明け方の夢に、先日お亡くなりになった能の先生が現れました。
いつもの稽古場とは違う和風建築に門下生が集まり、声を合わせて能「吉野天人」の一節を謡いました。
「見もせぬ人や花の友。見もせぬ人や花の友。知るも知らぬも花の蔭に。相宿りして諸人の。何時しか馴れて花衣の。袖ふれて木の下に。立ち寄りいざや眺めん。げにや花の下に。帰らん事を忘るるは。美景に因りて花心。馴れ馴れ初めて眺めんいざいざ馴れて眺めん」
先生は私に、「違ってたよ」と仰いました。
「吉野天人」は稽古をし始めて2曲目に習っており、これまで何度も謡っています。
ある程度慣れていて、空で謡えるので、いつの間にか変な癖がついたのかもしれません。
私は違っていたところがわからなかったので、注意深く1人でもう一度謡ってみると、先生は「いいと思うよ」と仰いました。
そして私は先生の手をとり、しばらくマッサージしながら何かを話していました。
これは2年前の冬、所用で療養中の先生のご自宅を訪ねたときに本当にしたことでした。
私の夢でまで稽古をした先生は、生前、能楽が盛んではない私の住む地域で、能楽の普及に取り組んでいらっしゃいました。