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成定 竜一~高速バス新時代~

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ホテル業・観光産業

2015.05.13
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引き続きインバウンド(訪日外国人)は急増を続けており、新聞やテレビでその話題が続く。インバウンド急増は、ついこの間まで、経済ニュースの一つとして取り上げられていたが、最近では「訪日ツアーに密着。日本のおもてなしを絶賛」とか「外国人急増で地元困惑」とかいった切り口で、主に専業主婦が見るような情報番組までインバウンドの話題だ。

総数の急増のみならず、その中で観光客の比率が増えさらに団体ツアーから個人旅行へのシフトが起こるので、FITの数は急増どころか特急増である。バス業界にとって「インバウンド」は、一握りのインバウンド専門の小規模事業者だけのものでは既になく、高速バス、定期観光バス、そして路線バスを運行する乗合バス事業者のものにもなりつつある。そしてもちろん、観光客は訪日外国人だけではない。邦人客でも、旅行形態の個人シフトが進む。

先日、西日本出張のついでに広島へ足を延ばした。中国JRバスが運行する観光ループバス「めいぷるーぷ」の路線図を見ながら適当に目星を付け「お好み村前」停留所を見に行った。一目見て、ああこれは停留所設置(の各種調整)に苦労しただろうなあ、という立地。停留所標柱は「お好み村」のビル敷地内に据え置き。なお「お好み村」は、当初は、路上に並んでいた屋台を収容した地元客向けの飲み屋ビルだったが、今では観光客にも人気の施設。平日の午後ではあったが、「お好み村」に入居する各お好み焼き屋、居酒屋向けに納品作業中の酒屋さんのトラックの陰(正直なところ、観光客を対象としたビルでなければ、ここに停留所を新設することは困難だっただろう)に、FITを含む観光客が続々と集まってくる。

同社が広島市内で観光ループバスを運行…とニュースで聞いたときは、役所とのお付き合いで嫌々始めるのかなあくらいのことを感じたものだが、なかなかどうして、驚きの人気。同市内には路線バスと路面電車が稠密な路線網を高頻度で運行しているが、逆に言えばその分わかりづらい。反面、観光客が立ち寄りそうなスポットに焦点を当てたループバスは、運行頻度こそ約30分間隔と不便なようだが、遠来の観光客も安心して利用できるのだろう。

同社の観光客向け施策といえばこの「めいぷるーぷ」とオープントップバス「めいぷるスカイ」が目立つが、忘れてならないのは手荷物託送サービス。高速バスや新幹線で到着した観光客が手荷物を広島駅内の同社窓口に預けておけば、観光を楽しんでいる間にホテルまで運んでおいてくれる、というもの。テーマパーク周辺などでは定着済みのサービスだが、都市単位で、またバス事業者が運営するというのは珍しい。公共交通を使った旅行の弱点の一つが手荷物の件なので正に理にかなっている。

このサービスの課題は、ずばり認知だ。そういうサービスがあること自体、普通は思いつかない。ちなみに託送サービスの普及には国土交通省(物流)と観光庁が熱心で、「手ぶら観光」の全国共通ロゴマークと検索サイトを構築するそう。もちろん多言語で。ただ検索サイトというのは典型的な「プル型」施策である。旅行を計画する段階で、「託送サービスがあるだろう」と思いつく人には有効だが、「こんなサービスもありますよ。だから【この街(例えば広島)に】【(パッケージツアーじゃなくて)個人旅行で】【(クルマじゃなくて)公共交通で】旅行に来てくださいね」と呼びかける「プッシュ型」の施策とはなり得ない。

同様の課題は、最近充実してきた「着地型コンテンツ」普及の前にも立ちはだかる。例えば一般社団法人ジャパン・オンパクが各地で推進する「温泉泊覧会オンパク」。城崎温泉のオンパクを例に取れば、「温泉寺副住職に学ぶ古式入湯作法」「僕の畑で『獲る』『作る』『食べる』の3時間」「心と体をセルフケア 温泉ピラティス」など、名湯城崎や自然あふれる但馬地方でないと体験できない魅力的な企画が並ぶ。ただ、テーマ性が大きくターゲットが絞られる分、これらの企画は催行日限定だ。毎日安定しての集客は困難だし、案内・講師役も普段は「副住職」「農家(この講師の方の場合、自称「サイバイマン」らしいけど)」だからだ。そのためこういった着地型コンテンツは、従来の旅行会社のオペレーションや発地型のフルパッケージでは商品にはなかなかなりづらかった。

ウェブサイトさえあれば、情報を流すことはできる。少なくとも、オンパクのサイトに辿り着いた人にとっては、催行日やジャンルを絞りこみ希望のコンテンツを選んで予約することは容易だ。問題は、ここでもウェブサイトは「プル型」でしかないことだ。世の中の人(ごく一般的な旅行者)は、「城崎だったら面白い着地型コンテンツがあって、ウェブで予約できるはずだ。たしか往復の高速バスもあるはずだから、(街の旅行会社に行って発地型のフルパッケージを申し込むのではなく)ウェブで好みの交通機関やコンテンツ、お宿を組み合わせ自分なりの旅行を組み立てよう」とは考えてくれない。さらに付け加えれば、高速バスは地元民の大都市への足としては最適化されているが(パーク&ライドなど)、大都市からの、ましてや海外からの観光客にとって使いやすいダイヤやルートでもないし、旅のワクワク感を醸成するプレゼンテーションとは無縁の、無機質な乗り物でしかない。

