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成定 竜一~高速バス新時代~

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高速ツアーバス

2013.08.08
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カテゴリ:高速ツアーバス
後回しにしていた出張が溜まっていて、今週の高速バス移動は合計2500キロ程になりそう。それでも出張で高速バスを選べるようになった点に、修羅場の1年が終わったことを実感。

本音を言うと「移行組」各社の運用(特に乗車オペレーション)が心配なのだが、もう高速ツアーバス連絡協議会も解散するし、これ以上立ち入る義務はない。前にも書いたように8月1日の夜に鍛冶橋の現場を走り回らせてもらったのを「記念」として、個別の契約がある一部の会社を除き、私はもう、「移行組」各社とは無関係なのだ。

とはいえ友人たち(おおむね「既存組」のバス事業者か、愛好家。そしてなぜか?愛好家というのは「既存組」のことは詳しいが旧・高速ツアーバスのことは詳しくない)からの質問で多いのは乗車オペレーションについてだ。乗合化するということで、どうも「既存組」の「座席指定制」のオペレーションを採用すると考えていた面々が少なくなさそうだ。

しかし実際には「移行組」のほとんどが、高速ツアーバス時代と変わらないオペレーションを行なっている。ちなみにけっこうな数の「移行組」を受け入れたYCATなど、羽田線や県内高速バスなどの「定員制」、成田線などの「予約定員制」、西武バスなど「既存組」高速乗合バスの「座席指定制」に加え、「移行組」各社は従来通り「チェックイン型」を採用しており、さらにそのチェックイン型には「完全予約制」で申請した会社とそうでない会社が混在しているという複雑さ。しかし現場は多少のバタバタはあれど回っている。

新宿地区なども、停留所名称こそ「高速バス西新宿」で統一されているが(ちなみに私の命名)、各社が用意した待合施設で必ず事前チェックインをする必要があり、ウェブ画面や予約確認メールなどでは停留所および発車時刻ではなく、待合施設の場所と集合時刻が案内されている。ここがどうも、「既存組」の運用に慣れている面々には不思議に映るらしい。

この「既存組」高速乗合バスの運用(以下:乗合型)と、旧・高速ツアーバスの運用(以下:ツアー型)の差が生まれた背景はシンプルで、前者が鉄道(というかマルス)の考え方をベースにしているのに対し、後者が航空やホテル、さらには旅行業界の考え方を元にしている、というだけの話。蛇足ながら法制度上は特に運用方法について制約はなく(当たり前か)、どちらの運用が自社の商品や販路構成と合っているか、という点で選べばいい。余談だが、共同運行化する前の中央高速バス富士五湖線は、富士急便のJTB発券分のみがチェックイン型だったのは懐かしい思い出。

ポイントは、「座席をいつアサインするか」という点に尽きる。乗合型が、予約時点で座席番号まで決定する(乗客に伝えるかどうかは別。きわめて例外的に一度決めた座席を事業者都合で変更するケースもあるが、その場合も必ず代替の座席を確保する)のに対し、ツアー型は、座席定員まで予約を受け付け、出発直前に事業者側が全予約をまとめてアサインするという違い。それぞれにメリットとデメリットがある。

ツアー型の長所は、座席アサインが合理的にできること。乗合型のように虫食いに席が埋まることはなく、遅く予約したグループ客が離れ離れになることはない。窓側などの希望も(よほど希望が集中しない限り)反映できる。女性客は後方、男性客は前方にアサインする「女性安心」マークを「移行組」各社がそれこそ「安心」してウェブ上で表記できるのもこの運用だからだ。乗下車場所ごとに号車を分け、配車を合理化することも容易だ。

さらに、それを上回る長所が販売面。旅行業界は(JTBなど「総合大手」を除き)商品を企画するホールセラーと、店舗を構え複数のホールセラーの商品を代売するリテーラーとに分かれるが、リテーラーに販売を委託する際の運用は簡単な方が喜ばれる。ツアー型だといちいち電話等で号車・座席番号のやり取りをする必要がないのだ。「移行組」の高速バスには、TDRなどテーマパークを組み込んだパッケージの一部として組み込まれている例が多いから、簡単には乗合型には変えられないだろう(TDRについては、「既存組」の長距離高速バスはあまりうまくいかなかったが、運用がツアー型であったならば歴史は変わっていたかも知れない。もちろんそれ以外の要素も大きいけれど)。

したがって乗客は自らの号車・座席番号を知らぬまま乗り場に集まるので、必ずチェックイン作業が必要な点が短所。チェックインが必要な以上、乗客は早めに集合場所に集まる。これが「集合場所でのタムロ」問題につながる。<「既存組」にも路上の高速バス停があるじゃないか?>という指摘もあるが、コンビニや飲食店で適当に時間をつぶして直前に集合する乗客が多い「既存組」とはここが異なるのだ。今回の待合施設設置の件は、本質的には待合そのものよりも「集合」と「乗車」を分離する意味の方が大きい。

そこまでしても(また、チェックイン要員のコストをかけても)、夜行路線に関してはツアー型の方が合理的な面は多いなと私は感じている。だから、制度上乗合化したという理由で運用も乗合型に変える会社はほとんどないだろう(続行便を出しづらい状況では若干流れは変わるかもしれないが)。もっとも象徴的なのが神姫バスだ。姫路・神戸~新宿線の「既存」の高速乗合バス「プリンセスロード」の基幹システムは発車オーライネット(持ち席管理でSRSも使用)で運用は乗合型。一方で今回の件で乗合化した神姫観光バス運行の「ハートライナー」の基幹システムはドリームジャーニーで、当然運用はツアー型(神姫バスの高速バス予約センターで、プリンセスロードが満席の日などハートライナーの案内をしたりしてるのかなあ)。

ただ、そんな「差」を冷静に見つめ、お互いに学べなければ進歩もない。「異文化」を重ね合わせ、オペレーションの進化や、システム開発のアイデアという面で業界を前に進めることこそ、私が業界のお手伝いできる最大の役割に違いない。






Last updated  2013.08.08 15:30:59
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2013.08.06
カテゴリ:高速ツアーバス
昨日、高速ツアーバス連絡協議会の年次総会を1ヶ月遅れで開催し、8月末の解散を決議した。本来ならば、万歳三唱?したり、メディアを招いて派手に伝えてもらったりすべきところかも知れないが、関越道事故と、事故以降の論調を踏まえ粛々と終わらせた。それでも、国土交通省と日本バス協会から幹部の皆様に来賓としてご臨席いただき、懇親会も盛り上がった。高速ツアーバス業態の成長も、同協議会の設立も、そして事故後の修羅場を乗り越え無事に移行完了できたのも多くの関係者のご協力の賜物であり、まずは深く感謝。

