淡々堂

2008/05/21(水)19:20

稽古113回目

能(294)

■謡…「熊野」9回目 いかに誰かある。 御前に候。 熊野はいづくにあるぞ。 未だ御堂に御座候。 何とて遅なはりたるぞ。急いで此方へと申し候へ。 畏つて候。いかに朝顔に申し候。はや花の下の御酒宴の始まりて候。急いで御参りあれとの御事にて候。その由仰せられ候へ。 心得申し候。いかに申し候。はや花の下の御酒宴の始まりて候。急いで御参りあれとの御事にて候。 何とはや御酒宴の始まりたると申すか。 さん候。 さらば参らうずるにて候。なうなう皆々近う御参り候へ。あら面白の花や候。今を盛りと見えて候ふに。何とて御当座などをも遊ばされ候はぬぞ。げにや思ひ内にあれば。色外にあらはる。 よしや由なき世の習ひ。嘆きてもまた余りあり。 花前に蝶舞ふ紛々たる雪。 柳上に鴬飛ぶ片々たる金。花は流水に随つて香の来る事疾し。鐘は寒雲を隔てて声の至る事遅し。清水寺の鐘の声。祇園精舎をあらはし。諸行無常の声やらん。地主権現の花の色。娑羅双樹の理なり。生者必滅の世のならひ。げに例あるよそほひ。仏も元は捨てし世の。半ばは雲に上見えぬ。鷲のお山の名を残す。寺は桂の橋柱。立ち出でて峯の雲。花やあらぬ初桜の祇園林下河原。 南を遥かに眺むれば。 大悲擁護の薄霞。熊野権現の移ります御名も同じ今熊野。稲荷の山の薄紅葉の。青かりし葉の秋また花の春は清水の。ただ頼め頼もしき春も千々の花盛り。 〈注意点〉 1、10ウ「いかに誰かある」はワキの平胸盛っぽく謡う。熊野の願いを聞き入れない暴君ぷりを表す。そうしないと、熊野の可憐さが浮かび上がらない。 2、12ウ「沙羅双樹の理なり」が低すぎる。サシ(12オ「花前に蝶舞ふ~」)を抑え気味に謡うと謡いやすい。   クリ(12オ「げにや思ひ内にあれば~」)の「上」は「引テヽ」と書いてあるように、普通の「上」よりも華やかに謡い始める。サシ(12オ「花前に蝶舞ふ~」)の「上」は普通より少し抑えめに歌い始める。 〈感想〉  「花前に蝶舞ふ~寺は桂の橋柱」は私にとってはとても難しくて、なかなか節回しを覚えられなかったので、これでもかこれでもかと家で稽古をしました。寝る前に稽古をして、翌朝目が覚めて一番に頭に浮かんだことが謡だった日もありました。これくらい熱心にいつも稽古をしたらもっと上手くなるんでしょうが、なかなかそうはいきません。  「立ち出でて峯の雲~花盛り」の部分は仕舞を既に習っています。舞を知っていると、なんとなくリズムをとりやすい感じがします。仕舞「熊野」は初めての発表会で舞いましたので、その謡をやっと習えたことは感慨深いです。  以下の部分は「以前発表会で地謡をやっているから大丈夫よね」との先生のお言葉で、急遽、先生のお手本の後に続けて謡うことになりました。確かに、去年6月の発表会には出ましたが、今となっては忘れていました。記憶力と読解力をフル動員して、なんとか謡いました。一応、「熊野」のお稽古は今回で終わりです。  「降るは涙か。降るは涙か桜花。散るを惜まぬ。人やある。」は旋律がきれいです。難しいですが。 山の名の。音羽嵐の花の雪。 深き情を。人や知る。 なうなう俄かに村雨のして花の散り候はいかに。 げにげに村雨の降り来つて花を散らし候ふよ。 あら心なの村雨やな春雨の。 降るは涙か。降るは涙か桜花。散るを惜まぬ。人やある。 由ありげなる言葉の種取上げ見れば。いかにせん。都の春も惜しけれど。 馴れし東の花や散るらん。 げに道理なり哀れなり。はやはや暇とらするぞ東に下り候へ。 なに御暇と候や。 なかなかの事とくとく下り候ふべし。 あら嬉しや尊やな。これ観音の御利生なり。これまでなりや嬉しやな。 これまでなりや嬉しやな。かくて都にお供せば。またもや御意のかはるべき。ただこのままにおいとまと。木綿附の鳥が啼く東路さして行く道の。やがて休らふ逢坂の。関の戸ざしも心して。明け行く跡の山見えて。花を見捨つる雁のそれは越路我はまた。東に帰る名残かな東に帰る名残かな。 ■仕舞…「清経」5回目 〈注意点〉 1、指し込んだら、一呼吸置く。甲冑をまとった武将の役なので、スパッと動く。 2、向を変える時に、あっという間に変えない。一呼吸置いてから次の動作にかかる。 3、「かかりけるところに」は敵がやってくるところなので、しっかりと謡う。 4、「暁の」は、顔でではなく胸で月を見る感じにする。 〈感想〉  最後まで教えていただきました。今日初めて教えていただいた箇所は「腰より横笛抜き出し。音もすみやかに吹き鳴らし今様を謡ひ朗詠し。来し方行く末をかゞみて終には何時かあだ波の。帰らぬは古止らぬは心づくしよ。この世とても旅ぞかし。あら思ひ残さずやと。外目にはひたふる狂人と人や見るらん。よし人は何ともみるめをかりの夜の空。西に傾く月を見ればいざや我も連れんと。南無阿弥陀仏弥陀如来。迎へさせ給へと。たゞ一声を最期にて。舟よりかつぱと落汐の。底の水屑と沈みゆく憂き身の果てぞ悲しき。」です。短い仕舞の2つ分くらいあります。  今日はお稽古に来ている人が私を含めて2人でしたので、1人でたっぷりと舞うことができました。まず一通り教えて頂き、もう1人の人が謡いの稽古を受けている間、私はその後ろで舞っていました。  この「清経」クセは今まで習った仕舞の中で一番長いです。「富士太鼓」キリの方が長かったから平気!…と思っていましたが、型付けを見比べてみると「清経」クセの方が長かったです。俄に難しいことをしている気分になってしまいました。比べなければ良かった…。  足拍子が多いこともあり、覚えるのが大変ですが、謡いをちゃんと覚えると、型も頭に入りやすいように思います。 ※今までのお稽古を数え直したら、前回までのは間違っていました。

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