それでも、高速バスと、託送サービス、「めいぷるーぷ」のような二次交通、さらに着地型コンテンツ、個性化が進むお宿……こういう各要素を(目を皿のようにして探せばさえ)ウェブ上で組み上げていくことができるようになりつつあるのは一つの進歩。ここが踏ん張りどころだ。それを「当たり前のこと」にまで昇華させたい。なんとか、いつかは飽きられてしまいかねないお仕着せのフルパッケージから、個人の興味関心を満たす個人旅行へ、それをクルマ(レンタカーを含む)以外の手段でも実現できる環境を作り上げることができれば、我が国の観光産業の未来も見えるし、高速バス業界の次の成長も見えてくる。

そのためには、バス事業者も、旅行会社も、お宿など地元の観光産業も、皆が少しずつ変わらないといけない。まずは、リスクを背負って観光ループバスや託送サービスに参入した中国JRバスには脱帽。翌朝、東に向けて帰る高速バスの車窓には、さんさんと輝く陽を受けて光がこぼれんばかりに輝く瀬戸内の海が、ずいぶんと遠くに、けれどきらりと輝いた。






Last updated  2015.05.13 19:10:40
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2010.04.06
先週末は箱根の宿「箱根エレカーサ ホテル&スパ」へ。必ずしも安い宿ではないが驚くほど高いわけではなく、サイト上のビジュアルやクチコミ情報「お客さまの声」に投稿された内容を読む限りコストパフォーマンスは高そうなので期待して予約した。ビジュアルを見る限り、こじんまりしたお洒落なリゾートである。スタイリッシュな内装とイタリア料理をベースにしたディナーが売りで、プライベート感あふれた上質な宿といった印象だ。

ただ、もともと企業の健保組合の保養所だった建物だという情報は、元ホテル屋として実は知っていた。周囲にも同様の保養所が多く、なじみのある大手私鉄の健保組合のものらしい保養所もいくつか見かけた。以前、「ホテル時間・旅館時間」でご紹介した栃木の宿が、たしかに見た目はお洒落なリゾートっぽく見えたもののどことはなしに「旅館の時間」が流れていて、「ホテルの時間」の方が好きな私たちにはちょっと不満が残ったので今回も内心少し不安があった。宿に到着して内外装に目をやれば、その気(中古バスの出自を調べるような感覚?)で見るなら、たしかに保養所だった名残が散見される。

しかし、チェックインのオペレーションからディナー、そして翌日のチェックアウトまで、いい意味で予想を覆し、保養所の建物をコンバージョン(業態転換)したという「中古」としてのネガティブな印象はほぼ感じなかったと言っていいだろう。十分に週末のステイを堪能できた。特に、ディナーの開始時刻を幅広い時間帯から選べたり、チェックアウトが11:00と(このクラスのリゾート施設としては)遅めだったりと滞在者が自分の時間軸で滞在を組み立てていける点は、上質なリゾートの要素を十分に満たしていると言えるだろう。食事について、軽いアレルギーを持っている旨をあらかじめ伝えておいたところ、見事なまでにスマートに対応してくれた。客室も料理も接客も、少なくともこちらが受ける満足感では1クラス上の高級リゾート並みだった。

十分に満足しただけに、この建物が企業の保養所だったときのことをつい想像してしまった。さすがに今の私の会社にはそのようなものはないが、前の会社は創業70年を超える老舗企業であり、近郊のリゾート地にこのような保養所があった(同様に健保組合のものだった)。社員旅行が華やかなりし頃はよく利用されたのだろうが、特にホテル企業というのはシフトで動いていて部署全員がいっせいに休むことが難しかったこともあり、さて、年にいったい何回使われていただろうか。私自身、みんなでお酒を飲みにいって仕事の話をしたりするのは大好きなほうだが、かといって貴重な休日を上司や後輩に気を遣いながら過ごすことに好んで費やそうとは思わないし、ましてやプライベートの旅行で自分の会社の保養所に宿泊してそこで上司の家族と顔を合わせるなど、どう考えても「保養」になるとは思えない。さらに、健保組合としては保養所を自ら所有・維持していくコストも無視できなくなっている。<※それゆえ、最近では企業の福利厚生を一括して受託する会社(ベネフィット・ワンなど)が人気だし、逆に、保養所の運営を健保組合などのオーナー側から受託してしまう会社(四季倶楽部など)も台頭している。>

社員に対する福利厚生が不要だと言っているのではない。上司部下の親睦が不要だと言っているのでもない。少なくともある時代において、週末に部署単位でビールを飲みながら小田急ロマンスカーと路線バスを乗り継いで箱根の保養所に出かけることが、保養所を構えられるだけの「立派な企業」で働くことの特権として誇りとして感じられたこともあっただろうし、そのような時間を通して上司部下の親睦が深まり、そのことが企業にとっても大切だった時代があったのは間違いない。しかし今の自分に置き換えてみると、むしろ休日は、自分自身の価値観に合わせて家族や友人との時間を過ごすことが優先だ。全ての日本人が私と同じ価値観だとも思わないがおおむね同じ傾向だろうから、どの保養所も私の前の会社のそれと同様、稼働率は極端に低いだろう。あくまで想像だが、この建物が保養所だった昨年までは、稼働率は高くなかったことだろう。たまに部署単位で社員旅行を受け入れたりすればご機嫌なのは年嵩の上司だけで、内心はイヤイヤ付き合っている若手社員の姿に、この建物は同情していたのか、それともこれも仕事だと気づかぬふりをしてきたのか。