組織としての解散自体はともかく(これにも、業態がなくなったんだから即解散という考えと、少なくとも各社の事業が安定するまでしばらくは残すべき、という考えがあるが)、今般の制度改正について、突き詰めて考え抜けば様々な思いが、私自身にはある。

まず高速ツアーバス連絡協議会としては、「あり方検討会(旧)」冒頭の意見表明(2011年1月)において、<安全性・公平性を担保しつつ、柔軟な営業を可能とし、高速バス市場の最大化を支援する「新制度」を時間をかけてでも構築する>ことがゴールだと表明している。公平性とは「停留所の権利へのイコールアクセス」であり、柔軟な営業とは「レベニューマネジメントなど今日的なマーケティング手法」を指す。その点、今回の制度改正は、その両面において(若干の不足点はあるものの)協議会の意向が実現したと言える。

もっとも同発表を私は、<IT化など消費環境の変化、現制度の限界を踏まえ、短期的、長期的両面のアプローチで制度の最適化を目指す「ロードマップ」を作成し、期限を決めて「新制度」の構築を目指してはどうか>とまとめており、もう少し長期的に物事を考えていたと、今振り返ればそうわかる。そしてあの資料を作り発表した際、組織の意向としてはそれ以外の選択肢はないと納得しつつ、私個人としては複雑な思いが拭えなかった。一本化を進める役回りをなんとか務め終わった今でも、複雑な思いは消えたわけではない。

ひとつには、国の制度のあり方の話。高速ツアーバスは規制が甘いとよく言われるが、実際には旅行業法における消費者との契約に関する規制も、道路運送法における貸切バスの運行に関する規制も、特に後者の方は決して甘い内容ではない(乗合バスよりも貸切バスの方が危険であっていいわけではない)。だが、それを守っていないヤツがいる、つまり問題点は規制の「実効性」にあるのだ。だからといって事業モデル自体を禁止するというのは、どう考えても理屈に合わない。もっともその点は、議論の中で名古屋大・加藤先生が、<高速ツアーバスという事業モデルには、法令遵守意識の低い貸切バス事業者が運行にかかわりやすい「リスクを内在」している>と述べられ、これは非常によく考え抜かれた発言であったので、これを機に、一本化という結論へ向け急速に議論が収斂し始めた。

「理屈」の方はそれで片付いたのだが、もう一つの観点は、業界のために本当にプラスになる結論かどうかという点である。「あり方検」では(私は「ツアーバス側」で参加していたわけだが)、「既存側」から集合場所問題が持ち出されるたびに、<では停留所の権利の開放を>と、オウム返しを続けた。「戦略」としては、<では一般的な貸切バス、特に観光バスツアーや、幼稚園などの通園通学バスの路上乗降は問題ないのか?>と返す手法もないではなかったが、ここは停留所の権利一本にしぼった。停留所の権利という話は、間違いなく「既存側」のアキレス腱であった。

結局、ご存じのとおり、高速ツアーバス各社の移行に際し国土交通省が停留所の確保を「支援する」ということで決着した。結果としては「ツアー側」は停留所を確保し安定感を持って事業を継続でき、「既存側」は高速ツアーバス各社を従来よりおおむね不利な乗降場所に追い込むことができた。「あり方検」当時から描いていた構図がほぼそのまま実現したわけだ。しいて言えば、事故の影響とそれを受けた移行期限短縮の結果、「ツアー側」の状況(特に停留所と管理受委託制度の詳細)が想定よりは不利な条件にはなってしまったが。

問題は、この結果が業界に何をもたらすのかという点だ。短期的には、続行便設定の難しさなどから繁忙期を中心に「ツアー側」は事業規模の縮小を余儀なくされる。もっともそれは高速ツアーバスの6割を占める大都市間3路線において影響はあるものの、地方路線が98%を占める「既存側」にとっては大したメリットはない。ただし「既存側」の本丸たる地方向け、短中距離路線においてもやがて本格的な競争が始まり得るリスクを「既存側」が明確に認識するきっかけになれば、中期的には業界の再成長を呼び込むと私は見ている。

ではその先はどうなるのか? 高速ツアーバス業態(募集型企画旅行)は短・中距離路線に不向きだと何度も書いてきたものの、それでも福岡~宮崎や大阪~徳島などでは「ツアー側」が一定の存在感を勝ち取ってきた。そして高速ツアーバス業態には参入障壁はない。旅行業免許や貸切バス事業許可は要件さえ満たせば取得できる(繰り返すが、残念ながらその要件を守っていないヤツがいたことが問題なのだ)。一方、今月以降、高速バス市場に参入を望む者は、すべからく、停留所の権利という見えない壁を乗り越えなければスタートラインにも立てない。業界の顔ぶれが、2013年8月1日時点で事実上固定されたことになる。そのことが、長期的に見て業界の活力を奪ってしまわないか、私には不安である(ちなみにこの「停留所の権利」に関して、以前ご紹介した大分交通・蛯谷さん達の論文が、運輸政策研究機構のサイトで読めるようになったのでご確認されたい)。この問題は、今回の制度改正に関わった者の責任として、いつも念頭に置いて仕事を進めていきたい。

さて話は変わるが、連絡協議会が無事に解散することで、個別に契約をいただいている一部の会社を除くと、私はもう「移行組」各社とは無関係になる。本音を言うと、私にとって「同志的」感情を共有するのは「既存組(の中の、改革派)」の人たちであり、旧・高速ツアーバス各社の多くとはしょせん「仕事上の関係」という意識であった。しかし今回、移行期間が1年に短縮されるという修羅場を経験し、特に停留所調整やその後の段取りを主体的に担当したメンバー達とは初めて「仲間意識」が芽生えたのも事実である。いつだって、どんな背景があれど、戦友は貴重な存在である。今後はむしろ私は「既存組」のブレインとして彼らとは競合先として向き合う機会の方が多いだろうが、バイタリティ溢れた彼らが再び業界を引っ掻き回してくれることを、恐れと期待を込めて心から祈っている。






Last updated  2013.08.08 15:31:53
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2013.03.03
カテゴリ:高速ツアーバス
一昨日は、関東運輸局主催「新宿駅周辺高速バス停留所調整協議会」。会議の内容は非公開になのでご紹介できないが、2時間の会議のために、その何倍何十倍もの準備時間と多くの関係者のご協力が必要だった点だけはお伝えしたい。新宿を筆頭に、とにかく停留所の件をなんとかしないと高速ツアーバス各社は食っていけないはめになる。実はときどき、万一停留所調整に失敗した時のことが夢に出てきて、夜中に目覚めてしまうことがある。

