なめこ先生の我ら食べ鉄道中記

2022/03/13(日)10:27

木次線の活性化について考える#4

その他(28)

木次線の持続可能な経営方針や運行体系はどのようにしたらいいか、現在の本数やダイヤなどについては、見直す必要が出てきます。そのためには、適切な経営スキームを策定して今のものよりも運行費や維持費を削減しつつ、赤字も減らしていかないといけません。私自身は経営や商売については本当に範疇外の分野ですが、工夫をすればやっていける体系はできるはずです。スキームについては以下のようなものが考えられます。 1、上下分離方式で運行はJR西日本、土地や駅、線路などの地上設備を沿線の自治体や島根県が保有する(只見線方式) 2、Willer Trainsなどのように民間資本による第3セクターに転換を行う 3、新法人設立による私鉄転換 4、外資系法人による運営(フランスのVeolia Transport (旧Connex)、オランダのAbellio、英国のFirstグループ、Arrivaなど) 5、既存のやり方にこだわらない方法 考えられる選択肢は他にもありそうですが、もしありましたらご指摘をお願いします。運行スキームはその土地、沿線の実態をよく理解している事業者が関わっていく必要があるのはいうまでもありません。そこで考察を順番にしていきたいと思います。 先ず1番についてです。1番は只見線の復旧の際に適用されたスキームで、JR東日本が運行を行って福島県や沿線自治体がインフラを保有するという形で、今年度にも只見~会津川口間がようやく11年ぶりに再開する見込みとなっています。ただ、この路線は豪雪地帯を走る路線であるため、木次線と異なる点は冬に代替交通路がないところにあります。一応、バスは走っているのですが、積雪になると走れないほど積もる区間なので、競合する他の事業者がいないことから地域の足を確保する観点で話し合いがまとまりました。しかしながら、木次線の場合は同じ豪雪地帯が一部入るとはいえ、純粋にこの形で適用するとなるとリスクがあります。というのも、競合路線に広島~松江、出雲市を結ぶ高速バスがあるので、只見線のようなスキームはJR西日本も簡単に納得はしないことが予想されます。 次に2番目に移ります。Willer Trainsのような事業者が見つかるかどうか、島根県の営業ならびにPRの力が求められます。また、第3セクターによる運行は当座の経営はしのげたとしても、最終的に廃線に追い込まれた路線も多いので慎重を要するところです。第3セクターはほとんどが赤字経営の路線で、道府県の補助金で赤字を補填しているところが大半ですから、ちほく高原鉄道や下北交通のような悲劇を起こさないような運営方法も考えていく必要があります。智頭急行の場合は、スーパーはくとが京都まで1日7往復、スーパーいなばが岡山まで6往復の計13往復が鳥取との短絡ルートとして機能しているため、伯備線と並ぶ陰陽連絡路線の主力となっていることから、例外として考える必要があります。木次線は急行や快速は現在走っていないので、多くは望めません。ですから、次回以降に述べる観光列車や特別列車などのテコ入れ策が必要になってきます。 3番目は存続に向けて有力になりそうな選択肢となります。おそらく沿線住民や島根県は、路線が存続できれば運行事業者についてはJR西日本にこだわっていないはずです。そのケースモデルとして和歌山電鉄があります。和歌山電鉄は元々、南海の貴志川線として運行されていた路線だったのですが、南海本社が赤字を賄いきれないレベルになったことから廃線を視野に入れていたところ、岡山の両備グループが運行を引き継いで路線の存続を図った経緯があるからです。新法人設立はJR西日本が廃線を強行的に考える場合には、最終手段ないし切り札となります。そのためにも、両備グループのように受け皿を担ってくれる事業者をしっかりと見つけておくことが水面下で要求をされます。 そして4つ目も有力な選択肢となりますが、これは毒の要素も孕んでいます。外資系は利益が見込めなければすぐに撤退します。ですが、名鉄の岐阜市内線や美濃線、揖斐線の廃線時にはフランスの旧Connexが支援を申し出たことがあっただけに、外資のパワーは侮れません。また、ジョイントベンチャー(JV)方式を採用して複数の会社で共同運営をする方法もあります。これは英国で実際に行われていて、バーミンガム近郊などで鉄道を運営するWest Midlands Trainsは、先に出したオランダのAbellioとJR東日本、三井物産のコングロマリットでやっているのです。英国の鉄道にもJRが絡んでいるだけに、その逆のパターンも行く行くは存続へのオプションにはなってくるでしょう。 最後に5番目ですが、ファイターズの新庄監督(BIG BOSS)のように突拍子もないアイデアで難局を乗り切るといった方法も加えておいた方がよさそうです。例えば、 ・NGOやNPOを新たに設立して、運営費はクラウドファンディングやファンドレイジングで賄う ・スーツ氏や西園寺氏など有名Youtuberがオーナーになって企業運営を図る(これについては、英国のヴァージングループと似ていて、リチャード=ブランソン氏は一から独創的なアイデアで航空会社などを作っています。Virgin Atlanticはその一例です。) 実際、西園寺氏は昨年、水間鉄道で1日無料運行を行いました。この日は管理人も貝塚まで出向きましたが、路線史上初の特急運行など今までにない客層を開拓して成功した実績があります。 鉄道は単なる公共交通機関としての側面だけでなく、読者の皆様もご理解頂いているように、観光やアトラクション的な面も持ち合わせているのです。JR北海道のように赤字路線をズバズバ廃止してバス転換するだけが選択肢ではありません。苦言というか批判と捉えられるかもしれませんが、魅力ある地域づくりには鉄道は欠かせないオプションなのですから、ファンの皆様、行政の皆様、地域の皆様ともどのようにすれば沿線をもっと盛り上げることができるか、観光客を呼び寄せることができるか、提示したスキームは選択肢のほんの一部にすぎません。次の5回目では、近鉄のしまかぜなどのように乗ることが旅の目的となる列車のように、どうやって観光客を伸ばしていくか、素案を考えていけたらと思います。

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