それが、お洒落なホテルやウェディング施設を運営する会社に託され、今や見事に上質なリゾートに生まれ変わった。スマートなユニフォームに身を固めたスタッフが生き生きとゲストを出迎え、ゲストはそのサービスに身をゆだねる。着飾ってディナーを楽しむレストランでは、満室とはいえ14組しかいないゲストの内、なんと3人ものゲストがバースデーの祝福を受けていた。特別な日の夜を楽しむためにわざわざこの場所を選んで足を運んでくれるカップルがいるという栄誉を、この建物はいま噛み締めているに違いない。

私自身、元ホテル屋として、チェックイン客の少ないロビーや閑散としたレストランに流れる空気がどれほど淋しいものか、身にしみて知っている。「選んでもらえない」「使ってもらえない」ことが、万全の態勢(少なくとも意識としては)でお迎えしようと意気込んでいる現場のスタッフにとってどれだけ残酷か、よく知っている。一人でも多くの潜在顧客に高速バスの存在と魅力を伝え、一人でも多くの利用者を高速バス各社にご送客する・・・・・・それが今の私の役割であることに、私としては心から誇りを感じている。






Last updated  2010.04.06 20:17:02
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2009.12.15
私の古巣である高級ホテル業界ほど、景気変動の影響を受けやすい業界はない。さらに、固定費の比率が大きいという特性がさらに事業経営を難しくする。景気が悪く客足が鈍ったからといって、ベルボーイやウェイターのアルバイトの出勤者を多少減らしたところで、コストの多くは「既に建ててしまったホテルの建築物」の償却であるので、身の丈にあったサイズまで事業規模を急に小さくすることはできない。それでも極限までコストを切り詰めたい経営側と、「ベストなサービスをしたい」というこだわりの職人肌の現場との間で様々な思いが交錯していることだろう。

また一つ、印象的なホテルが消える。仙台市の「仙台ホテル」である。その名が表わすように、仙台を代表する老舗ホテルである。私自身、老舗ホテル出身だけに、帝国ホテル、ホテルオークラやホテルニューグランドなどと共通の系譜にあるこのような「グランドホテル」タイプの宿が消えるのは非常にさびしい。暖色系のふかふかの絨毯が敷かれたロビー、ドアパーソンやベルパーソンのきびきびした動き、いつも落ち着いた笑顔を絶やすことの無いアシスタントマネジャー。仙台ホテルについては高速バスを乗り歩きに行った際に何度かロビーを歩いてみた程度しかお付き合いはないが、ロビーに漂う空気の匂いまで、私が勤めていた老舗ホテルと共通していた気がする。ホテル勤務時代に「熟成して風味を増すワインのように時間を重ねることで生まれるエレガントな空気は、本物の上質を知る人に安心感をもたらします」というコピーワークを私は好んで使っていたが、最近多い機能性重視の宿泊特化型ホテルや、スノッブさを売りにした外資系高級ホテルでは味わえない「空気の味」は、今でも喉の奥のほうによみがえってくる気がする。

一方、このような「古きよきグランドホテル」が本当に「ゲスト」(バス業界が利用者を「乗客」と呼ぶならホテル業界では「ゲスト」である)にとって最高のサービス価値を提供していたか、疑問が残る。「これこそがホテルのサービス」としてホテル屋が信じ込んで提供するサービスが、本当にゲストにとって最高なのか。「高級ホテルのテーブルクロスは純白の麻」というこだわりにとらわれすぎた結果、ドレスや照明の色と合わせたテーブルコーディネイトにより華やかな披露宴会場にしたいという新郎新婦の希望を後回しにしていなかったか。コーヒーが贅沢品だった頃からの伝統である、コーヒーのおかわりをポットで注いで歩くサービスは、今では逆に「ウチのコーヒーは出がらしです」とネガティブな宣伝をして回っているようなものではないか。大理石でしつらえた西洋風のバスルームは、「まず“かけ湯”で体を清めてから、肩までバスタブにつかってリラックスしたい」という日本人の本能に答えられているか。

対して外資系の高級ホテルチェーンは、そのようなサービスの陳腐化を見事に克服してきた。テーブルクロスもコーヒーも西洋風バスルームも、上に挙げた例はいずれも欧米のホテルから日本のホテルが学んだもののはずである。しかし彼らは、「感性の経年劣化」を起こさないよう常に自らのサービスを見直し続け、我が国においても高い評価を受けている。その原動力が、彼らが自らに課した「常に前進をし続ける仕組み」である。例えば国内系ホテルは土地建物の所有からスタッフの雇用、ブランド、運営ノウハウまで自前で揃えることが多い。私もそれに疑問は感じていなかったし、むしろ全スタッフが自社の看板を背負って共通の目標に向かえる分、帰属意識が育ちいいホテルを作れるのではないかと考えてきた。しかし米国のホテルチェーンは、「所有(土地建物)」「経営(社員を雇用するなどして運営費用を負担しつつゲストから売上を計上する)」「運営(ノウハウやブランド)」に自らをあえて分割し、お互いの会社を契約で縛るようにした。その結果、何が起こったか。もちろん、資産を持つ者とノウハウを持つ者で投資サイクルが違うから、それぞれのリソースを持ち寄りやすくなるとか様々な利点がある。だが、その中で私が特に評価しているのは、あえて別会社同士が契約で縛りあって一つの事業に取り組むことで、お互いに「手を抜けなくなる」環境を作ったことである。