さてこのブログでは、既存事業者の動きを中心にご紹介し、高速ツアーバス各社の乗合移行に際して具体的な動きやそれに対する論評を行なってこなかった。ある会で専門紙の記者さんから、<成定さんはもうツアーバスから離れつつあるというウワサだが>とご質問を受けたが、たしかに個人的な思い入れの強い弱いはあるとはいえ、高速ツアーバス連絡協議会の顧問の仕事をお引き受けしているのも事実。見捨てたりしたつもりはないのだが。

彼らはいま乗合移行に向け準備の真っ最中だ。ここでいう準備とは大きく分けで3つある。第一は、乗合の法的要件を満たすことで、小さいもので言えば車両の要件(方向幕など)や運行管理者の資格など。大変なのは従来はバスを持たなかった旅行会社が、車庫を設け車両を買って乗務員を雇い、バス事業者になるパターンだ。もっとも、実は高速ツアーバスの担い手は旅行会社と貸切バス事業者を兼業する会社が多かったから、このパターンは10社ほど。とはいえ、当事者にとっては「生き様」「生業」まで変える大きな変化だ。

なお、「楽々道中」というシステムがある。「メイテツコム」と「メイエレック」(ともに名鉄グループのシステム会社)が共同開発する貸切バス運行管理システムだが、高速ツアーバス各社の乗合移行に伴い「高速乗合バス版」もスタートさせる。その発表会では私も業界の今後など講演させていただいた。既存事業者は「平場」の路線バスも含む大掛かりなシステムをおおむね導入済みだから、本システムのターゲットは高速ツアーバスからの「移行組」。名鉄グループが結果として彼らの移行をサポートする形になったのは皮肉ではあるが、それが皮肉に感じられるところがこの問題の矛盾の象徴とも言える。

第二の準備が、法的要件以前に、漠然と存在する「貸切」と「乗合」に求められるレベルの差を超えること。本来は貸切の方が乗合より高いものを要求されるべきだと思うが、現状はなぜか逆。要するに乗合の方がチェック項目が多いから、結果として細かいメッシュで規制の網がかかっているということだ。第三が停留所問題。なお、大規模発着地の停留所確保は高速ツアーバス連絡協議会が主体的に担当しているが、地方の停留所調整(と、先の二つの課題)は、移行を目指す各社が個別に乗り越えるべき課題。専門家をご紹介するなどフォローはしているが、あくまで自分の意志と努力で乗り越えていただくよりない。

ところで最近、特に停留所の件で、高速ツアーバスの企画実施会社と既存の乗合事業者が会う機会が増えた。というよりこれまでそんな機会はなかった。私はそれに立ち会ったり報告を聞いたりする立場で、嫌な言い方だが、これが非常に興味深い。

7~8年前の時点で、高速乗合バスのあらゆる関係者は、高速ツアーバス会社を、見習うべき点など何もない、レベルの低いヤツらだと見下していただろう。かくいう私自身がそうだ。「きちんとした既存乗合/ならず者のツアーバス」というのが当時のステレオタイプだ。で、停留所の件があって高速ツアーバス会社と初めて会うことになった既存事業者の中には、未だに江戸時代のままの感覚で(言い過ぎ?)、向き合うことさえ避けようとする人もいるようだ。<まだそんな感覚の人がいたのか>というのが私の率直な感想。

一方、ここ3~4年で「新しいステレオタイプ」も登場した。それは、「安全面は立派だが営業面では保守的で顧客志向でない乗合/ウェブを中心にマーケティングが上手で業界にイノベーションを起こしてきたツアー」というもの。先日も既存事業者と高速ツアーバス企画実施会社の担当者どうしを私が紹介する機会があり、既存側が名刺を出しながら、<御社ほど集客は上手じゃありませんが>とおっしゃっているのを聞いて、むろん社交辞令や謙遜もあろうが、既存事業者の間で「新ステレオタイプ」が定着してきたことに驚いた。

その上でもう一回かき混ぜるようなことを言うが、では本当に高速ツアーバス各社は、成熟産業たるこの業界に自らイノベーションを起こしたと胸を張れるだろうか。前にも書いたが、2001年にオリオンツアーと西日本ツアーズ(現・WILLER TRAVEL)が東京~大阪の商品を作った(高速ツアーバスという呼称もなかった)時には、単にテーマパーク直行バスの派生形という自己認識に過ぎなかった。それがある日、ウェブマーケティングを武器に急成長した。その大きなうねりを、自らの手で作り出したと言える会社は、いったい何社あるだろう。たしかにWILLERはそうだろう。地場で孤軍奮闘した海部や、既存事業者ながらあえて一歩踏み出した弘南も、その一つだろう。他にも数社あるかもしれない。

逆に言えば、それ以外の多くの会社は、もちろん個別に見ればさまざまな苦労も挑戦もあったには違いないが、イノベーションを起こしたと言えるほど、斬新なアイデアを打ち出し、多くの苦難を乗り越え現在の立ち位置を築いたと、胸を張って言えるだろうか?

高速ツアーバス各社は、いま一度、この試練が持つ意味を真剣に考える必要がある。むろん、新制度が上から押し付けられたもので、さらに関越道事故により(自社の事故でもないのに)期限が大きく短縮され、受け身になってしまう気持ちはわかる。しかし、この環境変化さえ乗り切れずして、後年、誰があなた方のことを「業界を変えた」と評価してくれようか。イノベーションとは、今とは違う姿を絵に描き、それを実現していくことである。あなた方が、放っておけば沈みゆくだけのこのバス業界に本物のイノベーションをもたらしてくれたと既存組から評価を受けて初めて、一緒に育ってきた私も、業界に対する自分の役割の第一段落を終えることができるのだ。歯を食いしばってでも、この試練を乗り切りたい。私も、(時には自らのクライアントと停留所の交渉をするというような難しい立場ながら)サポートを惜しむ気はない。次の季節は、もうそこまで来ているはずだ。






Last updated  2013.03.03 18:09:03
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2012.05.21
カテゴリ:高速ツアーバス
事故から3週間経過しました。もう3週間?、とカレンダーを見てあらためて驚いたほど、ずっと報道や関係諸機関への対応に追われておりました。

その間、本来の業務(主に高速路線バス事業者やその基幹システムを対象に、「新たな高速路線バス制度」対応や新しいマーケティング手法導入の支援)のほとんどを後回しにせざるを得ませんでした。高速ツアーバスのことが理由で、高速路線バス事業者各社にご迷惑をおかけするのははなはだ心苦しいのですが、皆様には無理を聞いていただきました。

