げ合戦が始まればお互い体力を消耗するだけだ。一方で年末年始のような繁忙日は単純に需要量と供給量を計算式に入れ込んで理論値を求めれば、瞬間的には「東京→大阪 4万円」というような数字が導かれたりするが、あくまで理論値でしかない。高速バスマーケットは「生き物」であり、今日出発と明日出発、今日予約受付と明日予約受付では環境が大きく異なる。なるだけ細分化した小さなマーケットそれぞれに適切な価格設定を行ないながら、個別の便ごとに単価と乗車率のベストなバランスを導き出し収益の最大化を図る。同時に、足元の収益にこだわり過ぎてはよからぬ単価下落を招くだけだから、短期と長期のバランスを調整する。そのためには、何段階かのレートストラクチャを構築した上で、最適なプライシング・ストラテジーを見つけ出す…それが「高速バスにおけるレベニューマネジメント」だ。

こう書けばなにやら難しいようだが、ロジックをもう少し詰め、それを支援するためのシステムを開発することは、ホテルや航空業界の例を見ても不可能ではないだろう(それでも、「続行便設定の可否」つまり総在庫量が変動するというバス固有のパラメータを反映させられるかどうかは自信がないが)。「私が次にやりたいこと」の中の一つが、高速バスにおけるレベニューマネジメントのシステムを完成させ、各事業者に活用してもらうことであることは間違いがない。とまあ、こんなことを書くと「金儲け主義」という印象を持つ人も多いんだろうなあ。あるいは「ツアーバスなどというものさえ無ければ、高速路線バスは黙っていても利益を上げることができたのに」とでも言われるのか(「黙っていても利益を上げる」……それを「ぼったくり」というのだが)。まあ小言はそれくらいにして、レベニューマネジメントの教科書には最初に必ず書いてあることがある。それは「レベニューマネジメントとは、それ用の情報システムを導入することではない」というものである。マーケットの需要に耳を澄ませ乗客の心理を読む力や、末端のスタッフ一人ひとりを同一の目的のために動かす力など「総合的なマネジメント(経営)力」の話なのだ。そして高速バスの場合には、より柔軟な価格設定を可能とするなど、法規制面での地殻変動もまだまだ必要だ。そういった様々な課題を乗り越え「高速バス1便ごとの収益の最大化を通して高速バス業界全体の収益を最大化する」というアプローチは、まだまだ道半ばであり、チャレンジングでもある。






Last updated  2010.01.12 19:28:46
コメント(0) | コメントを書く
2010.01.09
カテゴリ:高速ツアーバス
私たちのサイトを訪れる利用客の8割以上が、トップページ左上にある「空席検索」機能で乗りたいバスを探す。乗車地の県、下車地の県、乗車の日付と人数を指定して「検索」ボタンを押すと条件にあったバスが表示され、比較の上で予約に進める機能だ。「発車オーライネット」「ハイウェイバスドットコム」「楽バス」など高速路線バスの予約エンジンは先に「路線」を選ぶ形なので、マルチトラック化して全く同一区間に複数の路線がある場合、まずは路線(つまり、事業者)を選ぶのに対し、私たちの場合は検索結果の画面で商品を選ぶ点が大きく異なる。いつも書いていることだが、これをメインの動線に据えたことが高速ツアーバス業界にとって大きなターニングポイントだった。リアルタイムの価格変動も、繁忙日だけのスポット運行も、多彩な車両タイプやアメニティグッズ等の特典も、ポイント付与率の商品ごと日ごとの変動も、全てこの機能があるから実現したのだ。

原則的には、利用者はプルダウンして乗車地、下車地の都道府県を選ぶのだが、首都圏-京阪神・名古屋・仙台の主要3路線については「東京→大阪」「名古屋→東京」などショートカットを用意してあって、ラジオボタンをクリックするだけになっている。この場合、例えば「東京→大阪」のショートカットを選べば、システム的には「乗車地:東京都 下車地:大阪府」をプルダウンから指定した場合と同じ結果を表示する。もっとも現実の利用者のニーズは様々で、一口に首都圏と言っても神奈川県や千葉県など東京都以外の県での乗下車の比率も大きいのだが、現在のところ首都圏-京阪神の高速ツアーバス全商品が、最低でも1ヶ所は東京都と大阪府を経由しているので、このショートカットにおける「東京→大阪」とは、実質的には「首都圏→京阪神」ということである。