運営側が手を抜けば「もっと優秀な総支配人を派遣しろ」とオーナー側が声を上げ、オーナー側が手を抜けば「ちゃんと設備投資をしろ」と運営側が叫ぶ。このような構図を、会社同士、部署同士、担当者同士で張り巡らせて行く。一つの会社の中で所有も経営も運営も一気通貫で行なうと、そこにどうしても甘さが出る。何も息が詰まるような厳しい雰囲気を社内に作ることがいいこととは言わないが、人間、ほっておくと昨日までと同じことをやりたがるものだ。あるいは「匠の国」我が国においては視野を広げずに深く深く仕事を掘り下げてしまう。結果、「ゲストのため」「最高のサービスを」ともっともらしいお題目を掲げながら、実は「自己満足のため」に仕事をしてしまうということが起こるのだ。

社内や取引先に甘い条件を出すことは簡単だが、それが本当に相手のためになっているか、私たちは強く自問しなければならない。特にこれからますます厳しさを増すホテルやバスの業界において、傷を舐めあうような関係だけは作りたくない。そうなったが最後、お互いの事業はシュリンクするだけだろう。信頼関係のなかにも、お互いを高めあうような緊張関係を保ち続けられるような経営の仕組みを、バスの世界でも考え始めないとならない。






Last updated  2009.12.15 20:46:50
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2009.08.18
一昨日の日本経済新聞、読書欄を見て驚いた。私の知人が執筆した本が2冊、掲載されている。1冊は書評の対象になっていて、1冊は広告だが。

まず1冊目、『ラバウル温泉遊撃隊』は、山崎まゆみさんの新作。山崎さんとは、私がホテル勤務時代から、観光産業についての定期的な勉強会でいつもご一緒していた。自称「愛浴家」、それで伝わりづらいときには「混浴ライター」が肩書きだというと表情をしかめる?人もいるが、日本、そして世界の「温泉」を取材しその魅力を伝えておられる。この国の将来を考える場合、インバウンド(訪日客)を含めた「観光産業」を無視しては考えられないし、日本の観光を考えるにあたって温泉は最も輝ける「資産」である。個人的には、その温泉を売り物にする国内のほとんどの旅館が、大手代理店にだけ都合のいい画一的なサービスを提供しているにもかかわらず、自分たちはそれを「伝統と格式」「心のこもったおもてなし」だと信じ込んでいるあたりが不満というか心配ではあるが。

山崎さんには、私のサイトで小難しい委員会の委員をやっていただいたり、昨年6月の「ツアーバス安全マネジメント・シンポジウム」で講演をしていただいたり、サイトにも登場していただいたりと、仕事でもいろいろお世話になっている。

山崎さんはもともと温泉がお好きではあったようだが、ライターとしてたまたま温泉についての連載を担当したことから温泉が専門になり、海外も含めて取材に行って一流の出版社から本を何冊もお出しになっているのだから立派なものだ。

もう1冊、こっちは書評ではなく広告が掲載されていただけだが、堀口洋明さんの『ホテルの売上倍増実践テクニック100』。堀口さんとは、ホテル業界の若手の定期的な勉強会(定期的な飲み会?)の仲間だ。山崎さんと一緒だったのは、ホテル屋もいるが、国土交通省、新聞社、広告代理店、航空会社、タクシー会社など「観光」に携わる人たちの少しオフィシャル感のある勉強会だったのに対し、堀口さんと一緒だった会は、ライバルホテルの若手どうし、愚痴も言いながらホテル業界の未来を語るような若手の集まりで、それぞれ楽しかった。前にも書いたが、バス業界で同じような会を作ることができればと考えているが、目の前の仕事に追われてまだまだ実現していない。

この本のタイトルどおり「売上倍増」などというと、既存事業者の社員の中には、まるで振り込め詐欺の首謀者でも見るかのような目をなさる方がいらっしゃる。「地域の公共交通を維持する」という使命感の元には「売上」や「利益」という言葉が浅ましく聞こえてしまうのかも知れない。だが、「売上」や「利益」に格段執着しなくとも、バス会社の経営も、地域における公共交通の維持も容易だった時代は終わりつつある。「安全・安定輸送を最優先に地域の公共交通を維持する」という使命のためにこそ、1円でも多くの売上を集め利益を出さないといけない時期に来ているのである。この堀口さんの本に推薦文を寄せておられるのが鉄道事業者の子会社に当たるホテル企業の役員の方であるのは、偶然ではないと思う。

ちなみに、堀口さんの本を出版したオータパブリケイションズは、ホテル・レストラン業界に深い思いをこめて仕事をなさっている出版社であり、ホテル社員向けのセミナーなども数多く企画されている。繰り返すが、バス業界にもこのような動きがあると嬉しいのだが。

いずれにせよ、お二人のご活躍に刺激を受け、自分も早く本でも書かないと、と意欲を新たにしている。






Last updated  2009.08.18 17:46:19
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2009.05.07
昨日、三越池袋店の閉店をニュースが伝えていた。私が以前に勤務していたホテルも、いくつかのグループホテルの売却を余儀なくされたが、まだ幸運なことに本当の「閉鎖」に立ち会うことはなかった。三越の従業員、特に閉店のオペレーションに直接たずさわった人たちはとても悔しいことだろう。閉店というのは、ただシャッターを下ろせばそれでいいという問題ではない。人の配転やアフターサービスの体制作りなど大変な作業だっただろうし、それが後ろ向きな仕事だけに辛かっただろう。