個人的な話で恐縮ですが、私自身と高速ツアーバスとの現在の関係だけで言えば、高速ツアーバス連絡協議会の顧問(新制度対応担当)を仰せつかっているのと、2社ほど個別にコンサルティング契約があるに過ぎません。本件についてどこまで関与しなければならないか、私自身にも最初は迷いもありました。しかし、次のことを考えました。
【1】二度と同様の理由で事故を起こすわけにはいかない。
【2】また、「新たな高速路線バス制度」を象徴とする、せっかく動き出した高速バス(どちらかと言うと高速路線バス)の改革の動きを止めるわけにはいかない。

何度も繰り返し書いていることですが、<やっぱり高速ツアーバスは間違っていた>あるいは、<やっぱり自分たちのやり方だけが正しかった>と、高速路線バス各社が考えてしまえば、高速バスの改革は動きを止めてしまう。また、(少なくともまっとうに事業を行なっている>高速ツアーバス各社やその従業員の生活を守る必要もある。そう考えると、協議会顧問という枠を超えて、高速ツアーバス業界の善後策策定や関係諸機関との対応について、踏み込んで協力するという答えが自ずと出てきました。

一方、本来業務が遅れに遅れてご迷惑をおかけしているにもかかわらず、多くの高速路線バス事業者から、<体調はだいじょうぶか?>、<今月はサボった分、来月はめいっぱい働いてもらうからな>と、温かく声をかけていただき本当に感謝しています。実は事故翌日、テレビ局をハシゴしながら体力的にも精神的にも疲れ切っていたとき、ふと見上げると、本当に偶然、都内の首都高速を、バイト時代の「古巣」である京王の高速バス車両(空港線)が通過していきました。もともと、京王のホームグラウンドである中央道以外の場所であのカラーリングに出会うと嬉しくなるタチなわけですが、あの時は本当に疲れきっていたなかでしたので、誰かがガンバレと言ってくれているようで涙が出そうになりました(勝手な妄想なのですが)。

本来業務と合わせ、引き続き時間がタイトな状態が続きそうで、本ブログの更新が日常ペースに戻るまではまだしばらくかかりそうです。取り急ぎ近況を報告させていただきました。






Last updated  2012.05.21 11:08:12
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2012.05.07
カテゴリ:高速ツアーバス
4月29日(日)未明、関越自動車道で高速ツアーバスの大きな事故が発生いたしました。亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。また、けがをなさった方々の回復を願っております。

私自身、あまりに大きな事故に大変ショックを受けております。同時に、新聞、テレビ、ラジオ等の報道対応をはじめ、業務量が急激に増加しております。まずはそれらの対応を一つひとつ真摯に、真剣に行なうことを今は考えております。

様々な立場の多くの方から、<大変だと思うけどがんばれ>という声も頂戴し、感謝しております。引き続き皆様のご支援をお願いいたします。






Last updated  2012.05.07 14:56:13
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2012.04.09
カテゴリ:高速ツアーバス
「バス事業のあり方検討会」の最終報告書について、本日付『東京交通新聞』第一面でも報じていただいた(上記リンクから「立ち読み」可)。とはいえ、高速バスの話より「バス・タク併用認める 同一営業所で効率運行 地域公共交通確保に一石」の方が大きな扱いなのがタクシー中心の同紙らしい。この件や「乗合/貸切併用登録」「貸切バスの営業区域」なども、機会があれば解説してみたい。

さて、前回、<高速ツアーバス各社にとって、高速乗合バスに移行するのはメリットが大きい>と書いたわけだが、とはいえ「はい、そうですか」と簡単に移行できるわけではない。まずご理解をいただきたいのは、理屈ではわかっていても、これまでの自分たちのやり方を半強制的に改めさせられることは気分のいいものではないし、何より誰だって怖い。一人ひとりの生活がかかっているのである。それに、特に旅行会社からバス事業者に変わらないといけない数社にとっては、かなりの資金も必要になる。

合わせてネックになるのが、やはり「バス停の確保」問題だ。報告書でも、<特に、移行に際して必要となるバス停留所については、国土交通省において高速バス停留所調整協議会(仮称)の開催や同協議会における調整の指針となる高速バス停留所調整ガイドラインの策定等を実施し、関係者の協力を得つつ、その確保を支援する。具体的には、大都市圏のターミナル駅周辺などの優先度の高い地区を中心に協議会を設け、関係団体の意見やパブリックコメントの結果を踏まえて策定する高速バス停留所調整ガイドラインに基づき、調整を実施する。確保できた停留所は公平かつ客観的な基準により配分する。>とある。

これに対し、既存の高速乗合バス事業者側の反応は様々だ。もちろん多くは「様子見」なのだが、現実的な事業者の中には、現在の自社バス停を死守すべく、駅の裏側や、駅前から交差点を一つ越えた辺りの「1.5等地」に新バス停を設置してはどうかと周囲と根回しを始めた会社もあるようだ。もちろん、既存事業者が勝手にバス停を「采配」できるわけでないとはいえ、少なくとも考え方としてはこれは非常に賢明な選択と言えよう。

おそらく「停留所調整ガイドライン」には、新設される、または既存事業者と共用となるバス停について、高速ツアーバスから移行する事業者の「既得権にはならない」との表現が入ると考えられるものの、それでも昨日書いたように、そのバス停を使い「移行組」が短・中距離路線に参入する蓋然性は大きい。長距離夜行ではあまり集客力と連動しないバス停の位置だが短・中距離路線では大きなポイントであり、<どうぞどうぞ、この辺りでいかがでしょうか?>と先に「1.5等地」に「隔離」してしまうのは既存側にとって得策だ。

逆に、<なぜツアーバスごときにバス停をあげないといけないんだ>とばかり、客観性のない理屈をこねバス停の新設や共用を拒み続けたらどうなるだろう。報告書には、<なお、これらの取り組みによっても必要なバス停留所の確保が進まない場合は、バスターミナルへのイコール・アクセスを義務付けている英国の例や混雑空港における発着枠の配分ルールなども参考に、制度整備の可能性を含め、さらなる取り組みを検討する必要がある>とある。「英国の例」とは、高速バス分野の規制緩和(需給調整撤廃)後においても「バス停の権利」がネックになって新規参入が進まなかった同国において、公共のものはもちろん既存事業者自身が運営する私有地のコーチ・ステーション(高速バスターミナル)にも、一定割合で新規参入側の入線受入を義務付けた「アファーマティブ・アクション」を指す。

