七転びなおきの徒然日記

2008/08/06(水)00:06

売上が下がっているのに利益が増える?

 お客様の月次決算のお手伝いをしていて、最近よく見かける傾向である。関連する会社には、気をつけましょうと注意を喚起している。  前年に比べ、売上が減っているのに、利益は大きく増えている。販売費や一般管理費も増えている。見てみると、売上総利益(または粗利益)が、大きく増加している。そんな事例に、社長さんも首をかしげることが多い。  その理由は、材料や商品の仕入単価が急激に上昇していることと、たな卸の計算方法によるトリックがある。  中小企業の材料や商品のたな卸計算において「最終仕入原価法」が採用されていることが多い。その理由は、単価を把握しやすく、計算も楽で簡単だから。  計算方法を簡単に説明すると、期末の在庫に同じ種類の商品が10個あるとする。そのうち3個は100円で仕入れ、5個は200円で仕入れ、2個は300円で仕入れたとする。仕入れた順番も左の順番とする。  この場合、最終仕入原価法では、期末たな卸高の計算上、一番最後に仕入れた単価300円を、10個分全てに適用する。つまり、期末棚卸高は、300×10=3000円となる。この期末棚卸高の膨らんだ分が、売上総利益の計算上、利益の増加として表に出てくるのである。  仕入単価が時期によってあまり動きがないときは、利益に与える影響は小さいが、インフレ局面では利益は多めに、デフレ局面では利益は少なめに計算される。鉄鋼関係や石油製品など、今年のような極端な価格上昇が進む局面では、特に在庫量が多い業種・会社ほど、水増しされた利益が計算されることになるので、注意が必要だ。  もっとも、このことに早くに気づくのは、毎月キッチリとたな卸計算ができている会社だから。もし期中の在庫計算をせず、前期末の数字をそのまま使ってたりしたら、期末の単価替えにて一気にその水増し分が表に出て、利益となって出てくる。このことは、経営判断を誤らせる可能性もある。  経営環境が急激に変化しているときこそ、動きをすばやく把握して、対応を打つことが必要であるということになる。

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