この「百貨店の不振」という問題は、国内系老舗ホテルに勤務してその変革を目指していた私にとって、とにかく他人事ではない。単純に「安いモノしか売れなくなった」「最近の若い人は老舗の価値を理解してくれない」と社会のせいにするのは簡単ではあるが、そこからは何も生まれない気がする。

もちろん、中期的に見ればバブル崩壊以降の、そして短期的に見ればサブプライム問題以降の不況により、消費者の価格志向が進み高いモノが売れなくなっているのは事実であろう。また、高度経済成長期に建設された老舗ホテルは施設の老朽化が進み、バブル以降に建設された外資系ブランドの高級ホテルや、徹底した多店舗展開により低コスト中バリューを追求した宿泊特化型ホテル(ルートインなど)に比べてハード面での陳腐化が進んでいたことも事実である。あるいは、何度も繰り返し書いたように、消費者のニーズを汲み取ってそれを実現するという、ホテルの真髄であるホスピタリティの部分、すなわちソフト面でも、新しく生まれた競合相手に負けていたと言われても仕方がない。

ただ、根本的には、そのような表面的な問題だけではないはずだ。たしかに老舗百貨店も老舗ホテルも、消費者の変化を読み間違えた。だが、ではなぜ彼らは揃いも揃って読み間違えたのか?

根本的には、既成のビジネスモデルが満点か、常に自分に問い続け、常に成長を図るよう「背中を押し続ける仕組み」を作ることができなかったことが問題なのであり、それはすなわち経営力の不足の問題である。「終身雇用、年功序列を前提とした家族的組織」に象徴される「日本型企業経営」の是非が論じられるが、少なくとも、現状を否定する冷たさを強制されない「身内への甘さ」は、日本型経営の負の部分として明確に認識されるべきである。

アメリカ生まれの学問である「ホスピタリティ・マネジメント(ホテルやテーマパークなどの経営について論じる学問)」をかじって、外資系ホテルの経営手法を自らのホテルのそれとを照らし合わせて印象的なことは、アメリカ型の組織と言うのは、トップダウン型の組織から生まれる強いリーダーシップと、それと対をなす「牽制の体制」を見事に仕組み化している点である。日本型ホテル企業の社長や総支配人を日本の総理大臣型だとすれば、外資系ホテル企業の社長や総支配人はアメリカの大統領型であり強いリーダーシップを持つ。しかし同時に、もし力不足であったり独走して失敗したりすれば次の選挙で確実に敗北が待っている「背水の陣」を常に強いられているのである。そして末端まで「背水の陣」に巻き込むのが彼らの組織の特徴である。

もちろん、その「常に成長するよう背中を押し続ける仕組み」が暴走した結果がサブプライム問題となったわけで、アメリカ型の経営手法を手放しで賞賛するつもりはない。しかしながら、「昨日までこれでやって来れたんだから明日もこれでやっていけるだろう」という現状肯定から脱却しなければ、各種の日本の老舗企業に未来がないことも事実である。これまでそれを許してきた右肩上がりの経済成長は、とっくに終わっているのだから。






Last updated  2009.05.07 20:40:39
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2009.04.11
私の古巣のホテルが沖縄に進出することが発表された。「関西の迎賓館」として80年近い歴史を持つこの老舗ホテル企業は、高度経済成長、土地の右肩上がり神話の中で長い間「いい時代」を過ごしてきた。その勢いでバブル期には全国展開を図り続々と新規ホテルを開業させたばかりか、「関西発の世界チェーン」を目指してニューヨークなど海外にも積極進出した。ただ、残念ながらその多くは営業的に失敗に終わり、外資系投資ファンドや新興ホテルチェーンに売却された。銀行からの出向組を中心に売却にたずさわったメンバーは苦しい交渉が続いただろうが、そこで得た現金が会社の危機を救った。完全復活とはまだまだ言えない状況だが、新規ホテルは嬉しいニュースだ。

私としては、一度は新規ホテルの開業にたずさわりたいと考えてホテルに就職した。構想段階から何年も準備を重ね、だんだんと完成に近づく自分のホテル。だがホテルは建物ができて完成ではなく、スタッフの教育や開業プロモーションなど、開業日に焦点を合わせてソフト面の準備が続く。ヘルメットをかぶって、まだ無人の開業前のホテルで開業準備に追われる自分の姿を夢見ながらホテリエ生活を送ってきた。だが残念ながら私は新規開業にたずさわることはなかった。バブル崩壊直後に社会に出た以上、仕方がないことかも知れない。

一度、格安ホテルチェーンの、オープン初日に宿泊したことがある(西口バイト時代の仲間達と一緒に地方の高速バスを乗り歩きに行った時だ)。翌朝、無料で供されるおにぎりと味噌汁の朝食をロビーで食べながら、「あの棚を90度動かした方が動線もよくお客様にもわかりやすいのにな」と心の中で思った。直後、チェーン本部から派遣されたと思われるまだ若い女性スタッフが現地の支配人に対し、私が感じた全く同じことを指示していた。どうしても新規開業に立ち会いたい、とあらためて強く思った瞬間が忘れられない。