つまり最もアグレッシブなパターンとして、「バス停再配分の制度化」が考えられるのだ。もっともそこまで行き着かなくても、「内々での話し合い」でコトが実現しなかった場合、地域ごとに、「高速バス停留所調整協議会」を開催することとし、運輸局長名で関係者を招集することになる。既存の乗合事業者の本心では「先祖代々受け継がれた己が領地」であるバス停も、公の場に出てしまえば、そう主張することはできない。福島県であったように公正取引委員会マターとなってしまったり、誰か(誰?)のリークにより地元メディアで「●●交通、バス停新設を拒否。新規参入側は既得権益と反発」などと報じられてしまったりしたら、地元との関係を最重視する各事業者にとって得なことは何もない。

あえてネガティブに考えれば、どこか1~2か所の地域において、そのような「騒動」が起こりメディアを賑わせたならば(そうなると間違いなく私はこのブログで紹介するだろうし)、全国の残りの地域では調整が一気に進み関係者の苦労は少なく済むわけだが、できればそのような事態にはなってほしくない。少なくとも、私のクライアントである乗合各社にだけは、その騒動の主人公にはなっていただきたくはない。しばらくの間、各社におかれては、バス停関係の発言(特にメディア対応)にはよく注意いただきたい。

いずれにせよ報告書にある通り、<移行の成否及び時期は、バス停留所の確保の成否及び時期に大きく依存することから、関係者に対し、積極的な協力を求めていくこととする>。なお、<この際に大都市でも、事業者別のターミナル配置ではなく方面別とするなど、より利用者にわかりやすいようバス停を再配分したらどうか?>という意見もお聞きする。もちろん、それが「一つの理想」であることは認めたうえで、私自身は、今の高速バス事業にとってそれはマイナスだと考えている。5回にわたって「バス事業のあり方検討会」最終報告書について解説してきたが、(貸切バス分野について書けなかった点に消化不良感は残るものの)いったんそれは終了し、まずは上記「わかりやすい停留所再配分」という言葉を鍵にして高速バス事業の今後を考えるところから、次回以降は通常のブログの形(つまり、単に私が思いついたり記事掲載があったりした時だけ気ままに更新)に戻したい。

最後にもう一度、「バス事業のあり方検討会」に関係した全ての皆様に、心から感謝申し上げる。






Last updated  2012.04.09 11:02:22
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2012.04.05
カテゴリ:高速ツアーバス
「バス事業のあり方検討会」最終報告書は、既にご報告した『毎日新聞』等(共同通信配信)や『日本経済新聞』のほか、昨日付『フジサンケイビジネスアイ』でも報道された(『SANKEI BIZ』で閲覧可。また同紙は昨年10月10日1面トップでもこの問題を紹介いただいた)。今回の見出しは、<「ツアー」VS.「乗合」競争激化>。一部を引用すると、<「両者の競争が激しくなるのは確実」(大手バス会社)>な中、<高速ツアーバス業界は、乗り心地の良さや付加価値の高いサービスで差別化を図る>としてウィラーやオリオンの事例を紹介する一方、<大手バス会社に目立った対応策がなく>と断言されるなど、高速乗合バス事業者には「トホホ」な論調。もっとも、<報告書自体が乗合事業者を「アホ」やと言うてるようなもんやから>と乗合バス事業者の管理職の方が嘆いておられたから、見事に本質をついた?記事ということか。

つづいて、昨日の日経の記事をベースに、昨日夕方のFNN(フジテレビ系)『スーパーニュース』でもご紹介いただけた(動画をFNNサイトで閲覧可)。日経記事をなぞって、制度柔軟化を歓迎するJRバス関東のコメントと、<全社移行という方針>と高速ツアーバス連絡協議会の方向性を紹介。なおこちらも昨年11月20日の同番組の続報である。引き続き、各メディアでの報道を確認しだい、本ブログでご紹介する。

さて本日このブログは、昨日までと視点を変え、高速ツアーバス各社への影響、がテーマ。実は記者さんをはじめ、<高速ツアーバス各社は本当に新制度に移行するのか>というご質問が多い。特に乗合事業者の皆様はかなり疑念的に感じておられるようだ。一方で現実は、既報の通り、<新制度への移行義務はないが、高速ツアーバス各社が加盟する高速ツアーバス連絡協議会(東京・品川)によると、最大手のウィラー・アライアンス(東京・港)など、加盟する約40社のほぼ全社が移行する方針>(日経)なのである。

もちろん、実際にはハードルは決して低くない。現在、法令上は「乗合」も「貸切」も求められる安全性は同じだが、現実問題としては各種運用の差などもあって乗合の方が高い安全性を求められる。監査の頻度、瑕疵があった際の罰則の大きさ(特に「服喪」)などを考えると、「募集型企画旅行+貸切バス」形態よりは事実上の縛りは強いだろう(なお事業許可の取得自体は困難ではない。2002年の需給調整撤廃以降、乗合バスの新規参入に法令上の大きな制約はない。あるのは「バス停の権利」という見えない壁だけである)。

さらに高速ツアーバス業態では、運行する貸切バス事業者が事故を惹起した場合、顧客対応上の全責任は企画実施会社にある反面、法令上の責任を負うことはない。運行事業者に重大な法令違反が判明しても、社会的責任を除けば、企画実施会社が問われるものは何もない。だが新制度に移行した場合は、「受託者」にあたる貸切バス事業者の瑕疵が、一定程度の割合で「委託者」の罰則を招く。現在、<安ければどこでもいい>という感覚で貸切バス事業者を選定している企画実施会社がもしあれば、改めないと自らの身に返ってくる。

そして何より、現状ではバス事業者でない純粋な企画実施会社においては、まずは(自社ブランドで運行する台数のうち最低でも3分の1に当たる車両数を保有する)バス事業者にならなければ新制度に移行することができない。この点、私としては、公式非公式な各種議論の中で実は若干抵抗した部分である。既に鉄道や運送事業において認められているよう、車両を1台も所有せずとも乗合バス事業に参入することを認めるべきだと主張した。「経営・企画」と「運行」は別々の会社でも事業は成立するはず、という意見だ。ただ、<実際にバスを1台も所有・運行しない会社が、いざというときにバス事業者の気持ちを理解して何かを判断できるだろうか?>という反論(他人同士はなかなか分かり合えないもの、という論理であったので、関係者は「他人性議論」と呼ぶ)も十分に理解でき、主張を取り下げた。一連の議論で、私が自らの意見を曲げた数少ない個所である。

この、<旅行会社からバス会社に「生き様」を変えないといけない>点については、新制度に関わった身として、該当する数社に課せられた苦労の多さに申し訳ない気持ちもある。

