水面下～白～

　　　　　　　　
人はいつか　「現実」から「白」へ辿りつく

水面下は最後の揺らぎを見せる
そこに　どんな世界を見せるのか
それは　少年と少女が奏でる

――「白」の世界

二人はやっと　一つになれた

二人は唇を重ねる
この最果てを越えた地で
お互いが　お互いを確かめ合うことが出来た
それは「永遠」のようにも思えるほど温かくて
「無限」のように思えるほど大きくて
優しくて
ずっとこのままでいたいと思った
二度と　離れたくなかった

そしてお互いの顔を見つめる

ずっと　会いたかった

二人は同時に言った
だけど　言い直すことはない
それはそれぞれの心に届く
そしてそれ以上に
固くつないだその手が　お互いの心をつないでいた

「現実」を駆け　「罪」を背負い　「記憶」を受け入れ
「自我」を見つめ　「恐怖」を乗り越え　「正義」を宿し
「時」を垣間見　「慈愛」を知り　「願い」を二人の心に
「永遠」を捨て　「無限」を拒絶した
そして二人は「白」へ辿りつく
もう二人は人ではなかった
真理の狭間で　二人は出会えた

二人が　祝福されたかどうかはわからない
それでも二人はそれでよかった
お互いの温もりを感じ合えた　ただそれだけで良かった
もう　何もいらない
もう　何も求めない
ただずっと　このままでいられますように

それが　二人の「願い」

最初で最後の　「白」

そして　水面下のその役割を終える
その後の二人がどうなったのかは　誰も知らない
ただ　二人の幸せを願いながら
男は　その箱を静かに閉めた……

～ＥＮＤ～