一方で、売却されていったかつてのグループホテルは、外資ファンドや新興チェーンによる新しいマネジメントの元、ほとんどが営業的にも成功し経営的にも利益を上げるまでに復活している。老舗ホテル企業ではうまく行かなかったことを、彼らはこともなげに成し遂げている。そこまでには多少の人員削減もあるにはあったが、「いい時代」を忘れられない老舗企業による甘えの経営ではなく、苦しい時代に立ち向かう筋肉質の経営スタイルがそれらのホテルを再生させた。コスト削減のような経営的側面だけではない。消費者ニーズを巧みに取り込むというホテルの運営面でも、老舗ホテルが何かを忘れてしまっていたことに、血を分けた兄弟が別の道に進んだのを見てあらためて気づかされる。

結局、私自身は、新規ホテルの開業も、ダメになりそうなホテルの再生も、直接立ち会うことはできなかった。バス産業で、同じようなシーンを自分が実現することはできるだろうか。






Last updated  2009.04.11 13:28:19
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2009.04.03
「利用客の目線で」ということでは評価が高いはずのホテル業界だが、それでも「業界の常識」「ホテル屋のこだわり」のために利用者目線から離れてしまっている例も多い。

ホテルは欧州や米国から入ってきた業態だから、バスルームはバスとトイレが一体になっているのが「常識」だ。高級ホテルだと、これに「シャワーブース」が加わることも多い。欧米の人にとってはトイレも風呂も「汚いものを流す」場所だから、それらが一体であっても何も違和感がない(欧州の古い石造りの建物に、後から水洗トイレや家庭用の風呂を設置するに当たってはそれが効率がよかったという物理的な事情が、そのまま文化になっている)。

しかし我々日本人にとっては、トイレは「穢れの場」であり、風呂は「清めの場」である。それが同一の空間に同居するのは本能的にどうも居心地がよくない。最近、高級ホテルを中心に「個室トイレ」と「洗い場付きバスルーム」が多くなってきたが、「ホテルは欧米のもの」という常識を離れ、実際の利用者である日本人(つまり、私達一人ひとり)の視点に立ってみれば、当然の結果である。だが、日本のホテルがそんな当たり前のことに気付くまで、初めて日本にホテルが建設されてから一体何十年かかっただろうか。

もっとも、バスルームの改装はコストが極めて高い。新設のビジネスホテルでは、最上階に大浴場を設置することでトータルのコストを抑えているが、古いビジネスホテルの改装ではそれさえも難しく、ますます競争が激化する中、既存のホテルの苦労は想像に余りある。

そんな中、客室そのものを全く新発想で改装した一つの答えが、岡山ビューホテルの床に座ってくつろぐ部屋靴を脱いでくつろぐ部屋であろう。これだと狭い客室面積をいじらずとも、またバスルーム改装ほどのコストをかけずとも、他とは大きく差別化でき、かつ利用者が本能的に望む「くつろぎ感」を提供できると言えるだろう(ちなみに、私自身、ホテル勤務時代に畳敷きのスイートを提案した覚えがある)。

ほとんどコストをかけない例で言えば、ツインルームには白と青の二色のタオルを設置したAPAホテルも秀逸だ。特に団体旅行(社員旅行など)で男二人でツインに泊まったときなど、どっちが使ったタオルかはっきり分かったほうがいいに決まっている。だがホテルの常識として「タオル類は純白」という思い込みがある。洗濯後のチェックの際に毛髪等が残存していれば見つけやすいという理由はあるものの、「純白のタオルこそホテルの伝統」というような思い込みが、利用者の本当の願望を見えなくさせていたのだろう。

わずか数年の歴史しかない高速ツアーバス業界でさえ、既に、よく言えば「業界のこだわり」に時々出会うことがある。現場のこだわりが品質を高め、かつスタッフの誇りにつながることはホテル勤務時代からよくよく承知しているが、最終的にそれを評価するのは利用客である。それらのこだわりが「業界だけの常識」「独りよがりの思い込み」になっていないか、常に自分達を律していきたい。






Last updated  2009.04.03 19:44:02
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2009.03.21
私が働いていたホテルは「関西の迎賓館」と呼ばれ、皇族や国賓が大阪にお越しになるとお泊りいただくようなタイプのホテルだったが(一番高いスイートは1泊100万円した!)、伝統がある分、古くからの狭い客室タイプもあり、一番狭いシングルルームなどビジネスホテル・プラスαくらいの価格で販売していた。そのため、私が新入社員だった頃、シングルを中心に狭い客室について、アメニティのシャンプー、リンスを、それまでのミニボトル(持ち帰り可能)から、バスルームの壁に据え付けられた「ディスペンサー」タイプに変えることになった。レバーを押すとシャンプーが出てくる、無愛想なタイプだ。当然、コスト削減が目的である。

そのことに、ハウスキーピング課のルームメイク担当スタッフ(親しみを籠めて言えば「掃除のおばちゃん」)は愚痴だらけだった。彼女達の作業自体は楽になるはずである。しかし、愚痴だらけだった。「私ら、○○ホテルや、言うから働かせてもろてんねん。こんなん、その辺のビジネスホテルと一緒やんか」「シャンプーの詰め替えなんか、私らウチでやってる。それで十分やわ」

ソムリエ資格を表わすバッチをさりげなく付けタキシードをスマートに着こなしたイケメンのウェイターが言うのではない。数ヶ国語を話せる才媛のコンシェルジュが言うのではない。ホテルから言うと業務委託先のアルバイトでしかない掃除のおばちゃん達が、「そんな安っぽいサービスは私達のこだわりに合わない」と口々に言うのである。