それでも、上述のように移行義務はないのに全社が移行を表明してくれた。ほとんどの企画実施会社が、貸切バス事業者をM&Aするとか、近しい貸切バス事業者と合弁で新しくバス事業者を設立する、あるいは自らバス部門を立ち上げるために必要な人材を揃えるなど、自らの方向性を決め、例えば金融機関との融資の調整など具体的な準備に入っている。たしかに、昨日の日経にあるように、<資金力のない中小の中には「採算が合わず撤退する会社も出る」(業界関係者)>という例があるやも知れぬが、万一そういう事例が発生しても、優秀で意欲ある担当者たちなら、「即戦力」として他の事業者で腕を鳴らしてくれるだろう。

では、高速ツアーバスの各企画実施会社が、「生き様」を変えハードルを越えて新制度に移行する理由は何か? 一つは、法的に高速ツアーバス業態を明確に禁止しないとはいえ、「検討会」での議論を踏まえ、私たちが「大人の対応」を各社に真摯にお願いし理解してもらえたことは事実。そしてもう一つ、やはり何をどう考えても、経営的にみると、「高速乗合バス業態の方が実は有利」なのである。次回は、その「実は有利」の具体的な内容を検証したい。






Last updated  2012.04.05 08:52:23
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2012.03.23
カテゴリ:高速ツアーバス
本日、「バス事業のあり方検討会」最終回が無事に終了した。一昨年12月に初回を開催して以来、1年3ヶ月。一時はどうなることかと思うほど議論が荒れたこともあったが、最後の数回は驚くほど平穏で、本日も「最終報告書」の文案について粛々と議論が進んだ。座長の竹内先生をはじめ、事務局を担われた国土交通省自動車局旅客課の皆様も、いろいろ気疲れもあっただろうが、最後はあるべき姿へよく導いてくださったと思う。深く感謝。

最終報告書については、これから細かい修正などを経て4月上旬をめどに発表されるだろうから(ちなみに、パブリックコメントの募集も最終報告書発表と同時になる見込みとのこと。予定から数か月遅れている。制度改正を前提に新年度の事業計画を立てておられる数社にとっては施行日が気になるところだが、運賃制度は5月ごろ、管理受委託は夏ごろではないだろうか)、報告書の内容についてここでは詳しく書けない。ただ、細かい点を除けば、おおむね本ブログや専門紙等で伝えられてきたほぼその通りの内容である。

思えば、今からちょうど6年前の4月1日に、私はホテルから楽天に転職した。今の私からは想像できないだろうが、その時点では私はガチガチの「アンチ・ツアーバス論者」だった。それでも、まずは高速ツアーバスをサイト上で取扱うと発表したばかりの楽天に転職を決めたのは、ぼんやりとだが、頭の中に一つの絵が浮かび上がってきていたからだ。

そのさらに5年前、私はホテルの担当者として、楽天トラベルの前身である「旅の窓口」をはじめとしたウェブ宿泊予約と、RM(レベニューマネジメント)に出会った。実は仕事をがんばり過ぎたのか、もともと線の細かった私は、体調を崩して2年間も会社を休ませてもらっていた。なんとか復帰した先が、ウェブ予約やRMの部署だった。部署と言ってもその時点ではまだ正式な組織ではない。宿泊予約の管理職の方が片手間にやっていただけだったのが、それらが急速に成長し手に負えなくなり、<とりあえずアルバイトでいいから補佐役を>と要望を出していたらしく、私はその「アルバイトの代わり」だったのだ。

最初は上司の指示通りに在庫出し入れ(全客室中何部屋を自社サイト、何部屋を楽天や一休、じゃらんで売るかの登録作業)などを無感情にやるだけだったが、ある程度まで判断も任せてもらえるようになったところ楽しくて仕方なくなり、気が付いたら数字もどんどん上がって、<数字を上げてくれるヤツ>という評価を社内でいただけるようになった。

そんな中、趣味の分野で付き合い続けていた高速バスに、このウェブ予約やRMをなんとか導入できないかと思い始めた。部屋(席)を旅行会社に預けっぱなしにするのではなく、ホテル(バス事業者)の側でどの販路で売りたいかを能動的にコントロールする。手数料率や販売力、予測稼働率を見比べながら、売上が最大になりコストが最小になる組み合わせを自ら選んでいく。それどころか予測稼働率や競合の価格を見て、価格さえリアルタイムに上下させる。サイト上の表現一つや、メールマガジンなど広告ツールの活用で、自ら積極的に潜在需要にアプローチする。そして、結果は常にリアルタイムで追いかけてくる。

<楽天、高速バス予約事業参入>という新聞記事を読んだとき、したがって、私の頭の中には、高速路線バス各社の予約センターのスタッフが、楽天トラベル等の管理画面に向かって運賃や在庫(販売可能席数)をリアルタイムにコントロールする図が、ごく自然に、ぼんやりと私の頭の中に広がった。過去データや受注状況から細かい分析を行ない、続行便の設定台数について精緻な検証をしている映像も思い浮かんだ。特に、学生時代のアルバイトで深くかかわった中央高速バス富士五湖線について、夏の繁忙日など車両と乗務員の不足で続行台数にキャップがかかっていたのを知っていたので、帝産やKMといった老舗貸切専業者の車両が京王や富士急行の続行として「西口」を出発するイメージが、まるで「ぼかし」の入ったテレビ映像のようにぼんやりと目の前に浮かび上がってきた。

もちろん、その時点では、それらは現実的な構図とは言えなかった。私自身はその時点で、<制度を変えてやろう>と考えていたわけではない。考えていたわけではないが、<いつかそうなっているのではないか? だとすれば、ぜひ実現したい>とは思った。

その後私は、いったんそのことは忘れた。目の前にある仕事として、「ヒヨコ」に過ぎなかった高速ツアーバス各社を営業的に成長させることをまずは考えた。次に、楽天自身の事業上のリスクを最小化するためにも、ツアー各社の永続的な成長のためにも、団体を作って業界を整序化することに努めた。そして「あり方検討会」の委員にご指名いただき、あるいは一委員としての枠を超えて新制度策定のお手伝いをさせていただく機会に恵まれた。あの時、6年前、ぼんやりとしていた映像が、いまピントが合って鮮明になろうとしている。

「アンチ・ツアーバス論者」という「自画像」を否定した所から、全てが始まった。楽天がまず高速ツアーバスを徹底的に育て上げたことで、いったんは高速路線バス各社から背を向けられたことは事実だが、価格設定と供給力確保の柔軟さが、高いマーケティング意識(ウェブマーケティングの活用や柔軟な発想など)と結びつくことで、高速バスにさらなる成長余地があることを示すことができた。「あり方検討会」委員の皆様も、立場を超えてその点はご理解くださったと思う。その結果、ぼんやりと思い描いた映像が、結局は高速路線バス各社においても現実のものとなろうとしている。

