明治の町家   姫路の春霜堂  

2008/08/27(水)15:23

悲劇のマラソンランナー 円谷幸吉

昭和の残像(42)

オリンピックの閉会式には、必ず思い出してしまう選手がいます。東京オリンピック・マラソン銅メダリストの円谷幸吉選手です。 今回はマラソン、サッカー、野球が惨敗でしたが、あの大会における純粋な円谷の責任感や情熱、そのひたむきさ、あれこそ、戦後の日本の高度成長社会を支えたものだったし、今の日本は、今一度、あのひたむきさや精神力をもう一度見直しても良いのではと思ったりします。 父上様、母上様、三日とろろ美味しゆうございました。干し柿、餅も美味しゆうございました。敏雄兄、姉上様、おすし美味しゆうございました。克美兄、姉上様、ブドウ酒とリンゴ美味しゆうございました。  巌兄、姉上様、しめそし、南ばん漬け美味しゆうございました。喜久蔵兄、姉上様、ブドウ液、養命酒美味しゆうございました。又いつも洗濯ありがとうございました。  幸造兄、姉上様、往復車に便乗させて戴き有難ううございました。モンゴいか美味しゆうございました。正男兄、姉上様、お気を煩わして大変申しわけありませんでした。  幸雄君、秀雄君、幹雄君、敏子ちゃん、ひで子ちゃん、良介君、敦久君、みよ子ちゃん、ゆき江ちゃん、光江ちゃん、彰君、芳幸君、恵子ちゃん、幸栄君、裕ちゃん、キーちゃん、正祠君、立派な人になって下さい。  父上様、母上様。幸吉はもうすつかり疲れ切つてしまつて走れません。何卒お許し下さい。気が休まることもなく御苦労、御心配をお掛け致し申しわけありません。幸吉は父母上様の側で暮らしとうございました。 遺書にあった家族への感謝と「疲れ切ってもう走れない」の言葉は世間に大きな衝撃を与えた。川端康成は『円谷幸吉選手の遺書』を発表し「繰り返される《おいしゅうございました》 といふ、ありきたりの言葉が、じつに純ないのちを生きてゐる。そして、遺書全文の韻律 をなしてゐる。美しくて、まことで、かなしいひびきだ」と語り、「千万言も尽くせぬ哀切」と評した。 まじめで責任感が強く礼儀正しい好青年だった円谷は、その性格が自らの不成績を責めるという形になって現れ、それを克服するためにオーバーワークになりがちで、それがやがて自殺という悲劇につながっていったようだ。 「ノイローゼによる発作的自殺」「選手生命が終わったにもかかわらず指導者に転向できなかった円谷自身の力不足が原因」などいう人もいたが、作家・三島由紀夫は『円谷二尉の自刃』で、これらの無責任な発言に対し「傷つきやすい、雄雄しい、美しい自尊心による自殺‥‥この崇高な死をノイローゼなどという言葉で片付けたり、敗北と規定したりする、生きている人間の思い上がりの醜さは許しがたい」と強い調子で批判した 君原と円谷のライバル秘話 走る!! 東京オリンピック、 3人のランナーの不思議な運命の糸 円谷選手遺書 国家を背負い駆け抜けていった人

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る