最初からもっと細かく「千葉県→京都府」などその利用者の希望に沿った検索に誘導した方が利便性が大きいのでは、という意見もある。しかしあえてそうしていない。最初に絞りすぎるのは選択肢を減らしてしまうと考えているからだ。例えば神奈川県在住の私が兵庫に帰省するのに「神奈川県→兵庫県」で検索した場合、「東京都→大阪府」に比べ3割程度の商品しか表示されない。3列シートやトイレつきなど「特車」の比率も低い。実際には横浜乗車も新宿乗車も、大阪下車も三宮下車も利便性は大きく差はないから、まずはたくさんの商品を見てもらいたい、と考えている。その意味で、最初の時点ではなるだけ「神奈川県」といった絞り方ではなく「東京」(実質的には「首都圏」)で検索してもらうよう誘導しているのだ。その上で、検索結果の画面では、画面上部に「詳細条件」を設定できる機能を準備している。平日の「東京→大阪」など80商品くらい表示されるから、乗車地を「東京都」よりも細かく「新宿」に絞り込んだり(もちろん「神奈川県」とか「横浜市」にすることも可能)、「3列シート」のみに絞り込むとか料金の安い順に並べ替えるとか、利用者は希望に合わせて再検索できる。ちなみに、高速ツアーバスのほとんどが夜行便なので、あえて時刻順で並べ替えをしない限りは、時刻順は無視して、座席グレードの高い順(「2列シート」が最上位)に表示される。

ただ、と今考えていることがある。今後、高速路線バスの取扱が増えてくると難しいなあ、と。上記事例でも、仮に「千葉県発、神奈川県経由○○県行き」とか、「神戸行き(大阪府には止まらない)」のような路線であれば上記ロジックだと表示されなくなってしまう。例えば「金沢まで高速バスで行きたいのに渋谷発も新宿・池袋発も満席」で困っている利用者に「横浜発で空席を見つけた!」というようなことをお手伝いするのが私たちの役割のひとつであり、ならばシステムを小改修して、画面上で「東京」と表示している場合はシステム上は「東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県のいずれか」で空席検索するようにしようかなあ、などと迷っているのだ。

一方、ではエリアをどんどん広げればいい、というものでもない。長距離夜行の場合は新宿発が満席なら横浜まで移動して乗ればいいが、距離が短い路線ではそうではない。最も極端なのが空港路線で、下車地の羽田空港は距離で言うと目と鼻の先。だが電車だと乗換が面倒だからあえて直行のバスを選ぶわけで、新宿乗車希望の利用者にとって池袋や東京駅発のリムジンバスを見せても煩雑なだけだ。この場合は「高速バス」とは異なるカテゴリーだから、そもそも入り口で分けてしまってリムジンバスの専用ページを作り、そこからの検索では「新宿発」と「東京駅・TCAT発」を別々に空席検索できるようにした。また、座席グレードは全便一緒なので、リムジンバスの検索の場合だけは出発時刻の早い順に並べている。

ということは、今後、比較的距離の短い「高速バス」が増えてくると配慮しないといけないことが多くなる。仮に、の話だが、東京都から長野県に向かう高速バスの取扱が増えると(現在取扱中の高速ツアーバスは便数が少ないからさほど気にならないが)、「東京都→長野県」で検索しようとしている人にはもう一段細かく「長野」「松本」「伊那」などと最初から指定してもらった方がいいかも知れない。そしてこの場合は、リムジンと同様、出発時刻順がいいなあ。一方、この場合「東京都」の方は自動的に「神奈川県」も含んで検索するようにしておけば、まだ認知が小さい横浜発の伊那飯田方面も表示されて、新宿発が満席の場合など有効かなあ、などと妄想は(勝手に)膨らむ。

その他、座席管理の手法など、鉄道をベースに発展した高速路線バスのオペレーションと、旅行ツアーをベースに発展した高速ツアーバスのオペレーションなど、両者の違いはけっこう大きい。今後私のサイトで取扱させていただける高速路線バスがどんどん増えていくということは、サイト上や管理サイドの様々な点において、高速路線バスの現状にも対応するよう改良していかないといけないということだ。もちろん、それが高速ツアーバスを好んで利用してくださっている利用者や高速ツアーバスの企画実施会社の便利さを妨げるものであってはならない。課題は大きいように見えるが、方法はひとつしかない。何度も何度も、様々なタイプの利用者や取引先担当者になったつもりで、サイトの利用者画面・管理者画面を繰り返し繰り返し使ってみること。それ以外に答えはない。






Last updated  2010.01.10 10:40:45
コメント(0) | コメントを書く

全70件 (70件中 31-40件目)

< 1 2 3 4 5 6 7 >

PR

Profile


nalys

Category

Comments

京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
京帝117@ Re:新宿高速バスターミナル(02/21) 私がカウンターに座っていた時は、空いて…

Favorite Blog

新米支配人の奮闘記 solitudineさん

Calendar

Archives

2019.10
2019.09

Keyword Search

▼キーワード検索

Rakuten Card

Free Space


Copyright (c) 1997-2019 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.