とはいえ、まだ制度という「ハコ」が出来たに過ぎない。高速ツアーバス各社がハードルを乗り越え乗合に移行し、また既存高速路線バス各社が新制度の柔軟さを活用し事業を成長させるには、まだもう少しの時間と努力が必要だ。そのための支援は惜しまないとともに、いつかどこかで、私自身の「いまの自画像」を、もう一度否定することが、高速バスの「次なる変革」を運んできてくれるのかも知れないと、いまそう感じている。






Last updated  2012.03.23 16:37:37
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2012.02.26
カテゴリ:高速ツアーバス
事前に公表されていた議題(「高速ツアーバスの『新高速バス』への移行について)が議題だったためか、あるいは前日の「発車オーライネット戦略共有会」で皆の前で、<明日は「あり方検討会」>と言ったためか、23日午後の「バス事業のあり方検討会」の結果について多くの方からご質問をいただいた。議事自体は非公開(後日、議事概要は公開される)だし手元資料にも「委員限り」のものが多いので全て書くわけにはいかないが、ざっくり言うと、「あり方検討会」のテーマの一つであった「高速乗合バス(本ブログでは高速路線バスと記載)と高速ツアーバスの一本化」については無事に議論を終えることができ、あとは実務的な作業が(山ほど)待っている、という状態になった、と断言していいだろう。

繰り返すが、私自身は今回の結論は100点満点だとは考えていない。今回のオペレーションが完了した後、高速バス事業への新規参入は今より困難になる。もちろん、参入のハードルが低すぎることは安全性などにおいて問題を誘引することになるが、高すぎれば競争原理が働かずサービス水準が低下(価格の高止まりも含め)し、結果として業界全体の成長を阻害する。冷静に議論できればさえ、新規参入のハードルを上げずに高速ツアーバスが抱える問題を解決することは不可能ではなかったとは思うしその点では不満が残るが、まあ80点、手前味噌かも知れぬが十分に合格点がつく新制度ではなかろうか。

むしろ「既存組」高速路線バス事業者の中には不満も大きいことはよく承知しているが、十分に議論が重ねられた上の結論であることだけは、よく承知しておいてほしい(それどころか、このような会議が持たれたこと自体、「既存組」のリクエストによるものだ)。いや、今回の結論は、必ず「既存組」にとって大きなメリットをもたらすはずだ。失礼を承知で言いきってしまえば、今回の結論を「ツアーバス寄り」だと非難するならば、それは今後起こり得る高速バス市場の変化について想像力が不足しているだけである。

さて、終わってみればそうなるより他ない結論を皆で導き出すまで1年以上がかかったことになるが、時間がかかった大きな理由の一つが、相互の無理解だったような気がする。私自身の経験が、そう思わせるのである。6年前、「市井の一マニア」だった私は楽天に転職した。その時の思いはあくまでも「既存組」高速路線バスを販売力のある楽天トラベルで取扱って成長を助けたい、というもので、その時点ではガチガチの「アンチ・ツアーバス」論者だったと言っていい。だから私は、自分で選んだ仕事とはいえ高速ツアーバス各社の経営者、担当者と会うのが嫌だった。むしろ、彼らが怖かった。高速ツアーバスを企画している中小旅行会社の経営者など、さすがにヤ○ザとは言わないが、法の網の穴をついて、既得権益に風穴を開けてやろうと暗い情念に燃えている(イメージで言えば、瞳の中に青白い炎が見えるような)連中だとばかり思っていたのだ。

だが仕事だから会わぬわけにはいかない。実際に会ってみると、彼らの屈託のなさに驚いた。<成定さん、今度こんなアイデア思いついたんだけど売れるかなあ?>。それをやったら「既存組」は顔を真っ赤にして起こるだろうということまで、思いついたことが嬉しくて仕方ない様子で話しかけてくる。最初、その感覚が理解できなかったのだが、ある日、そうかと思い当たったのだ。考えてみれば単純な話で、旅行会社や貸切バス会社を自ら作ってしまった人たちである。お客様が喜ぶアイデアを思いつき、それを形にしていくことが、ただ楽しくて仕方ないのである。彼らは皆、オフィスの社長席などに座っているより、自ら旗を持って添乗に出ていたい人たちなのである(その辺り、『バスラマ』前号での平成・田倉社長の、また最新号のウィラー村瀬社長のインタビューをぜひ読んでいただきたい←ついでに『年鑑バスラマ』の私の原稿もぜひ)。

私自身が、同じ理由でホテルという就職先を選んだ身だから、そう思って見てみると彼らの気持ちは手に取るようにわかる。ただ、路線バスという世界に立った場合、その屈託のなさが、まるで喧嘩を売られているように見えていたのである。皆、<ツアーバスの連中は(人間的に)信用できない>という思いが先に立っていたのだろうが、1年間議論を繰り返す中で、少なくともその場にいる皆さんは、相互に理解が進んだと理解できよう。

さらに高速ツアーバス各社の経営環境の話もある。もともと気の合う仲間と作った(ほとんどが、当時人気の絶頂だったスキーの愛好家たちがスキーツアーの会社を作ったパターンだ)小さな会社が、今や100人、数百人の生活を支えるまでに成長した。これまではがむしゃらに走り続けてきたが(その「がむしゃら感」に賛否あるとはいえ)、そろそろ、事業の安定や永続を考えるフェーズに入ったのだ。これまでの事業モデルを捨て移行するのは物心両面で不満がないわけではないが、いろいろ考えた末に皆が決断をした、ということなのだ。私自身も、彼らから「乗合の手先」と非難されても仕方ない環境のなかで、真摯に彼らの説得に努めてきたつもりだ。そのことは、全委員にご理解いただけたと思う。

先日の「発車オーライネット戦略共有会」での質疑応答など聞いても、その辺りの理解は、未だ全ての「既存組」事業者に進んでいるわけではないようだが、高速ツアーバス各社が最終的に理解してくれたように、彼らにも真摯にご説明を繰り返すよりないだろう。

さて、本日は某社の高速バス車内。明日朝イチの新幹線でも間に合う出張だが、初めての街で本を読みながら一人でお酒を飲むのが趣味の私は、高速バス+前泊を選んだ。昼行便にしては長い5時間の乗車もそろそろ終着。ひと月ほど前ならもう薄暗くなっていたこの時間でもまだ明るい。北風の中、実は日差しは強くなっていて、また周期的に降る冷たい雨が春を呼ぶこの2月後半は、季節の歩みを実感できるので一年で最も好きな時期。着実に進む季節のように、業界全体も、自分自身も、成長を重ねることができるか。新しい季節は、すぐそこまで来ているはずだ。