ホテルに限らず、日本の「現場」は、数々のこだわりを持って仕事をしてきた。現場スタッフの「職人気質」が、日本のあらゆる商品の品質を高めてきた。その意味で日本企業は、現場スタッフに支払う給料以上のものを従業員から得てきたと思う。自動車や電気製品など日本製品が世界を席巻したのも、現場のこだわりが要因のひとつだろう。また、逆に現場の労働者は、自分達のこだわりを業務の中で実現していくことで、給料以外の何か(誇り。もっと言えば生きがいや自分自身の存在証明のようなもの)を手にしてきた。

もっとも、掃除のおばちゃんたちが反対したところで会社の方針は変わらず、シングルルームには無愛想なディスペンサーが付いた。しかし今、新規にオープンするビジネスホテルを見ると、壁掛け式の業務用ディスペンサーではなく、お洒落なインテリア雑貨店で売っているような、非常にデザイン性の優れた家庭用のポンプ式容器が置かれている。ゴミ問題や資源の無駄遣いに社会の目が厳しくなったこともあり、古いデザインのホテルのロゴ入りミニボトルなどより、見た目にもよほど小洒落て見えて好印象だ。コストなど、ミニボトルはもちろん業務用に特別に作った壁掛けディスペンサーより安いのではないか。

現場が自らのこだわりをどんどん「深堀り」していくなら、視野を広げてアイデアを出し、その「深堀り」が単なる自己満足にならないようコントロールするのが経営の役割である。現場が目の前の課題に正面からぶつかる一方で、永続的に事業を成長させられるよう、長いスパンで物事を考えるのが経営である。今、老舗の路線バス事業者から「新免」の家族経営のような小規模事業者まで、大小さまざまなバス事業者とお付き合いしているが、「プロの現場」と出会うことは多いが「プロの経営者」(大企業の場合は、社長本人という意味ではなく「経営部門」)と出会うことは少ない気がする。






Last updated  2009.03.21 12:05:22
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2009.03.18
『運輸と経済』3月号に掲載された私の論稿「高速ツアーバス事業の現状と課題」に対して、老舗路線バス事業者の社長さんから直々にご感想、ご意見を頂戴した。その内容については、なにぶん立場の違いからすれ違いもあり私なりの反論も可能ではあるが、なにせ社長ご自身のお言葉である。有名な社長さんだけに感激すると同時に、大変な重みを感じた。わかっていたつもりの路線バス事業者の気持ちを、あらためて認識させられた。

それだけに昨日は一日中、自分のやっていることが本当にバス業界のためなのか考え込み仕事が手につかなかったが、いや、何度考え直しても、私のサイトに対する路線バス事業者の感情的な反発を取り除いて、マーケティングの観点から高速路線バスのお手伝いをすることこそ、私の役割だろうと思う。頭で考えるとそうなのだが、路線バス事業者のお気持ちがわかるだけに……。いやいや、弱気にならずに背筋を伸ばしてがんばらないと。

気を取り直して、週末に泊まった宿のお話しを。私はホテルを退職してからもホテルや旅館に泊まるのが大好きで、特に小さなリゾートホテルによく泊まる。今回は少し方向性は違うが、中禅寺湖温泉(栃木)のホテル四季彩さんにお邪魔した。

湖畔の静かな立地。何より源泉から12kmの木管を流れてくると言う白濁したお湯は最高だった。客室も「お洒落なリゾート」風に改装され満足だった。畳の和室だが、リゾートで最近流行の「和風ベッド」、小上がりになっていて布団が常時しかれているので、いつでも横になってくつろぐことができる。食事も内容はお仕着せながら、レストランで摂るので熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいままおいしくいただくことができた。何より布団の上げ下げや配膳のために仲居さんが部屋に何度も出入りすることはなく、こちらのペースで楽しめる。その意味では明らかにホテルに近いスタイルだ。

が、ちょっとだけ惜しかったのは、食事やチェックアウトの時間設定。夕食スタートは遅くて19時、朝食も9時まで、チェックアウトが10時ではいずれもちょっと早すぎる印象だ。部屋に入ってくつろいだらもう夕食。朝は目覚ましで起きて、朝食後みだしなみを整えたら出発では、平日とさほど変わらない感じ。私もホテルで働いていた身。宿側の事情はよくよくわかるのだが、ホテルのサービスをベースにしたリゾートには、チェックインが15:00と遅めで、その分アウトも13:00という宿も最近は多いだけに、この設定では何となく宿側のペースに合わせて「滞在させられている」感じがする。

ここは、実は産業再生機構の支援を受けて生まれ変わった宿である。栃木の宿は、観光地としての日光の地盤低下、バブル崩壊後の社員旅行やゴルフ旅行の減少、それに地元地銀の破綻により多くの宿が産業再生機構のお世話になった。「背水の陣」だからこそ、思い切ったサービスの見直しや改装が行なわれており、高度経済成長時代を髣髴とさせる「昔ながらの旅館」から、利用者の満足度にこだわった「新しい時代の旅館」に生まれ変わっている。ただ、本当に残念なことに、そこに流れる時間だけが、ホテル時間ではなく旅館時間のままなのだ。

