ピアノとギターの
音の合い間に
オレンジ色の香り挟んで
水を含んだ空気
香りを帯びて
世界をまるく包む
唇で触れたら
果汁がこぼれそうな
君の声を
瞳を閉じて探しながら
大事に拾い集めて
過ごす秋の夜
ほんのみじかい
秋の句読点がわりに
オレンジの花の
ちいさな*(アスタリスク)
幾重にも降り積もって
切ない掛け算
香りは高いのに
実を結ばぬ 花
いない君に
つのる思い
落ちたアスタリスクに
求める答えを重ねながら
深まる秋に
寄せる鱗雲をかけても
オレンジの花の匂いをかけても
冷たい指先をかけても
抱きしめる腕をかけても
君がいなければ
いくら何をかけても
答えは
ただ青い
からっぽの 空
求める答えは
何も出ない
何にも属さない
音符と香りだけの
切なさだけの空集合