Last updated  2012.02.26 16:51:19
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2012.01.22
カテゴリ:高速ツアーバス
昨日まで4泊の出張は、火、水、木と地図に一筆書きするようにうまく日程を組めた。西に行くのだからせっかく、と、金曜は周辺の路線バス事業者に営業を兼ねご挨拶に回り、大阪泊で予定を組んだ。大阪泊としたのは、暗くなってから無愛想な新幹線、それも金曜夜の混雑のなか帰るよりは、1泊して誰かと飲んで土曜は高速バスでも乗り継いで帰ろうかなあ、程度のつもりだった。さあホテル勤務時代の上司にでもおごってもらおうか、翌日はどの路線を選ぼうかなど考えていたら、出張に出る直前におあつらえ向けに大阪から電話があった。あまり規模の大きくない、ある高速ツアーバス企画実施会社の担当者。

楽天勤務時代から、営業にお邪魔すると必ず夜は食事に誘い誘われ、取引先(または取引先候補)というより「友人」「兄貴分」と呼びたい人物が全国にいる高速路線バス事業者達とちがい、意外かもしれないが、高速ツアーバス企画実施会社で、個人的に飲みに行くような相手は実はあまり多くない。彼はその少ない一人だ。多くのツアー各社にとって私は、売上の多くを握られているうえに(私が楽天を辞めた今ではもう関係ないのだが)、営業面では単価アップの話ばかりされ、運営面では協議会を作って集合場所問題など小言ばっかり言うは、最後には制度改正にかかわり「お前ら旅行会社からバス会社になれ」と生き様まで変えさせられるは、あまり親しく話ができる相手ではないことだろう。

とはいえ、彼ら一人ひとりの人生にとって重要な局面にあるのも事実。もともとバスを持つ会社ならともかく、純粋な旅行会社、それも決して規模が大きくない会社にとって、今回の制度変更は会社の存亡に直結する。うまいお好み焼きをごちそうになりながら、ハラを割って話せたことはよかった。本来なら、個人的にさほど親しくない他の会社とも、これくらい話し合うのが本来の(「ツアー陣営」顧問としての)私の役割なのかも、とちょっとだけ感じたが、「路線陣営」各社からいただく仕事でいっぱいいっぱいなのも事実だし…

お好み焼きの後は当然のように、高速ツアーバス各社が集合場所として活用する梅田プラザモータープールへ。新宿や東京駅にはなるだけ顔を出すようにしているけれど、また、大阪の各高速路線バスのターミナルには何度となく行っているけれど、出発時間帯のプラザは実は初めて。正直「アウェイ感」ありありでプラザに入った瞬間、センディングの「ドン」が私を見つけて右手を差し出しながら笑顔で近づいてきてくれた。会社の売上(ほぼイコール私の給料)も割いている時間も、8割以上は「路線陣営」である今の私だが、また上に書いたように決して高速ツアーバス各社にとっては親しまれる役回りではなかった私だが、忙しいなか歓迎してくれたことに深く感謝しながら固く握手。

それにしても、出発時間帯のプラザは初めてのはずなのに、どこか懐かしい。一つには、当然そこに出入りするバスは、楽天勤務時代に一緒に成長してきた取引先各社のもの。昨年2月に楽天を離れてから1年弱、協議会から顧問の仕事をもらっている以外はほとんど全て高速路線バス事業者とのお付き合いだったが、入線してくる車両を見ると、それぞれの会社の経営者や担当者の顔まで浮かんでくるようだ。いつの間にか新車が入っていたりカラーリングが微妙に変わっていたり、これまでなかったナンバープレートがついているものも多く、<また営業所を新設したのか>と、あらためて各社の成長力に感心した。

だが、こみ上げてくる懐かしさは、1年前までの、楽天勤務時代への郷愁だけではない。むしろ、20年近く前の、京王の新宿高速バスターミナル(通称「西口」)でのバイト時代の思い出が浮かんでくるのだ。いやもちろん、ここには、さほど難しいとは思えない車庫入れに苦戦している乗務員がいたり、走り回っているセンディングのみんなも、茶髪もロン毛もいたりする。私が「西口」で着せてもらっていた、肩章付きのいかめしい制服(その色合いから、みんな親しみを込めて「チャバネゴキブリ」と呼んでいた)とは似ても似つかぬ、ラフなジャンパー姿である。プラザと「西口」とを一緒にするなと言う人もいるだろう。いや、バイト時代の私が今いたら、間違いなくそう怒ったことだろう。

一方、そのセンディング一人ひとりの真剣さは、充実感に裏付けされた目の輝きは、間違いなく当時の「西口」バイト連中と共通だ。今の「西口」をどうこう言う気はないが、全国の高速路線バス事業者を回っていて、特にターミナルのスタッフ達の「目が寝ている」のは、高速バスターミナルの一OBとして少し不満に感じていたところだ。

もっとも、背景を考えれば当然なのかもしれない。私のバイト時代はいわゆる「高速バスブーム」の最後の時期で、高速路線バス各社は新路線、増発改正のラッシュだったのだ。今思えば、昨日より今日の方が忙しい、今日より明日の方が忙しいという恵まれた環境に、私達はいた。その恵まれた環境は、今はこのプラザモータープールにある、ということだ。

たまにお邪魔する新宿のセンタービル前あたりもそうだ。全夜行便を出発させ終わった後のミーティングは真剣で、充実感が溢れている。「西口」近くの居酒屋「つぼ八」で当時のバイト連中が夜な夜な開いていた「ミーティング?」での議論を思い出す。今の私の原点は、間違いなくあの「つぼ八」でのミーティング?にある。もしかしたら20年後、プラザやセンタービル出身のコンサルタントが現われて、私の仕事を奪っていくかもしれない。

さて土曜はどう帰ろうかと迷いながらの出張中、今度はメールが届いた。<土曜は(個人的に)某高速路線のヒュンダイ車に乗りに行くけど一緒に行く?>。首都圏の別の路線バス事業者の高速バス担当者。あわてて金曜の宿泊を新大阪近くのホテルに変更し、土曜は6:47発の新幹線。まだ薄暗い中ホテルを出て新大阪駅まで歩いていると、新宿から到着した京王の夜行便が交差点を折れてきた。小雨に濡れた白い車体がキラリと光り、思わぬ出会いに、何とも言えぬ懐かしさともに、何かを訴えかけてきた。






Last updated  2012.01.22 11:25:15
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京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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