十分に満足させていただいたが、もしこの「流れる時間」だけが違えば、あと数千円高くても私はリピートするだろう。ちょっと惜しかったから、その点を書かせていただいた。さらにあえて申し上げれば、流れる時間がお客様ベースに変わるためには、支配人クラスや一般スタッフが本当に旅館の滞在が好きで、他の旅館(場合によっては自分の宿)にたくさん泊まってみることが必要だろう。そのとき、本当の意味でこの宿の再生が完了するはずである。

※お客様のペースで滞在を楽しむ、という点で「昔ながらの旅館」よりもホテルの方が上、という前提で書かせていただいた。あくまで、高度経済成長時代以来の、大手旅行代理店にだけ都合のいい画一的な旅館サービスを悪く言っているのであり、本来の日本旅館がもつ良い点は、それはそれで大切だと思う。また、上記感想はあくまで私の主観である。






Last updated  2009.03.18 18:44:33
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2009.03.03
そして結局、思うところあって私は大学を卒業するに当たってバス業界を選ばずホテルに就職した。ホテルでは10年間在職して11セクションを経験させていただいたという、ある意味特殊なホテリエ(ホテル業界ではホテルのスタッフのことをこう呼ぶ)であり、たくさんのことを学ばせていただいた。

もちろん、お客様に対する姿勢、お客様のご希望を察する力については、これ以上ないいい勉強をさせてもらったと考えている。ただ、私が他のホテリエより特別だったのは、「ホスピタリティ・マネジメント(ホテルをはじめとしたホスピタリティ産業の経営について横断的に研究する学問)」「ウェブマーケティング」「レベニュー・マネジメント」と出会えたことだろう。その3つがあるから、バス業界に戻ったいま業界に新しい風を吹き込めていると自負している。

ホスピタリティ・マネジメントについては、いずれ詳しくご紹介する機会があろうから今回は省略する。

ウェブマーケティングについては、「旅の窓口」や「一休.COM」等の総合予約サイトとの出会いが印象的だった。私が初めてインターネットを担当したのはもう8年ほども前になるのでインターネットもいまほどは普及していなかったが、インターネットという「大きな海」の中で、お客様を自分のホテルのサイト(いわゆるホームページ)にどうたどり着かせるのかは非常に困難な仕事だった。一方、旅の窓口などの予約サイトは、まさに「釣堀」状態である。例えは悪いが、餌を食べたくて口をパクパクさせている魚(ホテルを予約しようと探している利用者)が、そこにはウヨウヨいる。ただ、すぐ隣には別の釣り人(ライバルホテル)が糸を垂れている。隣よりちょっといい餌をつける、あるいは同じ餌でもよく見えるように工夫する、そういったほんの少しの努力と工夫で面白いように魚が釣れるのである。当然、逆もある。

私のホテルは国内系ブランドの老舗高級ホテル、言わば「おじさま向けホテル」だったので若いカップル客には不人気だったが、少しの見せ方の工夫で若いカップルや女性客がチェックインの列を作ったときには、インターネットの面白さを実感した。

またレベニュー・マネジメントとも運命的な出会いだった。過去何年かの実績データや先の受注状況などを細かくデータ分析し、稼働率が高そうな日には販売単価を上げ、逆に低そうな日には単価を下げることで稼働率を下支えする。それまで日本のホテルでは、極めてどんぶり勘定のルームコントロールがなされてきたし、反面、アメリカの教科書に書いてあるレベニュー・マネジメントは、逆に非常に細かなデータ分析がベースになっていた。中間型の、日本の実情にあったレベニュー・マネジメント手法を試行錯誤するのは、一種の知的ゲームであり楽しかったし、ホテルの実績にも目に見える形で貢献できた。

そしてある日、いま私が勤務する予約サイトが高速バス予約を始めるという記事を業界紙で目にしたのである。当面は高速ツアーバスのみを扱う。だが近い将来、高速路線バスも取り扱いたいとあった。ホテルにいた私からすれば最大の取引先が、バスも始めるというのである。

問題は、「当面は高速ツアーバスのみ」という点だった。当時は、高速ツアーバスなど違法に近いビジネスであり、品質もおぼつかなく、むしろ高速バスのイメージを蝕む存在だと思っていた。1週間、迷いに迷った末、それでも私はいまの会社にコンタクトし、転職したいと告げた。

転職を決めた理由はいくつかある。取引先として見続けたいまの会社の実力(ウェブでの集客力と取引先へのコンサルティング意識)や、古びた業界にこそ注力し変革させたいというエンパワーメント精神。高速バス業界には未だ導入されていなかったレベニュー・マネジメント概念を持ち込みやすい管理システム。だが、最大の理由は以下の通りだ。

当時(いまでもそうだが)、高速路線バスに携わる者や、それを応援する者(趣味的にバスが好きな人)はみな、高速ツアーバスの存在を蔑みながらも、黒船襲来の際の攘夷運動のようにただ追い出せと叫ぶばかりであった。そのなかで私は、たまたま実力をよく承知している取引先が、その黒船を支援するという奇遇に恵まれた。一度、黒船に乗って太平洋を渡ってみればいいではないか。その先にある国が本当に豊かであれば、その国を学んで戻ってくればよい。その決断は、たまたまバス業界にいったん背を向けホテルに就職したことで予約サイトの価値を知っている私だからこそ、できるのではないか。

私は太平洋の先で色々なことを学ばせていただいた。これからは、祖国に対しての恩返しが始まる。






Last updated  2009.03.03 22:38:38
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